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精神科病院における「からだのリハビリ」で押さえておくべき血液検査所見

 精神科病院では、一般病院等に比べ身体所見の精査はどうしても薄くなりがちです。そんな中でも臨床検査の所見は、対象となる人の全身状態を知る1つの手掛かりとなります。
 理学療法士や作業療法士には、検査所見を読むのがあまり得意ではないという人が多くいます。でも、うまく活用すれば、臨床上とても役に立ちます。たくさんの検査値を完璧に覚える必要はありません。たいてい、正常値域は結果の脇に併記してあります。定期的にチェックしていれば自然と覚えられるので、意識して押さえておけると良いです。


1.血液学検査


 感染症の有無や貧血傾向、脱水の有無等が分かります。当然、感染症に罹患しているならば感染対策をより慎重に実施する必要があります。貧血や脱水があると、対象者の身体のパフォーマンスは低下します。運動負荷の設定などに、とても役に立ちます。また、精神科病院では治療の過程でやむを得ず身体拘束が行われることがあります。そうした際、身体合併症の予防は重要な視点になりますが、検査所見の確認は必須です。

WBC:白血球値。高値だと細菌感染等、低値だと初期のウイルス感染、血液疾患等を疑う。

RBC, Hb, Ht:赤血球に関わる値。高値だと多血症や脱水等、低値だと貧血等を疑う。

PLT:血小板数。高値だと炎症性疾患、貧血等、低値だと肝硬変や血液疾患を疑う。

D-dimer:高値だと、体内で血栓が形成されていることを疑う。深部静脈血栓症(DVT)を疑い、運動の介入をする前に必ず主治医に確認をとる。

2.生化学検査

 血清中の物質を化学的に分析する検査で、健康状態や病気の程度などが分かります。栄養状態、肝疾患や腎疾患の有無や程度、電解質代謝異常などはリハビリテーションの実施と密接にかかわってきます。

TP, Alb:血中たんぱく質。高値だと慢性炎症や脱水等を疑い、低値だと低栄養や肝疾患や腎疾患等を疑う。

AST(GOT), ALT(GPT), γ-GTP:肝機能を評価する指標。いずれも高値で肝疾患を疑う。

CK(CPK):骨格筋や心筋、平滑筋などの筋に多量に存在する酵素。高値で筋破壊等を疑う。

CRP:急性炎症のマーカーとして利用される。高値で炎症、感染、組織の損傷などを疑う。

Cr:腎機能を評価する指標。高値で腎障害を疑う。

Na, K:血中に含まれるミネラル。Naは水分調整、Kは筋肉や神経の働きを担う。

・低Na血症は水分過多や塩分の不足等で生じ、比較的頻度が高い。頭痛や意識障害、食思不振、倦怠感などを来す。
・高K血症は、重症例では危険な不整脈を来すため注意が必要。
・低K血症は、重症例で多尿、筋力低下、不整脈、心筋障害、腎障害を来すことがある。

3.その他:向精神薬の血中濃度

 精神疾患の治療に使われる薬剤には、定期的に血中濃度を測定することが推奨されているものがあります。精神症状がある人へ介入する際、薬が治療域に入っているのかどうか、増量しようとしている過程なのか、減薬しようとしている過程なのかなど、参考になることがあります。
 時には、向精神薬の副作用として、錐体外路症状等に気づくことがあるかもしれません。治療上、服薬の継続がやむを得ない場合もありますが、主治医と相談すると他の薬剤に変更することや、減薬が検討できる場合があります。服薬状況によって、身体機能面のパフォーマンスが変わることが時々あるので、余裕があるときにチェックしておくと良い項目です。

血中濃度の測定が行われることが多い薬剤

・気分安定薬:リチウム(リーマス)、カルバマゼピン(テグレトール)、バルプロ酸ナトリウム(デパケン)

・抗精神病薬:クロザピン(クロザリル)、オランザピン(ジプレキサ)、ハロペリドール(セレネース)

など

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