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Caran d'Ache Ecridor Grain d'Orge
窓と申します。
病院とか図書館の空気が好きです。
建物の中の空気がまるっと外とは別のものと入れ替えられてるような、あの違和感が好きです。
皆さん明けましておめでとうございます。
年もあけまして、学生の僕はお年玉に浮足立つ時期です。
高校生になり、バイトなんかを経験してみると何もしていなくても色んな人がお金をくれるという事象のありがたみが分かるようになりました。
皆さんはお年玉をどう使うのでしょうね。
さて、久々の単体記事というわけです。
タイトル通り今回はスイスの筆記具メーカー、カランダッシュよりエクリドールのグレンドージュを紹介いたします。
念願中の念願。そんな日本語はありませんが、今の僕の感情を表現するには最適かと思われます。
それほどまでに焦がれた物ですから、気合を入れて書きました。
最後まで読んでいただけると幸いです。
それではどうぞ。
1.購入した理由
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グレンドージュはずっと憧れのペンでした。
2年ほど前に存在を知り、そのデザインに一目惚れしてからコツコツお金を貯めて、先日新年筆として迎えることができました。
下の記事でも語りましたが、僕は自分の趣味に理想像や完成系を設定するのが好きです。設定したゴールに向けて、ゲームの中間地点を踏み越えるように、一つ一つ物を集めたり目標を達成していくのがぼくの趣味の楽しみ方です。
グレンドージュはそのラスボスです。値段も高いし流通も少ないしで、非常に厄介なボスでしたが、ついに攻略することができました。
満足感に満ち満ちた、晴れわたるような気分です。
グレンドージュの柄への思い入れについては後に語るので、このまま見出し5の「精微で美しいデザイン」まで読み進めてください。
2.エクリドールとは
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1934年にカランダッシュで誕生した「エクリドール」はブランドのシンボルである六角形を随所に取り入れた、メーカーを代表するロングセラー。
表面には緻密な金属彫刻が施され、美しいパターンを視覚的にも触覚的にも楽しめる高級筆記具です。
エクリドールとは、フランス語で「書く」という意味の「ecrire」と「金」という意味の「or」を組み合わせた造語です。
デザインにはさまざまなバリエーションがあり、用途や好みに応じた選択肢が豊富であることも魅力のひとつに挙げられます。
3.グレンドージュとは
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・パターンについて
グレンドージュ(Grains d'Orge)はフランス語で「大麦の粒」を意味し、この柄も大麦の粒をイメージして作られています。
表記違いでグランドルジュ、あるいは同義のフランス語であるバーリーコーン(Barleycorn)とも呼ばれます。
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グレンドージュのパターンは小さなダイヤモンド形状または楕円形の連続模様で構成されています。大麦の粒を模した模様の形状は、その立体的なデザインが特徴で見る角度によって光を反射し、美しい陰影が生まれるのが特徴です。
・起源
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グレンドージュのモチーフである大麦は古代からヨーロッパ各地で栽培され、食料、飲料(ビールやエールの原料)、そして家畜の飼料として人々の生活を支えてきました。このため、大麦の粒は、豊穣や生命力の象徴として広く認識されていました。
・高級筆記具への採用
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20世紀初頭にはパーカーやモンブラン、カランダッシュなどの高級筆記具ブランドが登場しました。当時高級筆記具は単なる道具以上のものとされ、所有者の品位や個性を表現するアイテムと考えられるようになりました。
グレンドージュのパターンは、クラシカルで洗練されたデザインとしてそのニーズに応える形で採用されたようです。
4.外観
ここからはパーツごとのディテールや今回紹介するモデルの情報にフォーカスしていきながら、ペンの外観を紹介していきます。
・全体
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今回紹介するものは前期型(旧型)。
現行のものとは異なりクリップが真っ直ぐなのが特徴。1970〜1990年代のものと思われます。
半世紀が経っても使用できるエクリドールの耐久性に驚かされますね。
・クリップ
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シャープなロングクリップ。
現行のエクリドールより849シリーズに近い形状をしています。
前期型の中にも前前期と前後期が存在し、こちらは前後期に生産されたものとなります。
