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女性が幸せに働くために

毎年3月8日はIWD 国際女性デーです。IWDに寄せて、普段考えていることをまとめてみました。

女性問題について発信するの難しいんです

私、結構女性の働き方だとか、ジェンダーギャップの問題とかには関心が高く、自分の意見もあるんです。でも、その割には発信してこなかった。一つには、こういうのってアカデミックな人、もしくは既に「女性リーダー」として立場を確立した人しか話す資格がないんじゃないか、と思っていたから。

そして残念ながら今のところ、そのどちらもクリアはしていないわけですが、「なにものでもない」私でも、いやそんな私だからこそ発信すべきなのではないかと思うに至りました。オトコの人から女性の問題が見えにくいように、女性リーダーの多くの人、さらには働く女性自身にも実はとても見えにくいのではないのかなぁ、と感じることがあったから。

私が思う女性が働く際の5つの壁

私自身が自分自身で体験したこと、実際に見聞きしたことに基づいてですが、女性が働く上でぶちあたる(可能性のある)壁って結構あるんですよ。いろいろな定義の仕方があっていいと思いますが、私が思うのは、大きく次の5つに集約されます。これらは、女性の働きにくさの根本原因ともいうべきもので、人によってそのどれが大きい障害となるかは異なるし、またそれぞれは必ずしも単独で存在するわけではないんですよね。

  1. 女性に対する明示的な偏見や差別

  2. アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)

  3. 家事と育児負担の女性への偏重

  4. 働き方の多様性・柔軟性のなさ

  5. 家事や育児を外注する仕組みがないこと


女性への偏見や差別(1の壁2の壁)

多分、これって一番分かりやすいエリアかなと思います。たとえば、私が大学を卒業して世の中に出た1991年は、男女雇用機会均等法が施行されて5年目でした。裏を返せば、その前には女性が総合職として就職できない時代があったわけです。当時の志高い女性は公務員、外資系企業もしくは起業という道を選んでいたようです。かくいう私も外資系スタート。

今はもう昔って感じがするものの、今でもこういうあからさまな差別が残っているところもあるとは聞きます。正直にいうと私自身はこの種の差別はほとんど経験したことがありません。

もう一つは、最近しばしば語られる無意識のバイアス。女性は結婚したら・子どもが生まれたら家事に・育児に専念すべき、とかいう思い込み的なもの。マミーギルトもここに属するかな。あるいは、たとえば女性と男性が非常に積極的な全く同じ行動をとったとしても、女性は「生意気」とか「アグレッシブ」といったネガティブな評価になりがちであるが、男性は「積極的」とか「やる気がある」と好意的な評価がされるといったバイアスもあります。これの厄介なところは結構からだに染みついていて気づきにくいということ。どういう影響があるのかというと、そういう社会の中で女性は積極性を失ったり、結果職場で出世意欲がないとみなされたり、主張しないことで機会を逃してしまったりということが起きうるわけです。

これも私自身の場合で言うと、もちろん自分にもあったんですが、20年前にアメリカにMBA留学したときに既に深く学ぶ機会があり、自分自身のバイアスには気づきやすくなっていたことと、周囲のバイアスは若干感じることがあるものの、決定的な障害と感じたことはありませんでした。夫があまりこういうのに縛られないタイプであったからかもしれませんね。

家事と育児負担の女性への偏重(3の壁)

これは恐らく、今の日本の中で最も女性の活躍を妨げている根本原因だと思いますね。データにも如実に現れていて、日本の家事や育児時間の女性への偏り度は世界トップクラスです。ここは、男性の意識の変革および実際の行動変容が求められるところで、割と今熱心に語られているところかと思います。少子化にもつながっていることもあり。

その場合、夫婦・パートナー間では例えば男性の家事・育児時間を増やすという合意がされたとしても、それは男性の勤務状況、いいかえれば夫の会社の制度や風土にも影響を受けます。女性は産休も育休もあるだろとか、男性育休の制度だけでは機能しないのは、どんなに夫婦間で合意しても夫が育休を取得したり育児のために早く帰れたりということができないのであれば、実現しないからです。ここらへんから、むしろ社会の問題にもなってきますよね。

働き方の多様性・柔軟性のなさ(4の壁)

これは、偏見という問題ともまた違って、社会のシステム全体の話なんです。仕事を最優先にする・長時間労働をするというような労働慣行、それはある意味、お父さんはお仕事・お母さんは専業主婦みたいな家庭のモデルにあわせた社会システムがまだ強く残っているというところです。

