"お賽銭"をアプリ化したら色んな面白いことができるんじゃない?という妄想
皆さんは初詣行かれましたでしょうか。年始から日本を震撼させる悲しい災害に見舞われましたが、自分が元旦の早朝(地震発生前)に参拝した印象では初詣の賑わいもようやくコロナ前の活気に戻りつつあるように感じました。
さて、今回は表題にある通りちょっと最近自分が考えていた妄想を文章にしたためてみようと思いました。
一昨年にこんな記事を書いていたのですが、個人的にも神社仏閣の行く末はずっと関心事項の一つで、何かできないかなぁと稚拙ながらぼんやりと考えていたりしました。
ただこれがきっかけで知人のつてで神社仏閣ONLINE代表の河村英昌さんとお話させていただく機会をいただけました。
神社仏閣とアニメとのコラボを行う仲介をされていたり、神社仏閣を巡るアプリを作っていたりと、そのお話のどれもめちゃくちゃ魅力的なものでした。
モゴモゴと自分が「神社仏閣が今後も存続するといいなぁ~アヘアヘ」と考えていた未来を全力で掴み取ろうと、新しい施策に本気で取り組んでいる姿を目の当たりにして、その眩しさに身が焼け焦げそうでした。
とにもかくにも、ここから得られた教訓は、稚拙でも自分の考えやアイディアを発信しておくと知らないところで誰かの目に止まったり良いご縁があるかもよ、ということで、たしか過去にキングコングの西野さんあたりもそんなこと言っていた気がします。(言っていないかもしれません)
というわけでお正月明けの今日は「こんなのやってみたい!」ということを投資家にピッチをするような気持ちで文章をまとめてみたいと思いました。
ちなみに探す限り見つからなかったのですが、万が一「ちょっと似たサービスすでにあるよ、、」みたいな情報など持っている方いたらコメントいただけたら嬉しいです、。
いつものことながら前置きが長くなってきたので、本題にうつります。
デジタル賽銭がイマイチ普及しなかった理由
お賽銭の電子化については以前から「J-Coin Pay」というアプリで対応していて、もしかしたら目にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
使い方はPayPayなどと一緒で、賽銭箱の前に置かれたQRコードをアプリで読み取り、入れたい金額を指定して送金するというもの。みたいです。
キャッシュレス化が進みお財布を持ち歩かない生活スタイルが定着する中で、お賽銭のために現金を持ち歩くのは確かに不便で、こういうサービスはかなり需要があるようにも思いました。
ただでさえ神社仏閣の経営難が叫ばれている中でお賽銭の集金手段が増えることは単純に神社仏閣側にも好ましいことでもあり、インバウンドとの相性も良さそうです。
しかしなぜかイマイチ普及していません。ここからはその理由を考察してみました。
1.お賽銭のためだけにアプリを入れるのが面倒
まずお賽銭をするにはJ-coin Payというアプリを入れる必要があります。
普段から既にJ-coin Payを利用している人なら良いでしょうが、私の周りでJ-coin Payを使っているという話を聞いたことがありません。たま~に確かにレジ横の決済方法一覧が書かれている立て札?でアイコンが並んでいるのも見た気がしますが自分の記憶はその程度で、そもそもとしてアプリの普及率が低い。
いくらお賽銭を電子化したいとユーザーが思っても、そのためにアプリをインストールして決済の設定をして使い方を覚えて・・・・という労力を考えるとわざわざ知らないアプリをインストールして行いたいとまで思う人がそもそも少数なのだろうな、ということは推測できます。多くの会社が同様のサービスを提供して競合ひしめき合っている決済アプリであるならなおさら。
ちなみにPayPayや楽天Payなどの一般的な決済アプリでお賽銭ができない理由は結構法律などのテクニカルな問題があるそうで、神社仏閣側が飲食店のように決済アプリ会社に申請してQRコードを準備して賽銭箱においておく、ということはできないそうです。そのあたりの法的なしがらみをクリアできたのが現状J-coin Payのみなのだそうです。
そのため電子化を普及させるには「既に多くのユーザーがいる決済アプリに対応させる」か「わざわざアプリを入れてでも使いたくなる価値やメリットをデザインする」ことが必要になってくるように感じます。主にこの記事では後者について後ほど議論を深めていきたいと思います。
2.「QRコードを読み込んで送金する」という行為にありがたみがない
また、そもそもとして「電子送金」という行為と元々のお賽銭という行為の乖離が大きく、ユーザーの満足度の設計がうまくいっていないようにも感じています。参拝という厳かな行為・イベントに対して、ちょっと雑にデジタル化を織り込んでしまっている印象を受けています。
