裸足の国で靴を売る話
【南の島に派遣された靴のセールスマンの物語】
靴のセールスマンが2人、南太平洋の孤島を訪れた。
目的はもちろん、靴を売ることだ。
でも島民を見るとみんな裸足。
そこでひとりのセールスマンAはすぐ会社に電報を打った。
「とんでもないところへ来ました。我々にはまったく用がありません。誰も靴を履いていないんですから」
ところが、もうひとりのセールスマンBは興奮した様子で会社にこんな電報を打った。
「ここはすばらしいところです。島の人間は靴を履いていません。これならいくらでも靴が売れます」
これが物事の見方の違いです。
たしかに1人目のセールスマンのように、誰も靴を知らないのに「靴を買いませんか?」と言っても売れる可能性は低いでしょう。
そもそも靴の価値を知らないのですから。
でも靴の履き方を教えてあげればすべての島民が見込み客になります。
つまり潜在的な見込み客がたくさんいるということ。
だから、2人目のセールスマンは「これならいくらでも靴が売れる」と興奮したのです。
ここまでの話はご存知かもしれません。
ところがこの話にはまだ続きがあります。
3人目の靴のセールスマン
でも会社はこの報告に納得できずに3人目のセールスマンCを派遣した。
すると、このセールスマンCは島民にいろいろと聞き込んでから、会社にこのような電報を打った。
「島の人間は誰も靴を履いていません。そのため彼らの足は傷だらけです。」
私は島民に、靴を履けば足は守られ、足の痛みから解放されると説明しました。
みんな非常に喜んでいます。
島民の80%が一足12ドルなら購入すると言っています。
これなら初年度だけで5000足は売れるでしょう。
まずはシンプルなもので十分なので、安価に大量生産できます。
これに島までの輸送と現地での流通や販売にかかるコストを差し引いても大きな利益が見込めます。
「ライバルに気づかれないうちに早く話を進めましょう」
最初に登場した2人のセールスマンは物事の見方が違いました。
2人目のセールスマンBは「これならいくらでも靴が売れる」と潜在需要を判断したことで優れています。
でもお気づきの通り、3人目のセールスマンCのほうがさらに優れていました。
なぜか?
それは「どのくらい売れて、いくら儲かるか」という顕在需要を調べたからです。
潜在需要と顕在需要
新しいマーケットの開拓はとても重要です。
ほとんどの場合、すでにあるマーケットでは多くの競合がひしめき合っています。
競合が多いということはよほど商品の差別化ができない限り、激しい価格競争の中を戦うことになります。
つまり、薄利多売でしのぎを削るビジネス。
その点、新しいマーケットの開拓には大きな旨みがあります。
新しいゆえに競合がいないのですから。
しっかりと価値を伝えることができれば正当な対価を得られます。
そのうえ、競合のいない独占販売ともなれば大きな利益を手にすることができます。
だから潜在需要を見つけるのは重要な仕事であり、2人目のセールスマンBはそこに気づきました。
ところが大事なのはそこからであり、3人目のセールスマンCは顕在需要(はっきりとカタチに表れている需要)を示したのです。
潜在需要と顕在需要ではその価値も大きく違います。
潜在需要は将来的に売れるのかもしれませんが、いつ売れるのかがわかりません。
仮に、新しく商品を開発したとして、プロモーションをかけて、セールス部隊を投入して、、、
半年で売れるのか、それとも売れるまでに10年かかるのか、いつになれば採算が取れるのかが不透明です。
◼︎どれだけコストをかけられるのか
◼︎いつ採算ベースにのるのか
◼︎それまでビジネスの体力はもつのか
などと、予測が立たなければ未知なるマーケットに攻め込むことはできませんよね。
ひょっとしたら、そのマーケットは競合も気づいているけれど参入しない理由があるのかもしれません。
単に需要を探すのではなく、需要を作り出す
これはマーケティングの原則ですが、そうすることで ”せっかく作ったのに売れない” というリスクを回避することができます。
3人目の靴のセールスマンCの優れていたのは、裸足の人に靴の価値を伝え、買うかどうかまで調べたうえで会社に報告したところです。
”売るにはどのくらいコストがかかり、いくらで売れて、どのくらい利益がでるのか”
つまり、単に需要を探すのではなく、需要をカタチにしたのです。
当たり前のことですが、意外とおろそかになりがちです。
でも私たちはこれをしっかりと行わなければなりません。
まとめ
新規の売上が増えなければビジネスの成長は止まります。
それどころか、既存客は自然と減っていくのが普通なので、新規客を増やせなければビジネスは後退します。
だから新しいマーケットの開拓はとても重要です。
物事の見方を柔らかくして、潜在需要を見つけ出す。
そこから顕在需要を調べて売り込んでいく。
どうせなら私たちも3人目の靴のセールスマンになりたいものですね。