【クリスマスプレゼント】歩き方の指導
アスリートが運動指導者として活躍する為に必要な学びを提供しているメディアです。
本日は12月25日、クリスマスということで細やかながら私が運動指導者として大切にしている「歩き方の指導」に関する考えをまとめてご提供します。
プレゼントですからもちろん無料記事です。
なぜ歩き方の指導なのか
歩行というのは身体運動の基本ですが、その指導を行っている運動指導者はあまり多くないように感じます。
歩き方を見てその人の身体の状態をチェックするという指導者はいるのですが、何故歩行そのものに対して指導をしないのでしょうか?
それは教えるのが非常に難しいからというのが理由のひとつに挙げられるのではないでしょうか。
そもそもアスリートであっても歩き方を教わった人というのは稀です。
私は陸上競技短距離出身で、幸いにも「走りは歩きの延長であるから歩きを直さないと走りは良くならない」という考え方で指導を受けた経験があり、実はそれがこの仕事を志したきっかけのひとつでもあります。
何故なら歩き方を修正したら本当に走りが速くなったから、そしてスタイルが良くなり、怪我をしなくなったからです。
私もそんな指導が出来る様になりたいと思ったというのは今回の話の本筋とは異なりますが、こういったバックボーンがある為にこの様な記事を書こうと思った次第です。
巷に溢れる歩行指導の問題点
先ほど歩行に関して指導している人はあまり多くないと書きましたが、もちろん指導している人もいるわけです。
ただその中でもまともな歩行指導が出来ている人は極少数なのではないかと推察しています。
というのも、SNSやYoutube等で解説されているものの多くを見ると、「それはちょっとどうなのかな?」という話が散見されるからです。
その中でも特に多く見受けられるのは以下の3つです。
さて、ここで考えたいのは本当にそんな風にして歩いている人が世の中にいるだろうかと言うことです。
公園でウォーキングをしている人の中にはそんな人もいるかも知れませんが、恐らく悪目立ちしてしまいますよね。
それなのになぜそんなことが実しやかに(?)囁かれているのか、それは単純に歩行(ウォーキング)中の運動量を増やしましょうということを言いたいだけなのだと思います。
要はしんどいことをやって運動量を確保しましょうと言う考え方ですね。
確かにエネルギー消費量は増えるでしょう。
しかし、本来身体は楽に動かせるようにしておくべきですし、無駄なエネルギーなんて別に使う必要はないわけです。
エネルギー収支バランスが崩れていて肥満体なら、見直すべきはまず食事ですし、わざわざ歩行動作をしんどいものにすることはありません。
運動指導者が常に考えておかなければならないのは、目的に見合った手段が提示できているかどうかです。
しんどいことをしたいという目的なら勝手にしんどいことをしたらいいわけですが、そんなことを好む人は稀でしょうし、歩行にそれを見出すのはどうも違うのではないかと思うのです。
腕振りについて
では適切な歩行とはどの様なものなのか、少し考えていきましょう。
先の悪例から紐解いていきます。
まずは腕振り。大きく後ろに腕を振るというのは、実は走りの指導でもよく言われていることです。
この際申し上げておきますが、それは不適切です。
試しにその場で腕を思い切り後ろに振ってみて下さい。
身体は後ろに行こうとするはずです。
逆に思い切り前に振れば身体は前に行こうとしますね。
歩く時、人はどちらへ進みたいのでしょうか?
前ですね。
ですから、腕は前に振ります。
しかし大きく振るのは短距離走などの時だけです。
街を歩く時に腕を大きく振る人なんていませんし、むしろそれが自然です。
振る方向は前方やや中央に向けて、勝手にぶらぶらと振られるだけでよいのです。
後は振り子の原理で勝手に後ろにも振られます。
この、勝手に腕が後ろに振られるという現象を取り違えると、後ろに腕を振らねばならないという発想になるので要注意です。
前に振られた結果、後ろに戻ってくるという考え方が適切です。
脚の動きについて
続いて脚ですが、これも膝を高く挙げて歩くなんて不自然極まりないですね。
脚に関しては腕振り同じ考え方ですが、方向が違います。
脚は後ろに送り出します。
だから身体を前に運ぶことが出来るのです。
その場でどれだけ膝を高く挙げようが身体は前に進みません。
ちなみにスプリンターは歩行者に比べて膝が高く上がりますが、それは後ろへの出力が大きくその反動で前方へ振り戻される量が大きくなるからです。
決してスプリンターも膝を高く挙げようなんて考えてはいけません。
腕は前に、脚は後ろに。これが基本的な考え方です。
重心の移動
最後に背筋を伸ばすかどうか、これに関しては確かに猫背だったり反り腰だったりするのはよくありませんが、リラックスすることが出来れば良いという考え方がよいでしょう。
今から歩いていくということは、腕振り然り脚の運び然り身体は動いて行かねばなりません。
それなのに背筋を伸ばすという緊張を与えると身体は運びにくくなります。
背筋という言い方をすると実はイメージがズレると考えていますので、ここからは体幹もしくは胴体という言葉を使うようにします。
人間の身体を前方に運ぶには、そもそも胴体部分が先行して前方へ移動することが大切です。
決して足を踏み出すのが最初ではなく、胴体部分すなわち体幹、すなわち重心位置が先行して移動するということです。
重心が先行して移動すれば、他の部位はそれに従って勝手に動くというのが理想です。
この時脚は後ろに送り出され、腕は前に振られ、その重心移動をサポートします。
脚を前に出して腕を後ろに振れば重心移動の邪魔になります。
そこに背筋をまっすぐ何て言う意識を持ってきたら、そりゃしんどいよね、と言う話になるのです。
歩き方は生き様
ここまでの話はあくまでも概念的なことなので、これを見たからと言って歩行の指導がピカイチに上手になるかと言うとそれは保証できません。
歩行指導で最も難しいのは、歩行と言うのは本来無意識的に行われている単なる移動行為であって、しかもその無意識の動作が毎日何千歩と積み重なっているわけですから、その人の生き様であるというところにあります。
変化を見出すにはほんの少しずつ修正をせねばなりません。
これは他の動作にも言えることですが、その人の歩行を単に否定し修正するのは、生き様の否定と矯正になり得るわけです。
特に歩行の場合は、思考や思想、感情など、非常に微妙な世界との連関があると私は考えています。
だから誰もあまり手を出さないのか……と思えば、歩行の指導があまりお行われていない現状にも合点がいきますが、逆に言えばその人の人生の歩みを大きく好転させることができるかも知れないということです。
そんなこんなでクリスマスプレゼントらしく、ちょっと長い記事になりました。
少しでも参考になれば幸いです。
それでは、メリークリスマス。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?