私自身は、このハードルでノックアウトでした。私にとって結婚は最前線で働き続けることにとって何の障害にもならなかった。むしろ伴侶ができて大きな心の支えを得たくらい。ただ、子どもができづらく妊活やようやく恵まれた息子の子育てという中で、キャリアを抑えた働き方を選択せざるをえませんでした。いわゆるマミートラックというやつです。不妊治療って拘束時間は長くなくても、いきなり病院に行かなきゃない事態に見舞われたりするし、小さな子どもの子育てって急な発熱のお迎えとか、まあ色々あるわけです。

ただ、もし勤務時間中に少しでも抜け出すことが可能なフレキシブルな働き方ができたり、病児保育や子どもの発熱時早退みたいなことがある意味当たり前にできるようになれば、たぶんそれほど仕事をセーブしなくてもできたのではと思ったりします。そして、これは本来、女性だけにどうこうっていう話ではないはずですが、女性が家事・育児を担う場合が多いため女性の問題になってしまっているところが厄介ですね。

もう一つ、違う観点での多様性の欠如としては、一旦正社員としての待遇を離れた人の復帰が難しいこと、あるいは一旦何らかの理由でキャリアのセーブをした人が再び仕事の最前線に戻るということに寛容ではないということがあります。こちらも本来、女性の問題ではありませんが、子育てや介護等でそういう状況に陥ることが多いのが女性ということで、女性の活躍を阻む要因となっています。3の壁と関連していますよね。

家事や子育ての外注が難しい(5の壁)

これまた社会の慣習やアンコンシャスバイアスのところと関連しているのですが、日本は基本的に家事や育児の外注のしくみが未発達なんですよね。他の国々と比べても劣っている背景の一つとしては、いまだに家事・育児は奥さんや母親が行えばいいという意識が強いから。家事の外注化は、日本にいると気づきにくいですが、実は東南アジアなんかでは随分以前から進んでいるところです。これも20年以上前ですがヨーロッパのビジネススクールの短期プログラムに参加したとき、香港やシンガポールから来た同級生は、なんで家政婦さんを雇わないのかと私に真剣に問いかけました。「そんなに仕事していたら収入あるでしょ?」 って言われたけど、家政婦さんの労働ビザを認めていなかった日本だと富裕層にしか許されない贅沢でした。でも、ここは少しずつ手の届く家政婦サービスも現れだしていますよね。

それから、実は子育ての壁で大きいのは「小1の壁」。保育園は意外と延長保育があったり夕食も頼めば用意されたりするのですが、小学校に入ったとたん、学童は午後6時までだったりするわけです。これ仕事は定時上がりを意味します。ここも意外と伝わりにくい部分で、保育園のお迎えを分担したパパは、定時切り上げがどれだけしんどいか実感するらしいです。実はうちは、こどもが小学校に入る年に近所に民間学童ができまして随分助けられましたが、この問題って仮に学童がなくとも働く時間や場所の柔軟性によって解決できる部分も多いとはいえます。

それから、今、我が家では週の間はお惣菜の宅配サービスを使っています。なので私は思いっきり仕事できています。ただ、この民間学童も総菜の宅配サービスも、比較的新しいものですし、東京以外の地域ではまだまだこれからという感じなのかもしれませんね。

興味ないかもしれないけど私のこと少しだけ

途中途中で私個人が直面したハードルについて触れてきましたが、私は長かったマミートラックを抜けて50代の今、20代の時並みに仕事しています。(というのは嘘で、今は土日は仕事しませんけど😋)体力の衰えは若干あるものの体力勝負の仕事ではないし、知力の面でいうとむしろ経験によってずっと冴えてきている気さえします。

そして、夫が少し年上で仕事量も落ち着いてきたりコロナ禍で在宅勤務も増えていることもあって、家事を結構引き受けてくれています。(彼の名誉のために誤解のないようにいうと、息子の子育てに関しても私がキャリアセーブしている間も今もずっと私と同じくらいかそれ以上関わってくれています)また、前述したように夕飯のおかずは宅配総菜を利用しています。息子のお弁当は私が作っているけどね。

マミートラックで15年ほど停滞した私のキャリアは完全に取り戻すことは難しいかもしれないけど、でもやりがいのある仕事に恵まれて、また会社は成果を出せば認めてくれるような気がしている今日この頃です。

何故こんなに長い文章書いたのって思った?

