刑務所(刑事施設)における不服申立制度〜刑事施設視察委員会に対する不服申立てに関する問題点
刑事収容施設法には、被収容者が刑事施設についての苦情等を申し立てる手段がいくつか用意されていますが、特に外部への申立ての手段としては、刑事施設視察委員会への申立てというものがあります。これは郵送でも可能なのですが、刑務所の場合には、舎房に設置してある投函用の箱、通称「目安箱」に投函することもできます。
問題はここからで、舎房に設置してある、その通称「目安箱」に投函できるタイミングというのは、朝、工場へ向かう際の移動時のみになるのが実情なのです。しかし移動時には複数名の刑務官が受刑者の列に付き添って監視していますし、他の受刑者も大勢いるわけです。そんな中、移動の列を外れて刑務所に対する苦情の申請書を投函するということがどれだけリスキーなことか、一度考えてみて欲しいと思います。
当局としては、「苦情の申立てをしやすいように」と考えて「目安箱」を設置しているわけですが、複数の刑務官が監視している中、工場への移動の列を一人だけ外れて刑務所に対する苦情を投函することなど事実上不可能に近いと思います。対刑務官のみならず、対受刑者においても、申立てをした受刑者は、かなり不利益な立場に陥る可能性があると考えられます。何故なら、その受刑者が所属する工場内において「お前あれ何書いてん?教えろや!」という事態になることは目に見えているからです。申立てた受刑者が、その工場で虐めなどに遭っているような状況なら、申立てを行ったことにより、更なる虐めに発展する可能性が高くなるでしょう。「俺のこと書いたんちゃうやろな!?」いうことになる流れは、想像に難くないと思います。
苦情を申立てることができる制度が備わったのは非常に良いことですが、申立ての方法をよくよく考えて、申立てた受刑者の存在の秘匿が完全に守られつつ、外部へ容易にアクセスできるような仕組みに変えていく必要があると思います。
【追記】
刑務所では、僕が確認することができた範囲では、その殆どが、工場へと繋がる舎房の出入り口付近に「目安箱」が設置されていました。工場への繰り出し時の舎房の出入り口付近となると、刑務官が常事監視のために立番しているので、刑務所に対する苦情の申立てを投函するのは心理的にもかなり困難が伴うだろうなという印象でした。