親への負い目
今年は仕事が忙しく"夏休み"と呼べるような休暇を取ることができなかった。
長い梅雨が明けて急に暑くなったこともあり、両親が熱中症に気を付けて生活しているか気になったので8月の3連休を利用して実家に帰ることにした。
金曜の夜、業務後に同じタイミングで同じ方面へ帰省する友達と待ち合わせをして、おつまみとハイボールを一缶購入して新幹線に乗り込んだ。
自分でも意外だったのだが、友達と予定を合わせて帰省するのは初めてだった。
私は独りではお酒を飲まないので、新幹線で一杯やるのもこれが初めてだった。
私が先に降りたが、それまで途切れることなくおしゃべりに興じた。
案外こういうのも悪くないなと思った。
実家に着くと、両親から熱烈な歓迎を受けた。
すぐさまエアコンは適切に使用しているか、水分補給は適宜行っているか確認した。
まるで事情聴取のように両親に詰め寄っていたかも知れない。心配症で申し訳ない。
急に帰省することを決めたこともあり、特にプランもなく、一緒に買い物へ行ったり食事をしたりして楽しく過ごした。もっと天気が良ければ車で遠出できたのだが、生憎どんよりした天気が続いていたので、3人で映画を観に行った。
母は元来映画館が苦手なのだが、今回は快適に過ごせたようで、「また行ってもいいかな」などと言っていて、どうやらいくつになっても人は変われるようだ。
楽しい時間というのは、本当にあっという間に二日が過ぎた。
今回の帰省は短く、両親に何もしてあげられなかったので、いつも以上に名残惜しかった。
新幹線に充分間に合うよう、余裕を見て駅まで車で送ってもらった。
もうすぐ駅だというタイミングで、母が助手席から振り返って、
「少しだけど…」とお金を渡してきた。
「いらないよ、ご飯だって沢山食べさせてもらったし」と言って、
私は母の手を押し戻した。
「帰ってきてくれてありがとう、交通費の足しにして」と、今度は母から押し返される。
それでも私は受け取ることができなかった。
すると、父が、
「親に負い目なんて、感じなくていいんだよ」と言った。
どうしてかわからないのだけど、大粒の涙が次から次へと溢れ出てきて、
「もらえないから。」と、ようやく言った。
きっともらうべきだった。両親の気持ちを考えたら、もらったほうがいい。
でもどうしてももらえなかった。
新幹線に乗ってからも、ずっと涙が止まらなかった。
私は大いに感じているのだと思う。両親への負い目を。
大人になるまで沢山心配や迷惑をかけてきたし、
9年ほど前には両親をとても傷つけしまうこともあった。
今は遠く離れて暮らしていて、普段何も助けてあげられていない。
その全てに負い目を感じているのだ。
普段からそんなことばかり考えて過ごしているわけではないけれど、
ひょんなことから思い知らされてしまった。
次は年末に帰省する予定だ。
今度は長めに休暇を取って、両親と楽しく幸せな時間を沢山過ごそうと思う。
負い目など感じないくらい楽しませたいと思うし、私も一緒に楽しむ。
それまで私は公私ともに自分自身の生活を充実させる。
私が幸せでいることが、両親にとっての幸せだと思うし、
そうなればきっと、
両親の気持ちをまっすぐ受け止められるようになると思う。
ダディ、マミィ。待っててね。
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