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ポケモンカード
日々はあっちゅーま
#25,ポケモンカード
僕が最初に「ポケモン」をやったのは小学校6年生ぐらいの頃で。
その頃、ポケモン赤と緑がゲームボーイで出たんだけど、僕はゲームボーイは持ってなかったから、友達の佐々木君にゲームボーイ本体とポケモン緑を貸してもらってクリアした。
冒険の最初に、連れて行くポケモンを3匹から選べるんだけど、僕はゼニガメというポケモンを選んで、ニックネームをゼニちゃんにした。
そしたら何だか愛着が湧いてきて、冒険の最後までゼニちゃんを連れて歩いてた。
ポケモンのゲームは佐々木君に返しちゃったからそれっきりだったけど、中学校に上がった時に、ジュン君という友達が出来て。
ジュン君も最初に選んだポケモンはゼニガメで、ゼニちゃんというあだ名を付けていた。って言うもんだから、たちまち意気投合して仲良くなった。
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僕が通っていた中学校は自由の森学園っていう私立の学校で、大宮の家から電車で1時間半ぐらいの所だったから、いつも暇つぶしに読書したり、音楽聴いたりしてたんだけど。
ジュン君と、もう一人の友達のふゆき君はゲームボーイをいつも持ち歩いていたから、帰り道の1時間半、ゲームボーイしながら帰っていて、そんな2人がいつも羨ましくてたまらなかった。
ゲームのポケモンも流行っていたけど、うちのクラス(Jー3組)では、ポケモンカードゲームも流行っていた。
色んなポケモンが描いてあるカードを、トランプみたいに切って、並べて、戦わせるんだけど、それがすごく面白くて夢中になった。
休み時間になると、机を向かい合わせに並べて、一対一で戦うんだけれども、何だか脳内で本当にポケモンバトルをしているような気持ちになって興奮した。
友達同士が対決しているのを観戦しているのもとっても楽しかった。
クラスの女子は、そんな様子を呆れた顔で見ていた気がするけれども、担任の仲本よし子先生によると、
中学生になると女子の方がませてくるから、男子の事が子供っぽく見えて呆れてしまうのだそうだ。
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なにはともあれ、その頃は寝ても覚めてもポケモンカードの事ばかり考えていた。
ポケモンカードは、おもちゃ屋さんとか、ゲームショップとか、色々な所で売っていたけど、僕と、ジュン君と、ふゆき君は、JR大宮駅東口を出た所の、「さくらや」っていう電気屋さんで買っていた。
ポケモンカードは1袋300円ぐらいで、10枚入りで、1枚は必ずキラカードが入っていた。
学校の帰り道3人でさくらやの6階のゲーム売り場まで登って、ポケカー(ポケモンカード)をひとり1袋ずつ買って、急いで開けて中身を確認するんだけれども、この瞬間が1日のうちで1番盛り上がる瞬間だった。
僕は小学校まではお小遣いをもらっていなかったんだけれども、中学生になって、電車通学するようになったから、お小遣いをもらうようになった。
まず、お昼ご飯を学食で食べるから昼ごはん代に1日500円。
あとは1週間のお小遣いで1000円。
だから6日間で4000円のお小遣いが僕の財産だった。
お母さんは、僕にお小遣いを渡す時に、
「頼むから食費をケチってカップ麺とか食べないように。ちゃんと学食食べなさいよ」
って言ってたけれども。
その頃は出来るだけポケカーを集めて強くなりたい。
という気持ちが強かったから、ちょくちょく食費をケチって、内緒でポケカーに費やしていた。
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そんな風にせっせと集めていたポケカーだったけど、上には上がいるもので、クラスメイトのたかし君なんかは、レアカードのリザードンを4枚もダブりで持っていて。
(僕は1枚も持っていなかった)
もちろんポケカーバトルも強かった。
その頃、僕はいつも夜眠る前に考え事をしていたんだけれども。
天井をじっと見つめながら。
はたしてこのままポケカーを集め続けても、いつか飽きたら虚しい気持ちになってしまうんじゃないか。
という冷静な気持ちと。
クラスでたかしくんを打ち負かしてチャンピョンになりたい。
という情熱の気持ちが、天使と悪魔のように戦っていて、いつも決着がつかなくて困っていた。
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そんなある日、一緒に暮らしていた僕のおばあちゃんが、こっそり僕を呼び出してお金をくれた。
僕が中学に入学した入学祝いを、ずっと渡したかったから内緒だよ。っていって封筒をくれたのだ。
開けてびっくり、封筒には3万円が入っていた。
さすがに中学生に3万円の大金はびっくりしてしまって、お母さんに報告しようかどうしようか迷ったけど。
さっそく、この大金でポケカーを買ってしまいたい。という欲望がむくむくと膨れ上がってきた。
この時の天使と悪魔の戦いは凄かった。
でも、最後の最後で、僕は天使の声には耳を塞いで何も考えないようにして、大宮駅のさくらやの6階に上がって、ありったけのお金でポケカーを買った。
いつも1回1袋しか買わなかった僕がポケカーを山のように買う姿を見て、店員さんもさすがに心配そうな顔をしたけれども、何も言わずに袋に詰めてくれた。
お会計をしたら、さくらやのポイントカードも、うなるようにポイントが貯まって、ポイントだけでポケカーがまた買えるぐらいになった。
リザードンのカードも1枚入っていた。
帰り道、レアカードを手に入れた喜びと、散財をしてしまった高揚感と、悪い事をしたという背徳感が混ざり合って、その頃はアドレナリンという言葉は知らなかったけれども。
そう言った脳内麻薬がドバドバ出ていたのを、はっきりと感じ取れた。
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そんな風に、ハイテンションで迎えた1週間のはじめだったけれども、さっそく事件が起きた。
おばあちゃんがお母さんに問い詰められて、僕に大金を渡した事を白状してしまったのだ。
夕食の後、お茶の間に正座させられて尋問が始まった。
一体、3万円もの大金を何に使ったのか。
いくらなんでも全てポケカーに費やしたとは言えないので、この時の言い訳にはずいぶん苦労したのを覚えている。
とにかく、お父さんお母さんにはこってり叱られて、しばらくは懲りてしまった。
それに、その頃からだんだんポケカーにも興味がなくなってきて、一体何で僕はこんなにポケカーを集めてしまったのだろう。
と激しい後悔の念にも襲われるようになった。
まぁ、大人になった今となっては、そんなお金の使い方は流石にしないけれども。
今でもこの時の事を思い出すと、恥ずかしくて穴に入りたくなる気持ちになる。
あと、このエッセイを書くにあたって、ポケカーについてネットで調べていたら、その頃集めていたカードは、どれもオークションで、もの凄い高値で転売されているというのを見つけて。
しまった、そんな事なら全部捨てずに取っておけばよかったなぁ。と、
ここでも激しい後悔の念を覚えてしまった。
おしまい
まえだゆうきが「立派なポケモン廃人」になったエピソードはこちら⇨
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