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前後期は前前期より3mmほどクリップが長くなっており、他にもクリップの付け根の位置や先端部分の形状などに違いが見られます。
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クリップの上には銀の純度を示す「925」の文字と「CdA」のロゴが彫られています。
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クリップと本体をつなぐクリップベースには「CLIP METAL」(金属)の刻印があります。ちなみに、前前期には「CLIP ACIER」(鋼)の文字が彫られています。
・ノック部
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「CARAN D’ACHE + SWISS MADE +」
「CdA」「925」
と刻印されています。
前期型は現行のものより刻印がシンプル。
この写真には写っていませんが、現行モデルにある天冠部のペンシルマークもこの時代にはありませんでした。
・ペン先
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比較資料を持ち合わせていなかったので分かりにくいですが、前期型は後期型に比べてペン先の金属の厚みが薄くなっています。
・柄
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近づいてみると確かに麦の粒が連なっているように見えますね。
全面に彫られているのではなく、角は無地で面の中心にパターンが刻印されたデザインになっています。ベネシアンのように全面にみっちり刻印がされているデザインも素敵ですが、こちらはこちらでメリハリがあります。
5.Goodポイント
では、ここからは僕が購入した前期型グレンドージュにおける僕が個人的に思った良い点を紹介していきます。
エクリドールとしての使い心地は、すでに紹介している方がたくさんいらっしゃるので今回は省略しようと思います。
・精微で美しいデザイン
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僕がこのペンを購入した一番の理由。
グレンドージュの柄の美しさは、その繊細さと立体感にあります。小さなダイヤモンド形状や楕円形の連続模様が規則的に並び、光の当たり方によって異なる陰影が浮かび上がるそのデザインは、視覚的にも非常に魅力的です。見る角度や光の加減で異なる表情を見せ、常に新たな美しさを感じさせてくれます。
この模様は、単なる装飾ではなく、手に持つことでその立体的な感触も楽しめるのが特徴です。精緻に彫刻されたパターンが指先に心地よく伝わり、視覚と触覚両方で美しさを堪能することができます。細部まで丁寧に施された彫刻は、職人が時間をかけてひとつひとつ手作業で仕上げた繊細さを感じさせ、持つたびにその精緻さにうっとりしてしまいます。
全体的に洗練されたデザインでありながら、シンプルさと華やかさが絶妙に融合しているため、どんな場面でも手に取るたびに上品さと高級感を感じさせてくれます。その美しさは言葉で表すのが難しいほどです。
また、個人的な話をすると、グレンドージュは僕の好みにあらゆる点でぶっ刺さっています。
様々な記事で語ってきましたが、僕は「多角形」と「ストライプ模様」が大好きで、この要素を持つ筆記具を集め、愛用しています。
この点においてグレンドージュはどうでしょう。
カランダッシュらしい鉛筆を模した六角形軸。
ライン状に施されたメリハリの付いた刻印。
最高じゃないですか。優勝じゃないですか。
グレンドージュのパターンは遠くから見ればシンプルな直線に、近くから見れば緻密に刻印された麦の穂に見えるデザインになっています。
このデザインは僕にとって革新的でした。
初めて見た時、「こんなデザインもあるんだ!」と強い衝撃を受けたのを覚えています。
グレンドージュは僕に新たな風を吹かせてくれた非常に思い入れのある一本でもあります。
・滑りにくく、指紋が目立ちにくい凹凸模様
エクリドールは重量があることや表面が貴金属で構成されていることから一般のボールペンより滑りやすいのが特徴です。
しかし全てのモデルがそうというわけではなく、彫刻の模様や表面の素材によって滑りやすさに差があります。
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上の写真は後期型のリーニェです。
シルバープレートにパラジウムコーティングが施されており、9本の縦線が彫られているモデルで、シンプルながら高級感のある刻印が魅力なモデルではありますが、使っていてかなり滑りやすく感じました。
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グレンドージュのパターンは、彫刻の深さが均一かつ精密であることが特徴です。この規則的な凹凸模様は格子柄やローレットに近い形状です。
この特性により、指がしっかりと噛む感覚が生まれます。
そのため、グレンドージュはエクリドールの中でも比較的滑りにくいモデルとなっています。
また、グレンドージュは彫りが緻密に施されているため指紋が目立ちにくくなっています。
