- 運営しているクリエイター
記事一覧
マシーナリーとも子ALPHA ~波打つ刻篇~
「出ていってもらえばいいんじゃないか?」
「はあ?」
ダークフォース前澤は上司にかけるとは思えない声で返した。シンギュラリティ池袋支部仮眠室~会議室。サイボーグたちはバイオサイボーグ・ワニツバメを前に壊滅寸前まで追い詰められていた。切り札のスーパーパワーボンバー土屋も破れ、万事休すかと思い始めたときにエアバースト吉村が妙なことを言い出したからだ。
「どういうことですか?」
「いやだからさ、も
マシーナリーとも子ALPHA ~厨房の決戦篇~
「フンッ!」
ツバメは丹田に力を込めて自らの身体に徳を行き渡らせた。徳は彼女の回復力を莫大に増大させ、切り落とされたセベクの尻尾を瞬時に復活させる。その純度の高い徳は、セベクの体内に吸収された徳人間、錫杖から発するものだ。
「いい加減離れなサいッ!」
「言われなくても」
ツバメはセベクの顎を束縛していたドゥームズデイクロックゆずきを振り払おうとする。が、ゆずきはそのタイミングを図ってサブ
マシーナリーとも子ALPHA 〜黄金の徳篇〜
前澤は自分で思ってたよりポカーンとしてしまっていた。と、いうのも状況が悪いとしか言いようがない。本来はこんな鉄火場で目の当たりにするつもりは毛頭なかったのだ。もっと穏やかに、あるいはおめでたい雰囲気でこの状況はやってくるはずだった。まさかワニツバメと文字通りの死闘を繰り広げている時に迎えることになろうとは。パワーボンバー土屋の復活を。
「……ったーく。ボーッとしてるから火が通り過ぎちゃってるよ
マシーナリーとも子ALPHA ~探偵が見た流星篇~
ワニツバメはぐるりと部屋を見回した。確かに以前来たときと違う。徳が満ちている。天井裏や床下から流れてくる徳は押し入れに流れている……。あの中か。
「さて……なんだか身構えておられるようでスが、本当にヤるつもりですか? 私はこの……タイムマシンを使わせてもらえればそれでいいんでスけどねえ。私たちが争う理由ってなんかありまスか?」
「大有りだっ! お前は敵で……この部屋を敵に使われせるわけにはいか
マシーナリーとも子ALPHA ~過去への郵便篇~
妙な感覚だった。人類が味わうという金縛りや幽体離脱のような感覚。意識ははっきりしてるのに身体が動かない、気持ちの悪い感覚。
こりゃなんだ? ここはどこだ? パワーボンバー土屋は目を開けようとするがかなわない。目蓋が開けないのだ。じゃあ目2(ツー)はどうかな? 土屋はこめかみに力を込めようとする。強襲前衛型である土屋には、通常の目のほか、こめかみに一対のカメラユニットが取り付けられ非常に広い視野
マシーナリーとも子ALPHA 〜徳の満ちる時篇〜
一夜明けて鎖鎌は横須賀データセンターの一室、32F「ニモニック」の間へとやってきた。例の「八甲田山」シャツは彼女の美観的にはナシだったので朝、シャワーを浴びた後着慣れた制服に着替えた。
部屋中央にベッドにはパワーボンバー土屋が寝かされてる。最初に会って破壊して以来、直したりパーツを得るために一悶着したりとなんだかんだで見慣れてきた顔だ。これから自分が、彼女のためになにができるんだろうか……。そ
マシーナリーとも子ALPHA ~右手に筒を持つサイボーグ篇~
「んあ……ッッッ!」
鎖鎌はドスンと落下するような感覚とともに起きた。ギャア最悪な目覚めだ。なんかあの、なんかよくわかんないけど「落ちたァ!」って感じで驚いて起きるアレだ。鎖鎌はバクバク鳴る心臓を抑えつつウンザリしながら身体を起こした。
「あれ……?」
起きた鎖鎌はしばらく状況が掴めなかった。和室じゃない。布団じゃない。散らかってない。私の部屋じゃない。
