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#小説
【SS】あたりまえの音
何気ないことだった。
いつも物静かな彼に対して「もっと喋ってよ。私ばっか喋ってるじゃん」といってしまった。
彼の好きなところがどこかと聞かれたら、「クールなところ」と答えたに違いないのに。自分の天邪鬼さに嫌気が差す。けど、大事なことを喋ってくれないのは確かにそうなのだ。そして、文句をいうのも大体私。別に、浮気をされているわけでも、無下にされているわけでもない。私の文句に対して言い返してこ
【SS】酔っ払いピアノ
都会の寂れたバーには開店当時からピアノが置いてあった。
昔は、夢を追うピアニストたちがたくさん演奏をしていたが、今では誰も弾くことがなくなり、調律もされていない。
そんな中、バーの店主が倒れ、店を閉めることになった。調律のされていない古いピアノなんて、誰も引き取ろうとは思わない。このまま処分されてしまうのだろう。みんながそう思った。
店が取り壊される前夜、誰もいない店に一人の男がゆらゆらと入ってき