自然を資本として捉える新しい経済モデルとは?〈サステナ学習帳#102〉
経済活動は自然環境に支えられている一方で、その価値が経済指標に反映されることは少なかった。しかし近年、「自然資本」という新しい考え方が注目されている。2021年にイギリス政府が発表した報告書「ダスグプタレビュー」は、自然を資産として捉えるべきだと提唱し、この新しい視点を明確に示している。本日は、自然資本が私たちの経済や社会に与える影響について確認したい。
【自然資本とは何か】
自然資本とは、森林、川、生物多様性など、私たちが日常的に利用し、依存している自然界の資源を指す。これらは道路や建物などの「人工資本」、教育や健康といった「人的資本」と同様に、社会を支える基盤であるとされる。
これまで経済指標の中心となってきたGDP(国内総生産)は、自然資本を考慮しないため、環境の破壊や資源の消耗を見逃してきた。この新しいアプローチは、自然資本を経済モデルに取り入れ、環境の価値を正しく評価することを目指している。
【自然資本を取り入れる経済の再設計】
ダスグプタレビューでは、人間の経済活動が自然環境の中に「組み込まれる」必要性が強調されている。例えば、森林伐採は短期的な経済利益をもたらすが、生態系サービスの喪失という長期的なコストを引き起こす。これを回避するためには、自然資本を保護しながら持続可能な発展を目指す政策が必要だ。
さらに、自然資本を守るためには、公共政策だけでなく、企業が自然の価値を理解し、投資や事業活動に反映させることが重要である。
【日本にとっての課題と可能性】
日本においても、自然資本の概念は森林管理や水資源保護、農業などで活用できる可能性がある。例えば、国内の森林は国土の約67%を占めるが、その多くが管理不足により十分な機能を果たしていない。このような自然資本を持続可能な形で活用することが求められている。
さらに、日本が得意とする技術やイノベーションを活用すれば、自然資本を軸にした新しい経済モデルを世界に発信することも可能である。
【まとめ】
自然資本を経済に組み込むことは、環境保護と経済成長を両立させるための鍵となる。このアプローチは、単なる環境保全策ではなく、持続可能な社会を築くための包括的なビジョンを提供するものだ。