無縁坂、小さな息子の手を引く母は、かつてアザミ嬢と呼ばれていた?~中島みゆきvsさだまさし~
こっぴどく自分をフッた恋人に、なりふり構わず道端で泣き叫びながら追いすがる女性もいつしか母となり、幼い息子の手を握りしめ、坂の途中で息切れしつつ、「辛くても振り返らないのよ」と息子に微笑む。
そこはかつて自分が泣きながら倒れた道でもあった…
中島みゆきさんとさだまさしさんのヒット曲をマリアージュするとテイストを損なうことなく、むしろしっくり来るストーリーが出来る。
西日がうっすら差し込む仄暗い放課後の部室で、二つの歌詞を並べてそんな情景にうひゃひゃとほくそ笑んでいたのは18歳の私。
「しらけ鳥 飛んで行く 南の空へ~」
「からす なぜ鳴くの~ からすの勝手でしょ~」
こんな乾いたギャグで育った世代だけれど、むしろそのせいか、私たちにはこの対照的な二人の『湿気具合』が妙にハマった。
「演歌」をフォークアレンジで歌うヒト『みゆき姐さん』
バイオリンが額縁の印象派、言の葉の職人『さだ画伯』
友人に例えるなら、みゆきさんは『夜中に電話をかけて来て「フラれたの」といきなり泣き出す』タイプで、
さださんは一晩寝かせたのち、『便箋3枚使って読ませて痛手を負った心の機微を伝える』タイプじゃない?
「どっちの友達がめんどくさいか」などという要らぬお世話なテーマで、部室常連組のメンバー二人とああだこうだと偉そうに語った。
今思えば、三人とも主語が「友達」で「自分」にならない辺りが青い。
恋人にすがって泣きわめくほどの情動が想像できないことは棚に上げてうんちくばかり垂れ合う。
「演者」としてみると、
みゆきさんは「一人芝居」
さださんは「朗読者」ってカンジがする。
ど直球で強烈なフレーズ炸裂 by みゆき
VS
情景を細やかに描写してジワらせる by さだ
一方で共通点、二人は『湿度』がよく似ている。
味噌と醤油で育った日本人ならたいてい感じる湿気っぽさ。
日なたじゃなくて日陰の湿った匂い。
似て非なる二人。
暗さ、陰鬱さでは勝負つかず。
北の龍と西の虎。
かつて、さださんご本人も「自分が嫉妬した人」でみゆきさんを上げていたことがあった。
感受性・表現力に関して「オレには到底マネできない」と語っていたが、みゆきさんからしたら「そっくりその言葉お返ししますわ~!」だと思う。
味噌と醤油を比べることはできないように。
腰痛を癒すのに「針」にするか「お灸」にするか、
コワいんだけどどっちも効くよね~!
「何だかそんなカンジなんだよね~」と、
たかだか17、8の小娘たちはうなづき合ったのだ。
小生意気な盛り。
でも「あの頃」を思い起こすとき、そこに必ず彼らの歌があって、今もメロディを聞いただけでフレーズが一句間違わず思い出される。
そんな歌が書けるのだから、天才なのは間違いない。
この記事はなせじょーじさんにケンカを売るかもしれない記事です。
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初期の歌詞の方がわかりやすいかなと思い、あえて初期の曲で紹介してみました。
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今日はこんなカンジで。
では また~