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読書感想『サイコロジカル(上)兎吊木垓輔の戯言殺し』『サイコロジカル(下)曳かれ者の小唄』※ネタバレ注意

今週読み終わった本は著作西尾維新の戯言シリーズ第四・五巻『サイコロジカル』でした!二巻まとめさせてもらいました。


きみは玖渚友のことが本当は嫌いなんじゃないのかな?

およそ論理立てて物事を考えるほど無意味なことはない。所詮論理など人の考えたものであり、そして世界は人の手には余りすぎる。博愛を自らの義務と課し、自由を何よりも重んじる、周囲に調和をこの上なく提供する誠実な正直者、つまりこのぼくは、7月、囚われの壊し屋を救う旅に連れられた。パーティのメンバーは玖渚友と鈴無音々。向かう先は悪の要塞――要するには『堕落三昧(マッドデモン)』斜道卿壱郎博士の研究施設。この冒険の登場人物は誰もが際限なく矛盾していて、誰もが際限なく破綻していて、そして誰もが際限なく崩壊していて、はっきり言って壊れている。それはひょっとしたら壊されただけなのかもしれないが、しかし戯言遣いのこのぼくに限って言えば、わざわざ壊してくれるまでもない。だってぼくは最初から、ほら、こんなにも見事に壊れてしまっているゆえに—――

講談社BOOK倶楽部より


こんなことを言うとファン失格なのかもしれないのですが、正直なところここから先の戯言シリーズはもう一回読みたいと言い切れないところがあるんです。
ほら、刀語だって七実が死んだあたりから、特に最後の二巻とか読みたくないじゃないですか。あれと同じ感じです。

そしてなにより個人的に兎吊木が好きじゃないんですよ(笑)。一回しか読んだことなくて、それも七年以上読んでない作品でもあの最初の捲し立てるような会話は嫌な記憶として残っています。

そしてなにより、この辺りからいーちゃんと友の物語は動き始めます。止まっていた時間が進み始めるのも相まってやはり体が重かったというわけです。

やはり最初の問答は目が離せない、忘れられない重さがありますし、あんまり気分の良いものではないですが面白いものは面白いわけです。
やっぱり会話劇になると読めてします面白さは流石です。

上巻は舞台設定を説明しながらですが、確実にいーちゃんが避けている何かを周りの人々が追いつめているようなところがあります。
目を逸らしているなにかを外側から囲うように向き合わされるのは自分が苦手というのもありますけど、やっぱり心苦しいものです。

上巻を読み終わって思い出したんですけど、そういえば上巻は兎吊木が死んで終わるんだった、とやっぱり忘れていたものが多いのでとても楽しめました。

それにしても殺害描写細かすぎるでしょ。


といういわけでここから下巻。
ここからいーちゃんの物語は進み始める。進み終わる。終わり始める。始まり終わる。

人生において選択肢があるという話はよく聞きます、○○をしないと選択肢が狭まるとかそういう話もいろいろ言われます。
じゃあそもそも選択肢が一つしかない場合ってのはどうすんだよ、という話ですがやっぱりそれでもその一つを自分で選ばないといけないのでしょう。
流された結果ではなくてあくまでも自分で選ばないと後悔するのでしょう。


上巻の感想でもいいましたけど、恐ろしいくらいトリックについては覚えていないんですよね…
読み進めていくうちに「あーーそういえば」となることはありましたけど、基本的にはかなり新鮮に楽しめました。
トリックを考えながら読むタイプではないので(考えても分からないので)すっかり自分のマッドデモンの方々と同じように騙されてしまいました。

この主人公一回もちゃんと解決してないじゃん。解決編ってなんだよ…
読み終わって初めて、「そういえば死線の蒼って伏線だったな」とか「小唄さんの入れ替えトリック仕込まれてたな」とか思い出しました。
記憶を引き出す能力があまりにも低い…いーちゃんといい勝負できるんじゃないでしょうか。

最後の「わからねえよ」の一言いいですよね。悩み始めたこと、悩んでいながらも進み始めたことがすごく伝わってくる一言です。


というわけで『サイコロジカル』でした。
次の作品からまた一段と、より一層、読みたくない!
いーちゃんと同じく進みたくない人がここにいます。

相変わらず登場人物が魅力的で本当に読んでいて楽しい。
ファーストキスを奪われたいーちゃんの挿し絵とっても好きです。


そういえば『傷物語』のブルーレイが届きました!!

高級感漂っていてかっこいい…
でかすぎて張る場所になやむ…

今劇半聞きながら書いてます。神前さん高田さんは天才です。
etoile et toi本当に美しい……

次に出る感想は米澤穂信先生のボトルネックになります。
初米澤穂信先生でしたが、大満足の作品でした。読み終わっているのでそのうち出します。

それでは最後まで読んでくださった方いらっしゃればありがとうございました。
著者Twitter:まがしき @esportsmagasiki


覚えておきたいフレーズ集

「感謝なんて誰にでもできるわよ。誰にでもできることなんてつまんない。あんたはあんたにしかできないことをやりなさい、いの字。」

(上)p34

かっこいい…こんなこと言ってもしらけない大人になりたい…

「天才と呼ばれることなどそんな大したことではない。難しいのはね―――自身で自身を天才だと確信することなんだよ。勿論、思い込みなんかじゃなくってね」

(上)p180

Fate/extraのネロも似たようなことを言っていました。ま、関係のない話ですが。

枯れない花はないが咲かない花はある。世の中は決定的に不公平だ。

(下)p6

終わりは誰にもあるけど、そもそも始まらないこともある。

信念が皆無に存在しないという人間は、その存在だけで恐怖の対象になる場合だって、この世にはあるということを。
問題のある人間には解答だってないということを、この身をもって思い知ることとなる。

(下)p107

こんなやつは世の中にいるんでしょうか。いてほしくない…

「人間は余裕あってこそ初めて善い人間になれるという心温まるお話ですわ。切羽詰まっているんですよね、皆さん」

(下)p158

これは本当に本当にそうですよね…

限られた視界の中で何かを悟ったような気になって、悟ったような口を利く。虚構を塗った自分が崩壊するのが怖くって仕方ない。そして崩壊した後の中身は空っぽだ。虚構自体が本体になっていたってわけだ。

(下)p273

グッ…刺さる。空っぽの知識をためているような気がしますね、自分。


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