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昭和女ブルース(愛したりない/島村洋子)

1997年の小説。
20代後半の独身女性・まみは、飲み屋で親友と「今から各々街で男を捕まえてきて連れてこよう」というゲームを始める。親友が連れてきたのは、まさかのまみの元恋人。元恋人は荒々しい(サイコパスっぽい)性格で、別れ際、彼が割った鏡でまみは右手の神経を切断するほどの大怪我をしていた。
リハビリのため、右手で手紙を書くよう医者に勧められたまみが、元恋人と、かつて母を捨てた父親に向けて手紙を書く…という話。

序盤、まみの簡単に男と寝るだらしなさに共感できなすぎて無理かも…と挫折しかけたが、無理やり読み進めた。
結果、読んでよかったなと思える作品だった。

まみは確かにだらしないのだが、その手の女にしては珍しくドライで、どこか自分を俯瞰して見ている。簡単に寝る=簡単に惚れるのだけど、その愛が浅そうに見えてちゃんと深い。献身的でいてドライという相反する要素を併せ持ったキャラクターならではの、ブルースのような文章が魅力的だった。
特に好きだったのはこの一文。

一度、化け物になった女はこの世のにぎやかしにしか過ぎないんだから。

愛しても愛しても、「愛したりない」という化け物。
恋愛の熱が冷めたら軽やかに去り、決してクヨクヨ思い悩むことはない野生っぷりが良い。


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