西寧で清真料理を食べ尽くす
チベット・インド旅行記
#15,西寧
【西寧(シーニン)】中国内陸部、青海省の省都。西をチベット自治区、北をウイグル自治区に面し、回族、チベット族、モンゴル族などの少数民族も多く暮らす。異文化色の強い街である。
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西寧の街は広い。
街の中心部には雑居ビルが立ち並び、路地からは、生ゴミや下水の匂いがぷーんと漂う。
通りは人混みで溢れ、車のクラクションがひっきりなしに鳴り響く。
およそ2週間、人里離れた山奥を旅していた私には、目も眩むような光景である。
街の一角には回族(中国に住むムスリム系の少数民族)のバザールが立っていて、屋台からは美味しそうな匂いと煙が漂ってくる。
今までずっと粗食続きだった山奥旅。
待ってましたとばかりに、屋台飯を買い込んだ。
大きな鉄鍋で揚げたじゃがいもや、熱々の焼き餃子。
もちもちのお焼き。
乾麺を素揚げした駄菓子のようなスナック。
香ばしい匂いが食欲をそそるゴマ団子。
お口直しには、紙袋いっぱいの干しぶどうや、炒ったヒマワリの種。
コメダ珈琲で出てきそうな豆菓子の相思豆。
さらには両手いっぱいに桃や洋梨を買い込み、ホテルに戻ってからムシャムシャとかぶりつく。
10日以上、シャワーすら無い生活だったので、ゴシゴシと汗や垢を洗い流し。
寝袋も天日に干し、洗濯物も念入りに洗う。
そしてまた夜にはバザールに飯を食いに行く。
回族の人たちはイスラム教を信仰しているので豚肉は食べない。
代わりに、食堂では羊肉をふんだんに使った料理が出てくる。
さっぱりした塩味のスープにセロリと羊肉がたっぷり入っている、羊肉湯。
直火でこんがり焼いた羊肉の串焼きを熱々のナンで挟んだ、即席の羊肉サンドイッチ。
羊肉特有の、野趣あふれる臭みが病みつきになる。
極め付けは捌いたばかりの羊肉を、どーんと皿に盛って食べる、羊の刺身盛り。(約12元、180円)
羊肉にほんのり塩気が効いていて、タレも付けずにモシャモシャと食べる。
生肉はかなり歯応えがあるのでアゴが疲れるが、噛めば噛むほどに羊の臭みが口中に広がり、野生の生きたエネルギーが身体中に行き渡る。
西寧にいる間、調子に乗って毎日羊を食べていたら、身体中がすっかり羊臭くなってしまった。
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とはいえ、私もただ毎日のんびりしている訳ではない。
西寧でビザの申請を行うのだ。
中国に入ってからはや1ヶ月、韓国でルーシーに手続きしてもらったビザは、失効を迎えようとしている。
噂では中国では最大2回、計2ヶ月のビザ延長ができるとの事だったので、(2004年時点)西寧の公安を訪ね、延長の申請をする事にしたのだ。
町外れの公安事務局は、さながら日本の市役所的な雰囲気だ。
ビザの延長窓口だというのに、誰一人英語が喋れない。
頑張って筆談で交渉に臨んだ。
「我要签证(すみません、ビザを延長したいのですが)」
「你要去哪里(わかりました、次の目的地はどこですか?)」
「去西藏(チベット(西蔵)にいく予定です。)」
「不要去西藏(チベットは、一般の旅行客は入れません。なのでビザは下ろせません。)」
「…。」
取り付く島もないとはまさにこの事。
懸命な交渉も虚しく追い返されてしまった…。
2004年当時、中国共産党政府は、チベット自治区への漢民族入植と、民族同化政策を必死に行っていて、海外メディアや、外国人観光客は公にはチベットに入れなかった。
ちなみにチベットを舞台にした映画「7イヤーズインチベット」に出演した俳優、ブラット・ピットも、反中国的な映画に出演したという理由で、永久に入国禁止になっているとかいないとか…。
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何はともあれ、ビザが延長できなければ中国を旅する事が出来ない。
どうしようか考えた結果、
「公安に嘘の目的地を申請する作戦」に切り替える事にした。
つまりは、別の場所に行くと偽ってビザを延長してもらい、あとはこっそりチベットに入ってしまえばいいのだ。
我ながら、なんて頭の良い作戦なのだろうと自分が恐ろしくなってきた。
むしろ、最初からこれで行けばよかった。
再度、公安に入り直す。
「它是什么(…またあなたですか?一体、何の用ですか?)」
「我要签证(すみません、ビザの延長をお願いします)」
「你要去哪里(…目的地はどこですか?)」
「去新疆(えっと、チベット行きはやめました。気が変わって、北のウイグル自治区に行く事にしました。だから、ビザを延長して下さい)」
どや!これで文句ないやろ!と自信満々の私。
なるほど、そう来たかと事務局員。
無言のやり取りが、お互いの間で交わされた。
しばらくこちらの様子を伺う事務局員、おもむろにペンを手に取った。
「在新疆延长签证(それならば、ウイグル自治区の公安に行って、そこでビザの申請を行ってください。ここでは出来ません)」
「!?(…えっ!?、えっと…、あの…)」
「去新疆的大巴在那边(ウイグル行きのバスがターミナルから出ているので、そこからバスに乗ってください。以上です)」
「好的…(えっと…、その…。…はい、分かりました)」
けんもほろろとはまさにこの事。
再挑戦も虚しく再び追い返されてしまった。
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さて、困った。
北のウイグル自治区へは、西寧から何日もバスを乗り継いでいかなければならない。
せっかくここまで来たのに、目的のチベットは遠ざかってしまう…。
一体、どうしようか…。
…。
…でも、まぁ良いか。
旅なんて、本来そんなもの。
風の向くまま、気の向くままに進めば良いじゃないか。
そうと決まったら俄然やる気が湧いてきた。
ホテルに戻り、荷物を整え、バスターミナルへ向かう。
かくして、チベット自治区を目前に控えた私は、進路を北に変え、
シルクロード発祥の地、新疆ウイグル自治区へと向かう事にした。
⇨敦煌編へ続く
【チベット・インド旅行記】#13,ラルンガル・ゴンパ③編はこちら!
【チベット・インド旅行記】#15,敦煌編はこちら!
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