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誰も自分語りをしなくなったせいでひどく無味乾燥だ

2019年のころだった。

髪型のせいで職質ばかりされる、生きるのが下手くそな真っ直ぐすぎる、典型的貧乏芸術家の愛すべき男友達は、仕事終わりに二人で入った五反田のベローチェで、力強い主張のこもった声でわたしに訴えた。

「何でみんな他人の話ばっかりするんだろうね?おれはさぁ、その人の話をききたいんだよ!」

あぁ、本当にわたし、最高の友達と惹き合う才能があるなと思った。心の中でわたしは彼の思想にハグをし、全力で賛辞を送った。

心理学的な"人間のたぶらかし方"が、無料で読めるWeb上の記事で取りあげられることが多くなって久しい。そんなノウハウ、無駄に広めるべきじゃなかった。せめて課金制にしてほしかった。
ネット上の内容の薄いそれら記事やメディアのおかげで、ビジネス以外の場所でもみんなそのテクニクックを駆使するようになった。

代表的なのはこれだ。"人に話を振って語らせて気持ちよくする、自分は極力話さない"

それが"オトナの振る舞い" "わたしはオトナです"との証左になると勘違いまでしている始末だから、やりきれない。勿論それは個人のせいではなく、何にでもめくじらを立てて罵ることでしか安心できない心の貧しい可哀想な大人たちに翻弄されるトラップがあまりにも多すぎる世の中が原因だろう。

勿論、人への敬意として、礼儀として、お互い楽しい会話をするために必要なことではある。…あるのだが、

みんな、やりすぎである。

あなたのことを語ってくれないと、何にも発展しない。

友人の話、好きな映画やコンテンツの話を語るとか、そういうのばっかり。あとは有益な話(特にTwitter)それしか許されない風潮なのか、バズりたいのかなんだか知らないけど。

もっと幼少期の失敗の話とか、何気ない自分語り。独特かもしれない感性とかさ、話してよ。

オトナぶるの、もうかっこ悪くない?わたしはそう思う。

…対人テクニックの話に戻る。

最悪なのは、そのテクニックやノウハウとやらを駆使しているのがこちらにはバレバレなので不気味であるし、全然いい気分にならないので、やるならもっと上手くやりなさいよと、わたしは偉そうに、上から目線で呆れ顔で、心の中でそういった人々に唾を吐いてきた。

巷の心理学的人たらしテクニックとやらは、人の立場になって考えれば誰にでもわかる話であるはず(と、わたしは思っている)のものばかり出回っている。こちらとしてはアウェイな環境やビジネス上ではずる賢く立ち回るのが得意だったこともあり、勿論すでに経験的に知っていることばかりで耳タコならぬ目タコだが、ライターだって10番煎じくらいってわかってるはずと思うのだけどなぁ。

あ、もっと秘蔵の誰も知らないノウハウに気がついたら、それは課金制の記事にでもして稼いだほうがいいって、賢いからわかってるのかもしれないな、心理学系ライフハック記事のライターさんも。

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浜辺まりあ
サポートありがとうございます。お金は愛でもあると思いますので、もし投げるときは楽しく投げていただけると幸いです。何に使ったかは多分記事にします。