神社やお寺への参拝は、賽銭箱の前までゆっくり歩いていき、お財布から小銭を取り出して、ぽいっとお賽銭箱に投げ、手を合わせる。
このように参拝というのは、その前後を含めた行為自体に大きな特徴と意味合いがあり、長年私達の身体に染み付いていました。
しかしJ-coin Payではお賽銭の前でスマホをかざし、金額を入力して送金ボタンを押す、という全く異なる参拝の方式をアプリ側が強いることになります。
この行為はどちらかというと私達にとっては飲食店やスーパーでの支払いに感覚的には近く、現金をお賽銭箱に投げて手を合わせる参拝とはありがたみが全く異なってしまいます。
こういったユーザーの行動や心理へのデザイン設計が甘く、非常に良いサービスであるはずなのに使う前から抵抗感を持たれているようにも感じます。
これを解決するためには、現状のお賽銭という行為を分解して読み解き、電子化の際にもその行為の中に丁寧に現行の参拝の行動・行為を織り込んでいくような設計が必要なように感じました。
お賽銭の電子化がもたらす「ちょっと面白そう」な未来
課題を解決するための具体的なアイディアに移る前に、お賽銭を電子化(スマホ側で管理)させることで色んな面白いことができるように感じているので自分が妄想しているものを書いてみようと思います。
このあたりのメリットをきちんと訴求することで、「お賽銭のためにわざわざアプリを入れるのはちょっと・・・」というユーザー層を取り込めないかと考えます。
考えているポイントは5点。
クレカでお賽銭が可能(外国人に優しい)
お賽銭したい金額の現金が手元になくても参拝できる
どこの神社に行ったかのログが残る(御朱印帳代わり)
どこの神社にどれだけお賽銭(支援)したかを見える化できる
神社への訪問ログやお賽銭(支援)量をシェアしあえる
クレカの賽銭が可能で、好きな金額でのお賽銭が可能
1と2のメリットに関しては「お賽銭の電子化」で真っ先に思いつくメリットの一つでしょう。この部分が強力であり、自分が作りたいと思う意志の根源もここにあります(お参りはしたいけど財布を持ち歩きたくない)
どこの神社に行ったかのログが残り、賽銭金額の見える化もできる
3の「ログが残る」と4の「お賽銭の金額の見える化」という部分がお賽銭ならではの価値になるかなぁと考えている部分で、例えばログに関しては現在でも御朱印だったりお守りだったりでその神社に行った証、記録をモノやかたちで残したいという心理が神社仏閣好きの人に自然に備わっているものです。
さらにお賽銭という行為にしても、同様に記念や記録のような意味合いも込められている気がしています。「せっかく出雲大社に来たんだから、ここで参拝したという記憶を残しておきたい」という心理があるはずです。
また、そのほかにもお賽銭には「支援」や「感謝」のもという側面も非常に大きいものと考えています。観光の目的地の一つに神社仏閣を訪れることもあれば、家の近所の神社仏閣に初詣に行ったり、折を見て習慣的に参拝しているような人、寄付をする人も少なくありません。
そういった人の心の中には地域や地元の神社仏閣への愛着や、いつも見守ってくれている神様、仏様への日頃の感謝などが存在しています。
昔見たB'zのドキュメンタリー番組で、ランニングを習慣にしているボーカルの稲葉さんがウェアの中に500円玉を忍ばせて走っている光景が放映されました。その500円はいつもランニングしているルートにある神社へのお賽銭で、毎日ランニングがてらその神社へのお参りをしているそうです。
こういったかたちで、習慣的にお賽銭をしているという人は、特に生活に余裕があるエグゼクティブな人の中には一定数存在しているように感じます。
参拝の記録をシェアできる
5の「ログやお賽銭の量をシェアできる」という機能は、こういう需要があるのかは正直わからないですが、例えば初対面の人同士で同じような神社仏閣を訪れているような事実がわかれば会話のネタになるでしょうし、SNSなどと連携して近所の人同士で神社仏閣好きを集めてイベントをしたり、なんかもできるかもしれません。
ただここに関してはちょっと本当にどんな需要があるのか読めないため、実際に機能を実装する場合は丁寧にリサーチして作り込む必要があるかなぁと考えています。
私が考える「お賽銭電子化アプリ」
ではここから自分が妄想しているお賽銭電子化アプリのフローをまとめてみたいと思います。求めているのは「電子化されても参拝のありがたみが損なわれないUX」で、このあたりに重要なのがどうしても「物質的なお金(小銭や紙幣)を賽銭箱へ投げ入れる」という行為だと考えており、電子化する際にもこの部分は消してはいけないと考えています。