それは、一部を切り取って語ることで、不必要な分断を生みたくなかったからです。女性って特に何かとライフイベントが多いから、人生のパターンも多様化してしまうわけです。そして働きづらさを感じるポイントもいろいろだと思うのですよ。だけど、問題の根っこは結構同じはずなんです。ただ、ジブンゴトとして語れば語るほど問題が細分化していってしまう。

たとえば専業主婦の復職の問題。同じく子育てに専念はしていないけど関わった者として、子育て経験は人育ての経験だし家事もマジでやると相当なマルチタスク。だからそれって仕事に活きないはずはない。でも、だからといって主婦経験をプラスしてオファーをくれる会社は少ないんだと思う。エントリーレベルから始めないといけないかもしれない。問題は、それでもちゃんとそこからキャリアアップしていけるか、つまり実際にその経験を活かす機会が得られるか、そして成果を挙げたらそれが認められて昇進したり昇給したりできるか、っていうことなんだと思っています。つまりは、働き方の多様性が担保できるかの問題。

そしてそこは、マミトラ復帰組も同じなわけ。同僚よりキャリアが遅れちゃっている、でも子育てした分も仕事にまい進していたと同様にみなしましょうね、ってなればいいけどそれは難しいかもしれない。とはいえ、子育てで得た経験を活かしてもし成果を挙げたのなら年功ではなくて引き上げられるということが本来求めるべき姿なんだと思うの。だから、専業主婦もマミトラ組も異なる問題なようでいて引っかかっているハードルも解決の方向性も共通点があるってことを強く伝えたい。

別なイシューとして、女性自身がアンコンシャス・バイアスにとらわれていること(例えばお母さんになったら仕事をセーブして母親業最優先にすべきと思いこんでいるとかね)やパートナーと話し合って保育園のお迎えをを分担すべき、とかいう意見もよく見かけます。それは良く分かるのよ、そして正しい、上に書いたようにね。でも、そうやって個人の問題のところばかり触れられると、ワタシみたいにそこは全部クリアしたけど後ろの二つ、つまり自分(たち)ではどうしようもない壁に阻まれちゃったものとしては、なんだかそこじゃない気がしちゃうわけです。同様にそこが上手くいなかった人にとっては、自己責任論って言われている気がしてしまうんじゃないかな、そこできたって解決しないのに。

そして、そういうこと書いている人たちも、決してそれだけが原因だとは言っていないんだよね、きっと。スペースが限られているからそういうところだけ切り取った発言になってしまいがち。そこに私みたいな人が余計な感情を抱いちゃう(笑)私自身も34歳までは独身バリキャリだったので、今まで書いてきたような多様性を認めることはなんか不公平だな、って感じてしまう人たちが相当数いるのも、これまた妙に理解できたりするわけです。

だから、こういう問題って短文でしかも一方通行で語るのって難しいなぁと思うのでした。(=文章が長くなった言い訳)


最後に未来を生きる女性とそのパートナーとなる男性に伝えたいこと

もうここまで自分のキャリアヒストリーを晒し、結構本音も明かしつつ書いてきたのは、これからの時代を生きる女性たちに、こんなトラップがあるんだよって気づいておいてほしいな、そしてうまく切り抜けていってほしいな、と思ったからです。私自身は、自分がその渦中にいるときは言語化できないフラストレーションの中にいたこともある。だから何かうまくいかないなって思ったときに頭を整理するヒントにしてもらいたいと思うのです。

それから、家事負担の問題は男性側の意識およびその雇用主が関わる問題で難しいところもあるけど、確実に変わりつつあることや、働き方の多様性・柔軟性についても、コロナも追い風となって急速に進展してきていること、それから家事や育児の外注の部分も整いつつあること、これらを知ったうえで色々な決断をしていってほしい。私には間に合わなかったことでも、今恩恵を受けつつあることもあるし、これからはそれがもっともっと当たり前になる可能性もあるから。

そうすると、「必ずしもキャリアをセーブしなくても家庭生活を普通に営めるかもしれない」ってことに気付くかもしれない。だって、男性が結婚して子どもを持ったとき、「あなたは仕事のペース落とさなくていいの? 子どもは大丈夫?」 って誰か彼に聞きますか?

それと言うまでもないんだけど、もちろん子育てのためにキャリアをセーブするという選択も十分に尊重されるべきだとも思っています。そして戻りたいときに望めば再びキャリアアップができるということが実現しているといいなとも。今私はその過程にいます、入り口は不本意な選択であったとしても。

そういう彼女たちのパートナー、それは配偶者であったり仲間であったり上司であったり部下であったり、もちろん女性の上司や部下も含んだ周りの人たちみんなだったりするわけだけど、どうぞ女性ってこんないくつもの複雑な壁と戦っているんだって理解してあげてほしい、そして応援してほしいなという想いをこめて、このnoteを書きました。誰もが幸せに働く権利がある、と心から思います。

読んでくださってありがとうございました。スキやフォローしていただけると、とても幸せです。

#IWD #IWD2022 #BreakTheBias #国際女性デー #ジェンダー #ダイバーシティ

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