それから30秒くらい浅い混乱に
マシーナリーとも子ALPHA 〜2020年への手紙篇〜
「うわあー……」
それまで地下トンネルを走っていた東急東横線が地上に出ると、窓からいっぱいにビルが姿を現した。ビルたちは高速で左側に引っ張られるように通り過ぎていく。その様子から鎖鎌は目が離せなかった。
鎖鎌は電車に乗ったことがない。2050年、彼女の住んでいた池袋シャードはその名の通り破片の世界だった。無数に砕かれた世界の破片で鎖鎌たちマシーナリーチルドレンは暮らしていた。シャードの世界は
マシーナリーとも子ALPHA ~横須賀への召喚~
「……わからん」
ドゥームズデイクロックゆずきは今日もディスプレイに囲まれて仰け反った。相変わらず時空ねじれの原因は掴めそうになかった。まさに取りつく島も無いという感じでなにも進歩が無い。これが、ただ単にものすごく大変だとか、すごく頭を使うとかだったらまだ楽なのだ。疲れるだけで済むのだから。だが、なにがなんだかさっぱりわからないという状況がこうも長く続くと気分が病んでくる。自分のしていることは
マシーナリーとも子ALPHA ~どうぶつ番付篇~
澤村の頭に最初に去来した気持ちは「参ったなあ」だった。猫たちに連れられて猫公園に来てみれば、N.A.I.L.の超能力女がいるだなんて。
澤村はトルーが苦手だった。まず、人類という時点でムカつく。徳が低いし愚かだからだ。これはシンギュラリティのサイボーグならみんなが思ってることだろう。そしてその徳の低い人類が私たちサイボーグを見下していることが次にムカつく。あとアークドライブ田辺がコイツにヘコヘ
マシーナリーとも子ALPHA 〜超能力者と猫公園篇〜
(……疲れた……)
トルーは声に出さずにそう漏らすと、国連からの潤沢な資金提供で購入した上質なオフィスチェアの背もたれに全力で体重をかけた。忙しい。人類の既存の仕組みでは解決できない様々な事態──宇宙人、原住亜人、異次元人、怪獣、UMA、サイボーグ──を鎮圧する。ここ数年でN.A.I.L.が請け負うようになり、組織拡大のきっかけとなった重要業務である。これらの活動から得られる収入は莫大なもので
マシーナリーとも子ALPHA 〜たか子の稼ぎ篇〜
カフェにモーターの轟音が響く。その轟音は店内中央のラウンドテーブルから発せられていた。座るのは2名の女性。耳をそば立てるとモーター音に混じって小さくパチパチと軽い音が混じっていることに気がつくだろう。轟音は腕にチェーンソーをつけたサイボーグから。小さなパチパチ音はその向かいに座るサイボーグの手元のキーボードから発せられていた。
もはやわざわざ説明する必要はないだろうが……念のため紹介しておこう
マシーナリーとも子ALPHA ~迫る尋問篇~
「タイムマシンの場所を知らない、と……」
ワニツバメはもう一度深くパイプを吸うとたっぷり煙を吹き出した。鎖鎌はワニツバメに見据えられながら脂汗を滲ませる。タイムマシンの場所は知らない。この答えは半分……いや、7割ほど嘘だった。タイムマシンの場所は知っている。だが起動のさせ方を知らないのだ。なんだっけ……確かシンギュラリティのサイボーグじゃないと動かせないんじゃなかったかな?
「何か……。含
マシーナリーとも子ALPHA 〜迫る探偵篇〜
パカン、と寿司桶の乾いた音が響いた。鎖鎌が昼食を平らげたのだ。
「暇だな〜〜……」
誰もいない部屋でゲップをしながら鎖鎌はリーダー用の椅子にグッと体重をかけて仰け反らせた。エアバースト吉村とダークフォース前澤は横須賀に行った。そのあいだの留守番を鎖鎌に任されたのだ。鎖鎌は紆余曲折の末シンギュラリティのメンバーとして数えられてはいるが、サイボーグではない。そんな彼女をデータセンターに連れて行