三浦綾子『石の森』読書感想文
祖父の形見本。
どことなくベールに包まれた感を演出するのが上手い文章だと思った。
事実を探り知る事が正義とは限らない事、分からない事の良さみたいなのを感じた。
信じる事と孤独は対極のところにあって、信じられないから孤独を感じるのかなって何となく気が付いた気がする。
傷付け合う未来があるならもう嫌だと思っていても、人と関わると1ミリも傷付けないなんて無理な気もする。
人を傷付けようとなんか更々思った事はないけれど、私がふと発した言葉で、他意はなく傷付けてるかもしれないと思うと、本当に申し訳ない気持ちが溢れる。
これは逆も然りで、案外相手も深く考えずに発言してる場合もあるのかもなーって思う。
恋や恋愛やらによって無駄に邪推して、足元がぐらつく、バランスを崩しかけて不安定になって危うくなる気持ち、すごく主人公に共感して苦しくなった。(しかも結局、その主人公の推測は間違いでした。)
物語を読み進めると、事実が事実として私の手の平に舞い落ちる度に、絶望感と虚無感に襲われて、どの登場人物に自分を置き換えてみてもどうしようもない、努力で変えられない事実と現実に哀しさを覚えた。
ただ、最後に性別や役割や責任を越えて、人同士の深い結び付きで繋がっていられたなら...という祈りや願望に似たひと筋の僅かな光を望む感覚が腑に落ちた。
読んで下さった方、ありがとうございます。
またね!