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西岡まほ
2022年5月27日 01:47
「ちょっと、付き合ってくれない?」最後だから、と私の大荷物の片方を持ったその人は、ロータリー横の喫煙所を指さした。駅の目の前にある喫煙所は、工事中の白いパネルで囲われていた。先客がいたのか、喫煙所には薄い煙が漂っている。黄色い箱を開けて煙草を吸う一連の動きを見ていた私の視線に気づき、こちらを見てはにかんだ。4年近く一緒にいて、初めて見る複雑な表情だった。2週間、離れていただけなのに。