従来の「QRコードをピッ」という使い方より手間があるのですが、こういう体験価値を提供できたらもっともっと参拝が楽しくなって色んな人が神社仏閣を訪れる機会が増えるのではないか、という妄想です。
1.参拝中にアプリから通知
GPS機能を用いて、本人が神社を参拝中と思われる動きをしている際にスマホから参拝中の神社へのお賽銭を促すメッセージを表示
2.通知からアプリを起動し、お賽銭画面への遷移や神社仏閣の由来を表示
3.神社仏閣内のQRコードを探す
社務所や賽銭箱横にあるQRコードを探す
4.QRコードを読み取ってお賽銭の金額を入金
金額は数字をテンキーで手入力するのではなく(サブ機能として提供しても良いが)、基本的には小銭や紙幣を模したアイコンをタップして希望の金額を設定させる(財布から現金を選ぶような感覚をアプリ上で再現)
5.専用コインを受け取る
社務所がある場合はそこで決済画面を見せてコインを受け取る。社務所のない小規模な神社などでは賽銭箱の横に専用コインを置いておいて、利用者に賽銭金額分を取って行ってもらうでもも良い(賽銭箱横のおみくじ方式)
6.専用コインを賽銭箱へ投げて参拝
7.アプリに参拝記録が残る
その際に例えばお賽銭によってどんなことができているか(修繕費や物品購入など)の情報が出てきてもよいかも
8.自分が辿ってきた記録を眺める
お賽銭をすればするほど記録が更新されていくゲーム性のようなものも演出できると良い
このアイディアの懸念点
こんな感じのアイディアを考えているのですが、個人的に一番の課題がやはり「専用コイン」の扱いかと思います。
コインを準備さえできればユーザーが受け取るまでのフローの実現はできそうですが、お賽銭箱に入れた際に中で現金と混ざってしまうことで神社仏閣側のオペレーションに負担をかけてしまう可能性があり、このあたりをどう解決させるかは大きな問題です。
また、コインもできれば複数の種類があって、お賽銭の金額によってコインの質が変わるようにもできればしたい。(その分大きな金額をお賽銭するモチベーションにもなる)
あとは(個人的には気にしていない点ではあるのですが、)もし社務所などがない場合はお賽銭箱の横にQRコードとコインを置いておくような運用が必要で、コインの盗難リスクもあります。
もちろんコインはあくまでお賽銭の現金を代替させる目的のものなためそれ自体に価値があるものではないし、そもそも神社仏閣自体が心理的に犯罪を抑制させるような空間にもなってはいるのですが、受け入れる側的には必ず気にするポイントかと思っています。
なのでこの専用コインの運用が難しければひとまずそれ以外の機能をテスト的に運用してみて感触を試す、みたいな開発もありかと考えています。
ビジネス的な展望
もし本格的にビジネスとして立ち上げる場合何かしらで収益を上げる必要があると思っており、そんなアイディアも最後に追記しておきます。
ただ神社仏閣という宗教的なものを対象とする都合上このあたりのお金の流れみたいなものがややこしそう(法的な色々が絡みそう)な上、このアイディアを使ってお金もうけしたい!というよりはやはりキレイ事じゃなく神社仏閣という日本の文化を守りたい!という思いが強いので、このあたりはさらにガバガバな妄想になることを予めご了承ください。
基本的に収益は企業や自治体からの広告収入になるかと思います。
このサービスに広告を出向する側のメリットとしては、
・神社仏閣が好きな経済的・心身ともに比較的裕福な人に届く
・位置情報をトラッキングしているため生活圏に合わせた広告出稿ができる
というものがあるため、そのあたりを訴求して広告を募っていく感じになるかなぁと思っています。(自信なさげ・・・)
まとめ
もともとは「お賽銭って現金が必要で不便だなぁ、、」と考えたのがきっかけだったのですが、電子化をすることで面白そうなことができそうで、単なる電子化にとどまらず神道や日本の仏教の文化自体を守っていくような施策にならないかと妄想しました。
神社仏閣を巡ること、そしてお賽銭をすることをある種のゲームのような仕立てをすることで神社仏閣への人の回遊を促し、国内外の人をどんどん色んな魅力的な神社仏閣へ届けていくきっかけづくりになるんじゃないかと思ったりしました。
正直お賽銭が神社仏閣の存続に寄与する部分は限定的で、本気で神社仏閣の金銭的な問題を解決するならもっと根源的でドラスティックな施策や改革が必要にも思うのですが、自分はこんなサービスによってこれまで神社仏閣に興味がなかったような日本人や参拝に弊害を感じていた外国人の人たちが日本文化に寄り添うきっかけづくりができたらと考えていたりします。
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