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ファッション業界を変えるケリングの環境損益計算書とは?〈サステナ学習帳#110〉
ファッション業界は、環境負荷が大きい産業の一つとされている。原材料の生産から製造、流通、廃棄に至るまで、多くの資源を消費し、環境に悪影響を及ぼしている。この課題に対し、ラグジュアリーファッションの大手ケリングが導入した「環境損益計算書(Environmental Profit & Loss、EP&L)」は、革新的な取り組みとして注目を集めている。本日は、EP&Lとは何か、そしてどのように業界に影響を与えているのか確認したい。
環境損益計算書(EP&L)とは?
EP&Lは、企業活動による環境への影響を貨幣価値で測定し、損益として評価する仕組み。ケリングは、ファッション産業全体のサプライチェーンを対象に、温室効果ガス排出量、水資源の使用量、土地利用、汚染、廃棄物といった環境影響要素を評価している。これにより、環境負荷を明確にし、経営判断に反映することが可能となった。EP&Lは単なるコスト計算ではなく、環境影響を数値化して視覚化するツールである。
EP&Lの導入背景と目的
ケリングがEP&Lを導入した背景には、環境問題に対する責任ある企業としての姿勢がある。特に、原材料の調達から最終製品の流通までのプロセスを見直し、環境負荷を削減することが目的だ。また、ファッション業界全体が持続可能性を重視する方向にシフトする中で、先駆者としての役割を果たそうとしている。
評価基準と測定方法
EP&Lでは、環境影響を5つの要素に分解し、それぞれを貨幣価値に換算して測定する。このアプローチにより、環境影響を具体的な数値で表すことができる。例えば、温室効果ガスの排出量を削減することでどれだけのコストを節約できるか、またはどのような社会的価値を生むかが明確になる。
具体的な成果と業界への影響
EP&Lの導入後、ケリングはサプライチェーン全体での改善を実現した。再生可能素材の導入や、生産プロセスの効率化による温室効果ガス排出量の削減など、具体的な成果を上げている。また、同社の取り組みは他の企業にも影響を与え、環境影響の透明性を高める動きが広がっている。例えば、グッチやボッテガ・ヴェネタといったケリング傘下のブランドも、持続可能な素材の使用を拡大し、環境負荷を軽減している。
まとめ
ケリングのEP&Lは、環境負荷を数値化し、企業活動に反映させる革新的な手法だ。この取り組みは、環境問題をビジネスの中核に据えるモデルケースとして、業界全体に広がりつつある。ケリングの挑戦は、ファッション業界における持続可能性の基準を引き上げ、他企業にも新たな道筋を示している。