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キープ オン ダンシング:レヴォリューションNo.3

手元にあるこの小さな文庫本とは、出会ってからかれこれ10年ほどになる。

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#人生を変えた一冊  というお題に対してこの本を選んだのは、
この物語が深く心の奥に根を張り、ギリギリだった命をつなぎとめてくれたからだ。

少しだけ自分の過去のことを交えて、この本の素晴らしさについてお伝えできればと思う。

1 出会いはなんとなく

10年前、高校生だった僕は間違いなく鬱状態だった。

通学の電車内で急に閉塞感に襲われたり、昼食時間の弁当が飲み込めなくなったり。

大好きなアーティストのハイテンポな音楽も聴けなくなり、呼吸を止めても全く苦しくない。

家に帰ればベッドから動けなくなり、体重は週に3〜4kgの増減を繰り返していた。

そんな時に、なんとな〜くこの本を図書室か本屋で見つけて、
なんとな〜く手に取って、読んで、心に火がついて、
それからず〜っとどこにも売らずに今まで持っている。

出会いは劇的ではなかった。
これは、僕が経験したことの中でトップ10に入る幸運だった。

2 駆け抜ける姿勢にバカも天才もない

ページをめくると、共通してんだかしてないんだかよくわからない、
不思議な台詞の引用が2つ並んでいる。

”毛沢東の肖像を掲げたって世界は変えられないよ”

1つはザ・ビートルズからの引用だ。
世界を変えた4人だからこそ言える、
とても強いメッセージを持った一言だ。

その下に並んだ、別グループの台詞はこうだ。

”ギョウザ大好き!”

度肝を抜かれた。引用元は、”ザ・ゾンビーズ”とある。
”ザ・ゾンビーズ”とは作中に登場する落ちこぼれ男子高校生の集まりのことだ。

毛沢東がどうとか、世界を変えるとか、彼らにとってはどうだっていいのだ。

ただ、「ギョウザ大好き!」と叫んだ。
超シンプルで、超ロックだ。

このページを読む度に、この本がどんどん好きになっている。

収録されている3つの物語は、”ザ・ゾンビーズ”が瞬間を懸命に生きる様を伝えてくれる。

それが鉄壁の警備態勢を掻い潜って女子校の文化祭に潜入することであっても(レヴォリューションNo.3)、
奪われてしまった、ある目的のためにメンバーでコツコツ貯めていたお金を取り戻すことであっても(ラン、ボーイズ、ラン)、
美人のお姉さんをド変態から命がけで守ることであっても(異教徒たちの踊り)、

彼らは笑いながら、全力で突っ込んでいく。
どんな過去を背負っていようが関係ない。

瞬間を生きるカッコよさが、この本には詰まっているのだ。

僕は彼らに憧れた。瞬間を生きようと思った。
そうして、なんとか今に至っている。

人生の変わり目はいくつかあるが、この本に出会ったことが一番最初の変わり目だったと思う。

2つ目は映画のトランスフォーマーを観ちゃったことだ。

3 言葉

自分の人生を変えるほど大好きなものを伝えるのは難しい。

だって、どんな要素も好きだし、
魅力は僕が背伸びして書いてもそれっぽいものにしかならないからだ。

だから手にとって読んでみてほしい。
そして、一緒に「生きてる!最高!!」って叫びたい。

ちなみに、彼らの活躍はあと3作に渡って綴られており、
「フライ・ダディ・フライ」は映画化されている。

ザ・ゾンビーズ シリーズ

・ レヴォリューションNo.3
・ フライ・ダディ・フライ
・ SPEED
・ レヴォリューションNo.0

この記事を書く時に、「レヴォリューションNo.0」という作品が発表されていることを知った。本当に運がいい。
今度読んでみようと思う。

最後に、この本で心に残っている台詞を紹介して、
記事の締め括りにしたいと思う。

「遠くに行っちゃった人間はズルいね。
残ったほうの人間に自分が悪いみたいに思わせる。
でもね、踏みとどまってファイトする人間が本当のヒーローになれるのよ。
人間、生きててナンボよ」


「おまえはタフな人生を送るかもしれない。
傷ついてダウンすることもあるだろう。でも—」

「なにがあっても、踊り続けるんだ」


金城一紀 著 「レヴォリューションNo.3」より

#人生を変えた一冊

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