【ゲーム配信者保存版】「ネタバレ」ゲーム動画有罪判決→配信ガイドライン次第で犯罪者と人気配信者が紙一重って怖くないですか?
ちょっと時期に遅れているのですが、シュタゲのネタバレ動画配信で被告が有罪に問われた事件で、民事じゃなくて刑事で、懲役2年執行猶予5年、罰金100万円という判決が出たということが、けっこうインパクトあるな~と思ったので一応書いておこうと思ったのでした。
報道記事はこちら↓
ネタバレ動画を3本投稿し、収入を得ていたということで、違法なのは明らかなのですが、それくらいだったらやっている人はかなりいるだろう、と思いました。
もしかしたら「お金を儲けていなければ大丈夫」という感覚をお持ちの人もいらっしゃるのかもしれませんが、X(旧twitter)に短い動画をペロッと貼るだけでも、許諾が無ければ、著作権法上は公衆送信権の侵害ということで、同じ種類の違法行為になります。
ただ、違法性が低いとか、個人の違法行為をいちいち咎めるのが面倒とか、引用の要件を満たす場合があるとか、著作権法違反は親告罪なので告訴できるのは著作権者であるとか、そういった割に合わなさが先に立って見過ごされ、お目こぼしされているだけです。
ここまでのことは常識だと思っていますが、意外と知られていないと思うことが多いので念のため記載しました。
「Youtubeでゲーム配信してお金稼いでいる人いますけど?」と思っている人へ
そういう事例があるから、「ああやってもいいんだ」みたいな感覚で動画投稿、配信をしている人がほとんどだと思います。
結論から言えば、ゲーム配信、ゲーム動画を投稿して(収益化して)いいかどうかは、ゲーム会社ごと、ゲームごと、ゲームの部分ごと、プラットフォームごと、配信の主体ごとに全部違う、ということです。
筆者はポケモン対戦動画を視聴することを愛好しておりますので、今開催されております東京ゲームショウ2023でベストセールス賞に輝きました「ポケットモンスター スカーレット・バイオレット」を例に説明しましょう。
任天堂について
かれこれ5年くらい前になりますが、2018年11月29日任天堂が配信ガイドラインを出しました。
当時すでに「ポケットモンスター ソード・シールド」、いわゆる「剣盾」の発売から1年が過ぎており、ポケモン動画投稿youtuberも普通に動画を投稿して収益を得ているという状況でした。
このガイドラインが出されたことで、そのような行為は明確に許されたという点で画期的でした。
ここで厳密には、「ポケットモンスター」シリーズの著作権は、任天堂、ゲームフリーク、クリーチャーズが共同で保有していることになっており、ゲーフリ、クリーチャーズによるガイドラインの発信はないのですが、運用については任天堂に実質的に一任されているとみるのが妥当でしょう。
ガイドラインを読むと、「YouTubeの「YouTubeパートナープログラム」」や、「ニコニコ動画/生放送の「クリエイター奨励プログラム」および「ニコニコチャンネル」」によって収益化することは当初から認められていたのですね。
「Mildomの「ライブ収益」(2023/3/1追加)」との記載もあり、ミルダムについては後から追加されたようですね。逆にこのページはブックマークしておいて一生ウォッチングする必要があるのかもしれません。
任天堂のガイドラインでは「ネタバレ」についての禁止の記載がありませんでした。もしかしたら各タイトルごとにガイドラインが異なる可能性もあるので、念のため確認したほうが安心でしょう。
カプコンについて
では、任天堂以外のメーカーについてはどうなのか、企業規模の大きいカプコンを見ていきたいと思います。企業規模の大きいところは訴訟もどんどんやれますからね。
カプコンのガイドラインは明確に「ネタバレ」について禁止していました。
この文面を読むと、ネタバレはやめてほしいけど、ネタバレになりそうなときはその旨表示してくれればそんなに怒らない、という印象も受けますね。
今回は、「ネタバレ」についてのみ追いかけていくので、それ以外は省略させて頂きます。よくご確認ください。以下でも「ネタバレ」を含む「収益化」についてのみ言及します。
バンダイナムコHD
ネタバレについては、以下のような記載がありました。
これも、カプコンと同様で「配慮をお願いします」ということのようですね。大手2社を見ることで、業界の相場感覚も掴めてきました。
スクウェア・エニックスHD
同様の記載があります。
上の2社と同じですね。そうすると、ここまでの大手3社は『「ネタバレ」をするときは「ネタバレ」であることを表記してね』というルールになっており、最初から「ネタバレ動画」として投稿されている場合には、ガイドラインの要件を満たし得るようにも思えます。
この内容は、今回のシュタゲの事件の結末とは大きく異なりますね。そこが、今回有罪判決が出たことのインパクトなのかもしれません。つまり、他の会社では十分許容されているものもあるのに、会社やゲームによっては、ガイドラインによっては、犯罪者になってしまう。
その差とは一体何なんだろうということです。シュタゲはノベルゲームなので影響は大きいということは言われていますが、それにしても差が大きいように感じます。
ここまで来ましたので、日本の大手に限りもう少し見ていきましょう。
コナミグループ
コナミさんは作品ごとに規定されているようです。
虎の子の「パワプロ」についてみてみましょう。
ネタバレになりそうな要素は「サクセス」以外あまりなさそうなので、記載されていませんね。
ときメモについてはどうでしょうか。論点が全く異なりますが、過去に訴訟にもなったことがあるので気になります。ネタバレの要素も大いにあります。
「告白シーンあり」の表記のお願いについては、新聞記事にもなっていましたね。
コナミさんは厳しそうかなという勝手な印象でしたが大手他社と同じような感じですね。ただし、作品ごとに違うので、やはり作品ごとに確認したほうがいいでしょう。
コーエーテクモHD
最後にコーエーテクモ。
こちらは、作品ごとに公開可能範囲などの規制が異なっていたり、(例えば「信長の野望・新生 with パワーアップキット」であれば、「オープニング映像、タイアップ曲およびエンディングを含む部分は使用不可」など。)、動画投稿によるYoutube等での公告による収益化は許すが、スパチャによる収益は原則認めていないなど、各行為についても細かく把握する必要があります。
その他は?
ここに上がっていないメーカーや、ゲーム配信文化以前のゲームについては、可能な限り調べてみて個人の判断で行ってくださいとしか言えません。
個人的にはレトロゲームなど、メーカーが倒産してしまっていたり、著作権者との連絡方法が不明なものがあるのは気になっています。おそらくレトロゲームについては有耶無耶なままに勝手に配信している配信者も多いことかと思います。
まとめ
ゲーム動画投稿、ゲーム実況配信等を行う場合には、収益化の有無にかかわらずに以下の項目について確認したほうがよいです。
・販売メーカー
・利用可能なタイトル
・利用可能な範囲(ネタバレを含む内容等)
・利用可能なプラットフォーム(Youtubeなど)
・利用可能な収益手段(動画投稿収益はよいが、スパチャは禁止など)
おまけ
その昔に、ゲームごとにガイドラインを確認できるというサイトがあったようですが、今は更新されていないようです。一応貼っておきます。
前川知的財産事務所
弁理士 砥綿洋佑