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エンゼルハート・ハイドアンドシーク・シャッターアイランド・シックスセンスみたいな話

以下の映画、
「エンゼルハート」「ハイドアンドシーク」「シャッターアイランド」「シックスセンス」のどれかを観てなくて、ネタバレが嫌な人は、本文を読まないでください。
こうやって並べただけで実はネタバレ&オチバレになってるか。
あっ、「ビューティフルマインド」もそうか。

***

83歳の認知症の母と二人暮らしするようになって7ヶ月が過ぎました。
83歳がどれくらいの年齢かというと、小型犬の犬年齢で言えば17歳に相当するヒト年齢です。まあまあの老齢でしょう。
まったく意味のない年齢変換でしたね。
そう、年齢なんて意味がありません。100歳になって登山をしたり小説を書いたりできる人もいれば、60代で認知症や寝たきりになる人もいます。

認知症が原因なのか、腰椎の圧迫骨折が原因なのか、母のメカニクスもかなり低下しています。ヨボヨボです。
何とか自力でトイレはできるものの、お風呂や着替えは困難です。
歩行も、杖をついて100メートルが限界です。なので母を連れての旅行などは難しいでしょう。

それより旅行に行ったとしても、あまり意味がないのです。なぜなら翌日には旅行に行ったことすら忘れてしまうからです。
前にも書きましたが、母はほとんど記憶ができません。記憶は5分と持ちません。1分で消えることもあります。
1日に何度も同じニュースを見ては、そのたびに同じように驚き、同じ感想を漏らしています。
能登の大地震から1ヶ月以上経った今でも「ほえー。大きい地震があったんやね〜」と驚いています。

母の認知症は主に記憶障害だけで、今のところ幻視や被害妄想、人格の変化などはありません。身だしなみや清潔に関しては配慮できています。このあたりを維持できているので、ボクの心がすさむことがなくて助かっています。

しかしなかなか我慢しづらいのは、記憶障害を起因とする作話・妄言癖です。作り話を延々とします。
大谷翔平にバッティングを教えたなどという楽しい作話は、それ単発では笑えますが、一日中テレビに映るあらゆるものに対し「私が考えた」「私が作った」「私が教えた」をずっと繰り返していて、ボクとの会話の中へも強引に挟んでくるので、穏やかに聞き流しにくいものがあります。

あまりにも無理のある話(月着陸船を設計したとか)をした時には、いかにそれが信じられないかを懸命に説明することはありますが、本人は作り話をしたとは露ほども思っていません。理解力はまだ落ちていないはずですが、こちらの合理的な反論は一切受け入れず、自分の言ったことを心の底から真実だと思い込んでいるようです。
(「万有引力の法則も知らん、光の速度も知らん、JAXAが何で、どこにあるかも知らん80すぎのババアが、何で月着陸船を設計できるんじゃー!」「ほな、電話して聞いてみ」みたいな)

大言・虚言の他に、ボクの価値観に合わないこと、差別的な発言など、聞くに堪えないことを無邪気に口走ることも少なくありません。
書くには憚られますが、昭和の無学な老人の恐ろしいこと恐ろしいこと。

記憶に定着することを願って、もうそんなことは聞きたくないから二度と言ってくれるなと、数十回は母を厳しく咎めたでしょうか。
今のところ無駄な試みのようです。

そういやボクは半年前、つまり母との同居1ヶ月後に以下のように書きました。

認知症患者が作話(妄想の作り話)をするは自分の記憶の欠落を補うためらしい。
目の前の事象から想起される記憶がないから、話を創作してでも自分を外界と繋ぎとめておきたいのだろう。
本人は嘘をついているつもりは全くないようで、話ぶりからも本人にとっての真実を話しているかのように聞こえる。

初老老介護の自慢話 その2

ボクは半年前から、母の作話・妄言癖は理解していたのです。
それなのに、何度もキレては何度も母を厳しく追い詰め、「わかった。もう言わへん」と母に言わせていました。
その後冷静になった時には、どうせ無駄だ無意味だ、やっぱり母の妄言は笑って許そうと反省するのでした。
しかし数日後、またボクはキレて同じことを繰り返していたのです。

ボクはいつまでたっても学習できていない。
実は記憶できないのはボクのほうじゃないのか。
認知症なのはボクではないのか。
57歳での認知症、若年性認知症なのではないのか。

時々、弟や親戚が家に来てくれます。
そのたびに近況を話しているのだけど、もしかしたらいつも同じ話をしているかもしれない。
毎度毎度あいつは同じ話をしているなあ、かわいそうになあ、と思われているかもしれない。

もしかしたら認知症で介護が必要なのはボクなのではあるまいか。
何も記憶できないので自分に都合のいい話(認知症の母を介護しながら生活している話)を作って思い込んでいるだけかもしれない。
母を介護しているつもりでいたのだけど、介護されているのはボクなのかもしれないぞ。
これはまるで「エンゼルハート」「ハイドアンドシーク」「シャッターアイランド」「シックスセンス」のようじゃないか。
他にもたくさんこの手のオチ映画はあるみたいだけど、観たことあるのはこれだけかな。
どうやらおなじみのオチだったようで。
ね。ひさびさに投稿したのだけど、オチが弱かった。
やっぱり脳が退化しているのだろうな。それではまた。

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