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一日一書評#37「注文をまちがえる料理店/小国士朗」(2017)
2017年6月、とあるレストランが2日間だけプレオープンした。そこは、認知症を患った人が働く「注文をまちがえる料理店」という名前のレストラン。発案者の目論見としては、ひっそりとしたプロジェクトになるだろうと考えていた。しかし、「注文をまちがえる料理店」は、SNSで拡散され、反響を呼んだ。私も、当時Twitterでその存在を知った者の一人だ。
本書は、「注文をまちがえる料理店」の企画を立ち上げ、実現するまで、そしてプレオープン時に起きた出来事を中心に構成されている。
小国さんが「注文をまちがえる料理店」を思いついたのは、2012年の時だ。テレビ局でディレクターを務める小国さんは、とあるグループホームを取材していた。そこで、入居者が作る食事を何度かご馳走になっていたところ、ある日、献立を間違えられるという事態が起きた。その時に浮かんだのが「注文をまちがえる料理店」というワードだったのだ。
その後、チャンスとタイミングに恵まれた小国さんは、「注文をまちがえる料理店」を実際に立ち上げることを決意する。アイディアを面白いと思ってくれる協力者を集め、会議を重ねて形にしてきた。そして、ついに実現し、思いもよらない反響を得たのであった。
私はこの企画を知った時、「良いアイディアだなあ」と心から思った。間違えることをあらかじめ提示しておくことで、料理を提供する側と客の両方が安心してその空間に居ることが出来る。たとえ間違えられても、それを知ったうえで入店しているので、受け入れて、許すことが出来るのだ。
このレストランを作り上げるにあたり、小国さんたちが決めたルールが2つある。「料理のクオリティにこだわる」ことと「わざと間違えるようにはしない」ことだ。そのあたりの、妥協は一切しないというこだわりも手伝って、プロジェクトは成功で終えることが出来た。
今後、この素晴らしいアイディアがどうなっていくのか、楽しみである。
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