
読書感想文『悲衛伝』※ネタバレ注意

今週読んだのは著:西尾維新の伝説シリーズ第七巻『非衛伝』でした。
伝説シリーズクライマックス三巻のうちの最初の巻、物語が大きく完結に向かい始める巻でもあり、楽しみにしていました。
前作の終わりで、各国の対地球組織の崩壊+集合に紛れる形で左博士と酸ヶ湯博士が人工衛星『非衛』を作っており、憎き地球の魔の手が届かないところで研究・実験を行いたいという話をされたところで話が終わりました。
そして今作、その人工衛星の中から話がスタートするのですが…
開始直後、まだ非衛の話もなにも聞かされていない状況でバニーガールが登場しました……
西尾維新は読者に空々君並みの対応適応能力があると思っているのでしょうか。まさか開始一ページで展開が動くとは思わずかなり衝撃を受けました。
このバニーガールは月の概念の化身(?)。地球と人類の不毛で醜い争いを止めるため地球の外まで来た人類に話しかけてどうにか停戦させようとしてきます。停戦案を擦り合わせた結果、地球以外の惑星全ての賛成票を集めて太陽に直談判、そのうえで地球との仲介をしてもらい停戦しようという話になっていきます(??)。
この先は全て他の惑星との会談(???)になるのですが、一キャラずつ感想を言うと大変なことになるので飛ばします。
途中でかんづめちゃんや灯篭木ちゃんが参戦。灯篭木ちゃんに関しては彼女()になるわけですから、惑星たちやこの二人との絡みも含めて西尾維新の会話劇を濃密に見せていただけました。
空々君にしては首尾よく太陽まで巻き込めこれから大一番。すべての惑星が空々君の部屋に集まってサミットというところで、すべての惑星が死にました。
………
唖然としました。一、二分唖然としていました。今回地球は蚊帳の外で話は進んでおり、序盤からひたすらに地球の影響の薄い場所と強調されていたため思考の外に置いてしまっていました。
そしてここでこの巻は終わります。いやなんてところで終わらせてんだ。
今回の巻では、帯でもあとがたりでも言われている通り、空々君が話し合うことがメインとなっています。まさかあんなに会談を読まされてすべてが無に帰るとは思いませんでしたが、全体を通して話し合いの難しさや対立の複雑さ、戦争というものの終わらせ方や人間の愚かさなどを見事に書かれている巻でした。
ここからは特に気に入った文や考えさせられる文を軽くまとめてみたいと思います。
・「正義は消耗品で、倫理は贅沢品だからー」
灯篭木ちゃんのセリフ。これはその通りですよね~。正義を貫くことの難しさ、余裕がない時に他者を鑑みれる難しさをきれいに表現してるな~と思いました。なんかの引用なんですかね?
・『多数をまとめるときは共通の無私な大義、少数をまとめるときは共通の敵』
人類は共通の敵がいるときのみ結託するというのは人類史を長く見てもよく言われることで、人をまとめる際に最も使いやすい方法の一つだと思っていますが、多数をまとめるときというのは確かにこういう方法のほうが有効だなぁと身に染みて思いました。
・「今の戦争を止めることは、未来の戦争を止めること」
この言葉、ウクライナ侵攻を傍目で見ている現状によく響く言葉ですね。
戦争を起こさせないことは無理でしょう。断言できます。ただ起こってしまった戦争の終わらせ方をしれれば、最悪の事態だけは回避できるかもしれない。次の戦争が起きてしまっても被害を減らせるかもしれない。
理想と現実の中間にある理想論な気がしますが、大切な考えに思えました。
というわけで今週読んだのは『非衛伝』でした。次読むのはこのまま続けて『非球伝』を読もうと思います。
『怪人デスマーチの退転』はすでに買っており届いているのですが、もうちょい先になりそうですね…
もしかしたら『戦物語』のあとになるかも。
どちらにせよまだまだ読みたい西尾維新作品ありますので楽しみにしていきたいと思います。
それでは最後まで読んでくださった方いらっしゃればありがとうございました。
著者Twitter:まがしき @esportsmagasiki