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【グルメ情報】わたしの好きなマルタバック(インドネシア版パンケーキ)屋

マルタバックというパンケーキのようなお菓子があります。
バンドンが名物という訳ではなく、インドネシア中どこにである屋台系のお菓子です。


マルタバックとはどんな料理なのか

マルタバッ(ク)と呼び、外国から入ってきた料理に分類される。最後のクはくぐもった発音で聞こえないから、マルタバッというのが正確な言い方になる。
ここではマルタバックで統一したい。

調べたところ、インドが発祥の料理で、アラビア語で折りたたむという意味の言葉から来たようだ。

確かに折りたたむ。

マルタバックはパンケーキのような甘いバージョンと、クレープで包み焼きするしょっぱいバージョンの2種類あり、いずれもマルタバックという。
そして、たたみ方は違えど、いずれも折りたたむ。

中東から東南アジアにかけて食べられている料理なので、インドネシア料理ともいえない。

今回ご紹介するお店は甘いバージョンの専門店になる。

マルタバックの作り方

年季の入った大き目のフライパンをよく熱したあと、油をひいて慣らす。

700円強と高いのに驚かれるかもしれない。それだけ大量ということ。

そこにバニラの香りがたっぷりするパンケーキの生地を流し込む。

スプーンをつかって生地が均一になるように注意深くならす

こげないように火は弱めにしている。

そのうち、表面にぷつぷつ穴がたくさんでき始め、同時に生地がふんわりと膨らみ始める。

中に火をしっかり通すため、フライパンに蓋をし、蒸し焼きにする。

白い粉をぱらぱらと振りかける。何かは聞かなかったが、塩あるいは砂糖と思われる。

フライパンから綺麗にマルタバックを剥がす。

表面にマーガリンを塗る。本当はバターの方がおいしいのだが、原価が高くなるのでバターは仕上げにのみ使う。
とても正直な店主なので、そういうことも教えてくれるのだ。

マルタバックはトッピングを行うものなので注文時に指定しておく。
チョコ、ピーナッツバター、ジャム、チーズ、あるいはそれらのミックスなど。
まずは白い面にマーガリンを塗ったところに、トッピングを塗る。

わたしは今回ピーナツバターにした。
店主はたまに注文を忘れ再確認してくるが、にこやかに対応して欲しい。

ピーナツバターを塗り終えると半分に折りたたむ。これがマルタバックの名前の由来(アラビア語で折りたたむの意味)。

折りたたむと、きつね色にこんがりパリパリに焼けた表面が現れる。

店主はここにバターをたっぷりと塗ってくれる。

塗り終わると、食べやすい大きさにナイフで切り目を入れてくれ、箱に入れて完成。

マルタバックの味

カステラというよりは、ホットケーキ、パンケーキに近い。
バターがしみこんだきつね色に焦げた表面と、ピーナッツバターが見事にマッチング。
とろけるような美味しさ。

これだけだと飲み込みにくいので、飲み物がとても大事になる。

わたしはこの店ではホットコーヒーを頼んでいる。
豆を指定できるので、大好きなロブスタ(コーヒー豆の品種)でお願いする。
この店のコーヒーはちゃんと淹れてくれるのに安い。
1万ルピア(100円)

店主もロブスタ好きという。
「やっぱりがつんと濃いめの方が、コーヒーを飲んでいる感じがするんですよね」と日本語、インドネシア語のちゃんぽんで会話する。

そう。この店主は日本語ができる。しかも違和感を感じさせないレベルのうまさ。
「あっ、お久しぶりです!」なんてバンドンで声をかけられたのは初めて。

静岡で日本語の学校に通い、そのあと駿河精機の工場で働いていた。
駿河精機はミスミ(部品のカタログ販売で上場している優良企業)に買収され子会社になっている。
この店主は当然駿河精機がミスミに買収されたことはよくわかっていて、ミスミのことも知っている。
知的な顔つきからして、ただのワーカーではない。

マルタバックの味に戻ると、とにかくおいしいとしか言いようがない。

がぶりと噛み、そこにどっしりとした風味のコーヒーを一口すする。
そうそうこれこれ、と1人で頷いてしまう。

マルタバックのことをおいしくないと言っている日本人を今まで見たことがない。
また不味いマルタバック屋に当たったこともない。

量が多すぎると文句をいう人はたまにいる。
確かに一人で食べるのは大変だ。

店について

まずは店名のLima 91について説明したい。
Limaとは5という意味。
バンドン第5高校の1991年卒業クラスということを指している。

この店主は1991年にバンドンの名門校?を卒業している。
わたしが高校を卒業したのは1990年の3月だから、店主とは歳がほぼ一緒という計算になる。

彼は日本で働いていたが、45歳のときにすっかり疲れ、金もたまったので引退しようとバンドンに戻ってきてマルタバック屋を開いた。

マルタバック屋「Lima91」はスラバヤとジャカルタにも店舗があり、ジャカルタ店は料理人がいなくなってしまい、今は閉めているという。

この店には店主の友達がよく来る。

そのうちの一人は画家だ。
星新一のSFショートショートの挿絵に使われていそうな絵で、わたしはカラフルな色使いも含め結構好きな絵だ。

彼女は、バンドン工科大学芸術学部の教授だった絵描きの父の元で育ったものの、将来絵で食べていこうとは思わず、法律の道に進む。
バンドンにあるキリスト教系の名門大学パラヒャンガン大学の法学部を卒業した。

その後弁護士になることもなく結婚し、結婚してから趣味で絵を描き始めたという変化にとんだ人生を歩んでいる。

女性に年齢を聞くのは失礼なので聞いていないが、店主とわたしとほぼ同年代と思われる。

わたしの20年来の知人の女性弁護士が、パラヒャンガン大学の法学部出身なので、かぶっていないか聞いてみたところ、直接知り合いではないが、女性弁護士の方が上だと言っていた。

夜は大抵閉まっているので、昼に訪問することをおススメする。

それと念のため、マルタバックの量はとても多いので、昼ごはん代わりにするか、おやつの時間に訪問し、二切れほどコーヒーとともに召し上がっていただいたあと、家に持って帰るのが良いだろう。

インドネシアに来て、もしマルタバック屋を見かけたら、屋台でも臆することなく是非チャレンジしてみてください。

気に入っていただけると思います。

チーズチョコ味

ご参考まで、しょっぱい方のマルタバックの写真を載せておきます。



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