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読書感想『悲終伝』※ネタバレ注意
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今週読んだのは著作西尾維新の伝説シリーズ第十巻『悲終伝』でした。
ついに伝説シリーズの最終巻。前作の終わりで宇宙と救助船、人間王国に散らばった空挺部隊の皆々すべてが動き出し、いよいよ物語は終わりへといった感じでしたが……
今作の開始は前々巻の最後、地球が惑星たちを殺したシーンの後を描くところから始まります。殺そうとしている際に人間らしい感情を取り戻しかけてしまう空々君、その理由は剣藤さんを介錯した時を思い出してしまうからということでここでも彼女の影響の大きさが描写されていますね。
今作は最終巻ですが、内容の八割は『どうやって地球に帰るか』であり、個人的には科学か魔法かそれとも両方の組合せによってか、はたまた惑星たちの力を借りるのかのどれかだろうと予想していました。
ただここまで幅広く予想しておきながらすべて外してくるのが西尾維新。
なんと残り100ページで大きく展開が動き、空々君の話を聞いていた火星が取り乱して月を地球にぶつけようとします(?)。
これにより後を鑑みず動かないといけなくなり人間王国の馬コンビ+杵槻花屋悲恋コンビと連絡を取ります。
この悲恋(花屋)と話すシーンはなぜかジーンときました。花屋は自分は少しだけ話して(それが最後とわかっていながら)前作でやったように悲恋内の人格AIを剣藤さんと入れ替え話す機会を与えます。
やっぱりこの二人の間にある空気感はなにか違いますね。文章による会話劇だけで雰囲気や懐かしさを醸し出せる西尾維新のすばらしさが現れていると思います。めちゃくちゃ感動しました。
この物語の結末は今まで出てきたすべての要素を組み合わせての地球からの独立でした。
いやー予想は全くできなかった。なんとこのすべての要素、地球の行う『大いなる悲鳴』と地球陣まで含めてすべての要素だったわけで、こんなの予想できるわけない(笑)。
天才ズ+氷上さんの魔法、研究者二人の科学+魔法、杵槻さんのアイデア、空々君の行動と言葉、そして剣藤さんの言葉。きれいに全てを使った結末で本当に素晴らしかった。
というわけで物語は終わりへ……
なんか普通にうるっときました。舞台は100年後の未来へ飛び、部隊の皆の老後の描写が…
空挺部隊で最後まで残ったのは地濃さんと空々君。「愉快でたまらなかった」や「鋼矢さんの葬式で感情は全て涸れ果てた」といってるところからやはり戦いが終わった後はふつうの人間として感情を持ちながら生き続けたと思います。
最後の独白、いつ読んでも泣けると思います。
(やっと生き切ったんですよ、剣藤さん)
僕が生き切ったんだ。
ただひたすら生きようとした、いつ死んでもおかしくなかった少年の最後のセリフ。長かったシリーズなだけにすごく感情移入できる言葉でした。
と本編の感想はここまでとして、ここからは面白かったセリフを取り上げていきたいと思います。
・最強の矛と最強の盾を売っている商人を論破するのは、あまりにも恐れ知らずである。(P46)
別にためになるとかじゃないですけど「ふふっ」ってなりますよね。この伝説シリーズの章タイトルみたいなやつは本当おもしろいですね。
・いいか、お前の代わりなどいくらでもいるんだ―――つまりお前は、何者にでもなれるんだ。(P320)
座右の銘にでもしちゃおうかという一文。もちろん現実だとこううまくはいきませんし、もし天才の仕事を自分が引き継いだら何もできないでしょう。
ただ、人間というのは時間と人数をかけて亡くなった天才の穴を埋めて進化してきたわけですし、あながち間違えてはないかなとも思います。
・戦争がフィクションになるなんて、そんな素晴らしいことはない。(P503)
この言葉、賛否があるかもしれませんが個人的には良い言葉だと思います。戦争は当事者であればあるほど、話したがらない傾向があると思っており、100歳で亡くなった岡山出身の我が家のひいおばあちゃんも全く戦争の話をしてくれませんでした。
意外とフィクションとかに昇華するほうが本人たちは楽なのかもしれないと、当事者ではなかったものとして考えてしまいました。
というわけで今週読んだのは『悲終伝』でした。この作品をもって伝説シリーズはおしまいです。この作品を最初に読んだのは中学2年生の時、あの一巻の衝撃を未だに忘れられません。明日にでもシリーズ全体への感想を書き残したいと強くおもう思い入れのある作品でした。
そして明日は『戦物語』の発売日!!
こちらもなるはやで読みたいと思っています!!
それでは最後まで読んでくださった方いらっしゃればありがとうございました。
著者Twitter:まがしき @esportsmagasiki