受動的に自己を開く6
11/13(土)
朝、基町小学校の50周年記念があるとのことで訪問。ソーラン節を全校生徒と卒業生の中学生で踊っていた。最近の中学生は背が高い。高すぎる。180センチ以上の子が何人もいて、もう立派な大人にしか見えない。大学生と言われれば、たぶん皆そう思うような体格だった。ソーラン節の後には、この50周年を記念したタイムカプセルの紹介と、9コアの地下に収められていたという、獅子舞も披露された(基町団地は1コアから17コア?に分かれていて、各コアごとに町内会のような仕組みがある)。Iさんという美術作家が基町団地に住みながらリサーチを続けている一貫で、このような機会が生まれたそうだ。こういう状況を見ると、僕のようにパッと来て何かをつくるということが、良いことと思わないし、良いものがつくれるとも思えない気持ちにまたなる。式典の最後には、小学生や先生方に加え地域住民の方々、そして僕も!運動場の真ん中に集まり、ドローンを使った空撮による記念撮影が行われた。最近は気軽に空撮ができてすごいね。記念撮影のときに僕の前にはさっきソーラン節を踊っていた背の高い中学生たちがいた。みな、流暢な中国語で喋っていた。僕は、中国から日本に帰国してから中国語の勉強を続けなかったので、かなり忘れてしまったのだが、続けていたら彼らとも不自由なく喋ることができていたかもしれないと思うと、悔しい気持ちになった。この50周年の式典には基町プロジェクトも協力していて、50年間の軌跡を辿る写真展も開催されていた。見ている人々の話し声からも、日本語や中国語が聞こえてくる。こういう写真展の機会からも、自分が住んでいる基町地区の昔の様子を学ぶ機会が提供されており、他の地域よりも自分の住んでいる場所について学ぶ機会が多いのだろうなと予想した。
式典の後、しばらく朝の基町を散策。ショッピングセンターのベンチで編み物をしているおばちゃんが目に止まった。僕は今回、陶芸をして回ろうとしている。土を触りながら、地元の方の話を聞きたいという目論見だ。この4日間、土を持ってあちこち歩いているのだが、なかなか声をかけられず、歩き回るだけという日々が続いている。編み物している人がいるなあと気になりつつ、彼女の前を3回くらいうろちょろしてたのだが、ベンチから立ち上がって作業を辞めたタイミングで通りがかった時、声をかけてみた。「さっき、編み物をしてましたね?今、土粘土を持ってるんですが、陶芸もしてみませんか?」「うん。やる。いくら?どこでやるん?」と聞かれた。どう考えてもだいぶ怪しい質問をしたのだが、おばちゃんは無防備に参加してくれることになった。包括支援センター前のベンチに一緒に座って土をいじった。話を聞くと、いつもここで編み物をされているようだ。この時期だけでなく、夏でもマフラーを編んでいると言っていた。首にはかわいらしいマフラーをしている。陶芸も何度か教室でやったことがあるようだった。普段からマフラーを編んでいるからか、手先が器用で土粘土もあっという間に成型されていく。漬物を入れる平皿だと言っていた。僕は、お猪口をつくるものだと思っていたんだが、今まで参加してくれた方は、誰一人お猪口をつくらない。たぶん自分の生活に合ったものを、自然と選んでつくっているのだろうと思う。聞かなかったが、たぶんこのおばちゃんは漬物が好きなのかもしれない。漬物もつくるのか聞いたら、買いに行くと言っていた。昔から基町には住んでいるらしいが、いろいろ聞いたつもりだったけど、昔の話や、仕事の話など込み入った内容はあまり話すことができなかった。独り身であることや、編み物が好きだということは分かった。考えてみれば、数分の会話で知らない人にいろいろ話をしてくれることのほうが不思議なわけで、今回の陶芸を口実にしたコミュニケーションは、そもそもこんなものなのかもしれない。だけど、同じ作業をすることで、少しだけ心を通わせることはできたのではないかな。僕が普通に声をかけてお話をできれば良いけど、土いじりを口実にしてお話を始めるという無理筋な設定のほうが、特徴的な対話ができそうな気はする。それに陶芸だと、焼成もあるので次回また会うはずだと、約束をしなくても思ってもらえる。
陶芸した後、ベンチでIさん(上記で触れた獅子舞を披露した美術作家)とばったり。今日の午後、基町を案内してくれるという話になった。とってもありがたい。
昼過ぎ、I本さん来る(このプロジェクトのスタッフで、昔から世話になってるから、一生なんでも言う事聞くしかないと思ってる人)。お好み焼き屋で昼食。昔からあるお好み屋らしい。いつからお好み屋をやっているのかママに聞いてみるが、話しているうちに、50年60年70年とやっている年数が変わっていったので、どのくらい昔かは不明。オタフクソースはあんまり好きじゃないから、違うのを使っていると言われていたが、食べ終わってお店の入り口を見てみると、何本ものオタフクソースの旗が立っていた。中国人が増えてきた。包括支援センターがショッピングセンターに入ったりして、昔の商店の活気がなくなった。などの話も聞いた。
Oさんが、音楽の練習をしていると昨日言っていたので、商店に顔を出す。キーボード、ギター、ベース、ボーカルの四人で演奏をしていた。コーヒーも飲めるし、とっても素晴らしい。しばらくすると、二胡(中国の弦楽器)を持ってくる人も現れ、なんだか凄い。毎日決まった時間にうどんを食べにくるというご夫婦も来られ、ハーモニカを取り出して拭いた。一時間半くらい音楽を聞きながら、昨日Oさんに借りていた本を読む。練習されていたので、とくに会話はしなかったが、とても良い時間だった。
コアに戻って、お客さんのYさんとIさんに合流。一緒に基町の案内をしてもらう。Iさんの部屋を見せてもらい、彼女が基町でやっている写真のプロジェクトも拝見する。面白い活動だし、やろうと思えばどこでもできる手法になっている。それに実際に基町に住んで住民と関わっているので、長い年月をかけてより深い活動になっていきそうな感じがした。
I本さんと合流。先日、陶芸に参加してくれたFちゃんというお好み屋が土曜しか開いていないと聞いていたので、昼に続き二食目のお好み焼きを食べに行く。一日二回もお好み焼きを食べるのは、たぶん人生初だった。食後再びI本さんと、Iさん宅を訪問。基町アパートは随分広いし、最近リフォームされたらしく凄くキレイだし、ベランダも広いし、見晴らしも良いし、1万5千円だし!こりゃ、一回入ったら、ほぼ出る理由がない最高の物件だなあと思う。
帰宅。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?