世界遺産、莫高窟を巡る
チベット・インド旅行記
#16,敦煌
【敦煌(ドゥンファン)】中国、甘粛省北西部に位置する。かつてシルクロードの分岐点として栄えたオアシスの街。世界遺産、莫高窟(ばっこうくつ)が有名。
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西寧(シーニン)から敦煌(ドゥンファン)までの道中は、今までのおんぼろマイクロバスと違い、快適な大型観光バスでの移動となった。
車内には高齢の中国人旅行客がたくさん乗り込み、さながら慰安旅行という雰囲気。
バスが出発すると、フロントから液晶モニターがウィーンと降りて来て、エンドレスでジャッキー・チェン映画を流し始める。
旅の風情はまるで無いが、まぁ、たまにはこういうのも良いだろう。
バスに乗り走る事数時間。
青海省を抜け、甘粛省に入る頃には、今までの緑あふれる山々は消え、土気色をした荒野が姿を現した。
何も無い乾いた土地の真ん中を、真っ直ぐにハイウェイが伸びている。
ハイウェイを突っ走る事さらに数時間後、荒涼とした大地に突如街が現れた。
かつてシルクロードの交易で栄えた街、敦煌である。
バスを降り、さっそく宿を探す。
砂混じりの乾いた風が体を吹き付ける。
人工的なコンクリート造りの街。
宿泊した宿ではトラックドライバーの漢民族のおっちゃんと同室になった。
おっちゃん室内でスパスパ煙草を吸ったり、床に痰を吐いたり、シャワーで床を水浸しにしたり、文化様式の違いにかなり閉口したが。
食べていた西瓜を半分分けてくれたり、隣町の酒泉の公安ならビザを取りやすいとアドバイスくれたり、優しいところも見せてくれた。
翌日、おっちゃんのアドバイスに従って、酒泉の公安に行ったところ、あっさり1ヶ月分のビザを取得。
ありがとうおっちゃん。
翌日、おっちゃんは「敦煌に来たなら莫高窟には行っておけよ!」と言い残して仕事に戻っていった。
莫高窟。
敦煌市内からタクシーも出ている。
せっかくだからと見物に行く事にした。
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【莫高窟(ばっこうくつ)】
敦煌の街の南東に残る仏教遺跡。
砂漠にそびえる山の岩肌に、700を越える洞窟を掘り、2000を越える仏像を安置し、洞窟壁画を描いた。
工事は4世紀末からおよそ1000年に渡って続けられ、たくさんの僧侶たちがそこで修行を積んだ。
1987年にユネスコの世界遺産に登録。
敦煌の街の外れは、土壁造りの平屋が立ち並び、ポプラ並木とブドウ棚の緑が眩しい。
いかにもシルクロードのオアシスといった風情だ。
タクシーに乗り、さらに街の外界に出ると、まるで海原のように続く砂丘の真ん中に、ポツンと無人島のような岩山がそびえている。
岩山の壁には無数の横穴が開いていて、そこには1000年の時を越えた無数の仏像や壁画が安置されているのだ。
とはいえ、今では莫高窟は観光の名所。
整備も進んでいる。
入り口で入場チケットを買い、指定された順路に沿って洞窟を見て回った
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薄暗い洞窟に足を踏み入れると、砂漠の真ん中だというのにひんやりとした空気に包まれた。
暗闇に目を慣らす事数分。
だだっ広い洞窟内の壁という壁、天井に至るまで、極彩色の仏教画が描かれ、仏像が並べられている。
兎にも角にもそのボリュームに圧倒された。
壁画の内容は沢山の仏陀が描かれた曼陀羅のようなものや、天界を描いたもの、仏陀の生涯を描いたものなど様々だ。
どの仏も、日本で見るスリムな仏と違い、ふっくらと肉付きがよくて、クネクネしていてエキゾチックな雰囲気が漂っている。
数ある壁画の中でも特に、羽衣を着た天女が天界を飛び回る壁画が印象に残った。
壁画も仏像群も、長い年月を越えてそのほとんどは風化し、剥がれ、かすれてしまっているが、遥か昔の栄華を今も忍ばせているようで、何だか逆に不思議な気持ちになった。
壁画の天女も、洞窟の仏像も、時代の移り変わりの中でどんなドラマを見つめ、過ごしてきたのだろうか。
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莫高窟をはじめ、中国や日本、そしてチベットにも伝わる仏教は、北伝仏教と呼ばれ、遥か昔に広大なシルクロードを通って伝わったものがほとんどだ。
西遊記で有名な僧侶、三蔵法師も6世紀末、この敦煌の地から砂漠を渡り、天竺(インド)を目指したという。
莫高窟を出ると、今まさに、地平線まで続く砂丘に真っ赤な夕陽が沈もうとしている。
今も昔も、この大陸の上を人は行き交い、旅を続けて来た。
三蔵法師が旅した街も、シルクロードの交易で栄えた国も、今はそのほとんどは滅び、砂漠の底に眠る。
いつの日か私がこの世界を去った後も、
未来は変わらずに続いていくのだろうか。
いつか私の居ない世界の上を、未来の旅人は旅し、
古の時代に思いを馳せるのだろうか。
旅の途中でそんな事を思った。
⇨タクラマカン砂漠編へ続く
【チベット・インド旅行記】#14,西寧編はこちら!
【チベット・インド旅行記】#16,タクラマカン砂漠編はこちら!
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