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【生きていく上で直面する発達課題】~エリクソンの漸成発達理論①

発達心理学者エリクソン(Erikson,E.H.)は、発達上の各時期には、その時期ごとに経験しやすい社会との関わり方があり、それは個人の発達に応じた社会からの働きかけでもある、と考えました。

そして、社会からの働きかけに対して、個人がどのような対応をするかによって、個人の自我の発達の方向性が決まる、とも考えました。

このとき、自我は、健全な発達を遂げられるか、不適応的な状態に陥るかの瀬戸際に立たされており、エリクソンはその状態を「心理社会的危機」と呼びました。

以上のことを前提として、人は、以下の8つのフェーズごとに現れる発達課題にぶつかっていくことになります。
各時期において、その課題を達成できるか失敗するかで、それぞれどのような状態になってしまうかを、エリクソンは検討しました。

では、人生における8つの発達段階および発達課題を見ていきましょう。


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①乳児期(0歳~1歳6か月ごろ)
★「基本的信頼」対「基本的不信」


親子関係において、親が自分に乳房を与えてくれるならば、他者は信頼できると考えるようになります。また、「他者に養育してもらえる自分」という自己の存在価値を認めることができるようにもになります。そうなると「基本的信頼」が自我の特性として備わるようになります。

しかし、この時期に適切な授乳が行われないならば、他者を信頼でなくなるりますし、また、「養育されない自分」という自己の存在価値を疑ってしまうことにもなります。つまりその場合は「基本的不信」が自我の特性となってしまうのです。

②幼児前期(1歳6か月~3歳ごろ)
★「自律性」対「恥・疑惑」


この時期に、トイレットトレーニングが適切に行われたならば、自分のことは自分でコントロールできるという自主的な人間としての「自律性」が自我の特性として備わることになります。

しかし、適切なトイレットトレーニングが行われず、親が厳しすぎたり甘すぎたりする場合、自分のことを自分でコントロールするという感覚が持てなくなります。そのような場合は、自己の能力に対する羞恥や疑念である「恥・疑惑」が自我の特性となってしまいます。

③幼児後期(4歳~6歳ごろ)
★「積極性」対「罪悪感」


この時期は、エディプス・コンプレックスやエレクトラ・コンプレックスを乗り越えることにより、親を自己のモデルとして同一視するため、親と同じように積極的に社会参加しようとする「積極性」が自我の特性として備わることになります。

しかし、エディプス・コンプレックスやエレクトラ・コンプレックスを乗り越えられないと、去勢不安や対象喪失に基づく罪の意識が強くなっていき、自分の考えや行動は罪であると感じる「罪悪感」が自我の特性となってしまいます。

④学童期(6歳~12歳ごろ)
★「勤勉性」対「劣等感」


性的欲求の抑圧によりリビドーが昇華されて、エネルギーは生産的活動に向かっていきます。そのような生産的活動に成功し、他者からの評価が得られた場合には、有能感や自尊心を含む生産の喜びである「勤勉性」が自我の特性として備わることになります。

しかし、生産的活動が上手くいかず、有能感や自尊心をもてないと、生産の喜びを感じられない「劣等感」が自我の特性となってしまうのです。

⑤青年期(12歳~18歳ごろ)
★「自我同一性確立」対「自我同一性拡散」


エリクソンの理論の中核。大切なので、詳細は後述及び次回に。

⑥成人前期(18歳~35歳ごろ)
★「親密」対「孤立」


この頃に急激に高まるリビドーにより、特定の他者(基本的には異性)との関係を強く求めることになります。
このとき、前段階で自我同一性が確立している場合は、他者との関係において相互の自我同一性を尊重し、心身ともに深い融合や一体感を感じられる「親密性」が自我の特性として備わることになります。

しかし、自我同一性が確立していない場合には、他者に自我を脅かされる脅威を感じ、一対一の関係を避けようとする「孤立」が自我の特性となってしまいます。

⑦成人後期(35歳~50歳ごろ)
★「生殖性」対「停滞性」


自身が「親」の世代となり、新しい世代を生み育てることに強い関心が向き、結婚および生殖を求めるようになります。
また、育てる対象は自分の子どもに限らず、部下や後輩なども含まれ、次の世代が向上してくることに喜びを見出します。これは「生殖性」が自我の特性として備わることを意味します。

しかし、生殖や次世代の育成に失敗すると、強迫的に親密性を求めるなどの退行が生じ、自分のことしか考えられなくなる「停滞性」が自我の特性となってしまうことになります。

⑧老年期(51歳以上)
★「統合」対「絶望」


人生の終盤に差しかかり、それまで担ってきた自分の社会的役割を手放すことが多くなる時期であり、それまでのライフサイクルを振り返ることになります。
そのとき、自らの生涯を肯定的に評価し、他の誰とも違う独自の人生を全うしてきたと感じられるならば、「統合」が自我の特性として備わります。

しかし、自己のライフサイクルに価値を見出せない場合には、やり直しのきかない年齢であることに気付くことになり、挫折感を持つことになります。それ故に、「絶望」が自我の特性となってしまいます。
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と、以上のようになります。

注意して頂きたいのは、このような発達課題は、各時期ごとに固定してしまっているものではなく、社会との関りによって、他の時期においても経験することのあるものだということです。

では、エリクソンのこの「漸成発達理論」における最重要ポイントである、⑤青年期(12歳~18歳ごろ)の「自我同一性確立」対「自我同一性拡散」について見ていきます。

ここでの最重要用語は、「自我同一性」と、それに関わる概念で、一般的にもよく聞くことのある「モラトリアム」というものです。

現在既に「大人」になっている方で、慢性的に、自己の能力や存在価値などに、何らかの不全感などをお持ちの方などは、この時期のこの問題を上手く処理できなかった経験があるのかもかもしれません。

一気に書いていきたいのですが、何分、非常に長くなってしまいますので、この「自我同一性」と「モラトリアム」の問題については次回にしたいと思います。

自我同一性を確立できなかった場合に、「大人」になったら何が起こるか、どのような弊害が生じるか、どんな特徴が顕在化してくるか。
次回はそんなことについて書いてみたいと思います。

それでは今回はこの辺で!


※参考・引用文献「心理学概論」(河合塾KALS)

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