嫌いなものは、ちゃんとディスる(こじんまりと)
「どうやってアイデア出しや企画の立案をしていますか?」というお題をいただきました。正直、それに答えるのは気恥ずかしさがあります。僕は別に世間に名を馳せるトップクリエイターではなく、B'zとお笑いとジンジャーエールとハムスターが好きな、ただのいちテレビマンだからです。
とはいえ、日常の業務としてアイデア出しや企画の立案はあるわけで、あくまで「こんなやつもいるんだ」という程度に読んでいただけたらと思います。
僕が実践している方法のひとつが、タイトルにも書いた『嫌いなものを、ちゃんとディスる』です。ディスるというわざと強めの言葉にしていますが、嫌いな原因を文句を言いがてら考察する、ということです。
例えば好きな芸人さんがいたとして、毎週録画して必ず観る番組と、たまにしか観ない、なんならほとんど観ない番組ってあったりしませんか。
その時に「観ない番組」のどこが好きじゃないかをちゃんと考えるようにしています。毎週観る番組を『A』、ほぼ観ない番組を『B』とします。『A』にも『B』にも好きな芸人さんは出ているのです。
もし思い浮かぶものがあれば『A』と『B』の違いは何かを考えてみてください。企画の方向性、共演者、笑いの濃度、CMのまたぎ方、テロップ、音楽…色んなポイントで比較できると思います。僕には明確な具体例があるのですが、ここで書くことは控えます。
複数の番組を比べるときばかりではありません。単純に嫌いな番組の、嫌いな理由を考える時もあります。テレビ番組でなくても自分の仕事に関するものがやりやすいと思いますが、普段の生活の中で生まれる好き嫌いを元に考えるのもいいと思います。
観ない(嫌いな)理由が明確になると、今度は自分の好みや好きなものがムクムクと立ち上がってきます。「あぁ、自分はこれが好きなのか」と違う角度から実感することができて、自分が企画を立てる時により意識できるようになります。
僕はテレビマンなのでテレビ番組で例えましたが「好きでも良さそうなのに好きじゃない(嫌い)」というものには、何かヒントがある気がしています。あと、嫌いなものをちゃん「嫌い」と言うのは、精神衛生上とてもいいと思います。
ただ、このやり方は『こじんまりとやる』ということがポイントです。基本は1人で、多くても2人です。それも相手は自分の考えに共感してくれる人がいいでしょう。でないとケンカ、少なくとも空気は悪くなると予想されます。SNSやネットにさらすなんてもってのほかです。これは良い悪いの話ではなく、好みの問題だからです。
ではここからは、実際にどう生かすかという話です。やっぱり自分が「面白い」と思うものから企画は立ち上がっていくことが多いです。それをあえて逆から始めてみるんです。
テレビ番組の場合、例えば僕が「旅番組が嫌い」だったとします。旅番組を自分流に演出して企画を立てるとなれば、旅番組の嫌なところを意識しながら、自分の好きなテイストを入れることになります。その時に『嫌いなものをちゃんディスった』ことが役に立つのです。そうやって組み立てていくと、誰も見たことのないオリジナリティのある旅番組が生まれる…かもしれません。
どこまで書いても「誰が言うてんねん」という、もう1人の自分の声が聞こえてくるのでこの辺にしておきます。
ここまで読んでくれた方の参考になれば嬉しいですし、「なんじゃこれ」と思った場合は、何が嫌だったかちゃんとディスってみてください(絶対にこじんまりと)。
※この投稿は吉本ユータヌキさん、ちえむさんからいただいたお題を元に書きました。ありがとうございました!