彫刻が少なかったり、彫りが浅かったりするモデルでは指紋や汚れがすぐに目立つため、気になる方は使用した後に布などで拭き取る作業が必要ですが、グレンドージュの彫刻はその煩わしさを軽減してくれます。
・安価帯ボールペンのバネとの互換性
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恐らく前期型に限る特徴ですが、純正のバネとサラサクリップのバネに互換性があります。
どちらが良いかは好みによりますが、僕の場合はバネが劣化していたので、交換したことでかなり使用感が良くなりました。前期型のエクリドールを持っている方は試してみてはいかがでしょうか。
バネが無くなってしまったときにも安価で代用品が手に入るのは地味ですが優秀な点です。とりわけ前期型は年代や保存状態によっては劣化や損傷が激しい場合があるので、特別な技術や道具を使わず修理することができるのは大きなメリットかと思われます。
1月13日追記
他にも色々試してみたところ、エナージェル、シグノRT1のバネでも使用することができました。
サラサは柔らかめ、エナージェルは固め、シグノはその間くらいのバネの強さでした。
6.Weakポイント
次に、グレンドージュについて個人的に気になる点や使用時の留意点を紹介します。
・銀軸の黒ずみ
グレンドージュは軸全体がシルバー925(スターリングシルバー)で作られているため、硫化により次第に黒ずんでいきます。
金属を侵食して劣化させてしまう錆とは違い、硫化は金属表面に「硫化膜」ができるだけで金属内部を侵食することはありません。
ですから、表面を磨くだけで元の輝きが戻ります。
また「黒ずみ」といっても銀の硫化反応は割り金(シルバー925に含まれる銀以外の金属)の種類や硫化の程度によって色味が違い、赤く見えたり、茶色に見えたりします。
銀の黒ずみは味として楽しむこともできます。
いわゆる「いぶし銀」ですね。
どう捉えるかは個人次第ですが、現行モデルのパラジウムコーティングのエクリドールのピカピカを想像していた方は気をつける必要がありそうです。
・経年劣化
僕が購入したエクリドールはクリップがかなり緩く、少し持ち上げるとクリップベースが剥がれそうになります。半世紀ほど前の製品ですから、劣化により接着が緩くなってしまったのでしょう。盲点でした。
僕は今回フリマサイトを使って購入しましたが、クリップの状態に関する記述は無かったため届いてからこのことに気づきました。
廃盤製品やヴィンテージ製品は中古商品として入手することが多いかと思います。このような場合もあることに気をつけて、なるべく購入前に出品者へ質問するのがおすすめです。
・高い入手難易度
グレンドージュは何年も前に生産が終了しており、流通量が少ないことと素材の希少性から一般的に相場が高く設定されています。
入手法もフリマサイトやオークションを利用するか、古道具屋やフリーマーケットでワンチャンを狙うくらいに限られています。
もともと高級筆記具として販売されていたので、当時入荷していた店舗も少ないでしょう。
これらの理由から入手難易度が高いのがネックです。
7.リフィルアダプターについて
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カランダッシュ製品は専用リフィルのゴリアット芯にしか対応していないため、一部例外はありますが他社のリフィルを使えないことが弱点です。
ですが、リフィルアダプターを使えばジェットストリームやアクロインキなどの国内産のd1リフィルを使用することができます。
・使用方法
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使用方法自体は至極シンプルで、d1リフィルにゴム製リングをはめてアダプターのボディに通すだけで使えるようになります。
しかし、このままだとd1リフィルが純正リフィルよりペン先が若干細いため筆記時にかなりガタつきます。
対処法として、リフィルの先にセロハンテープを巻きつけて太さを補強する方法があります。
前述したように、前期型はペン先の金属の厚みが後期型と異なるので、巻きつけるテープの長さにも若干差があります。
・前期型は2.5cm
・後期型(現行モデル)は2cm
d1リフィルに上記の長さのセロハンテープを巻き、太さ調整を行えばリフィルアダプターでも快適に筆記できるようになります。
・メリットとデメリット
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リフィルアダプターで使用できるd1リフィルと純正芯ではどちらも異なるメリットデメリットがあります。
ざっくりと両者の特徴を挙げると、
◯d1リフィルは
・単価は低いが、ランニングコストが高い
・替芯の入手が容易
・色の変更が安価で可能
・日本人向きの細めの芯径にも対応
◯純正ゴリアット芯は
・単価は高いが、ランニングコストが低い
・購入した時から入っている
・色の種類が豊富
・調整が不要
とまとめることができます。
あとは書き心地ですね。これは好みによるものが大きいかと思います。
使用用途に応じて使い分けるのが良いでしょう。
8.参考文献
今回の記事を作るにあたって、たにけんさんの記事を参考にさせていただきました。
たにけんさんは自身のブログ「ホシイモノガ=アリス・ギル」で国内外の文房具やガジェットについて紹介する記事を執筆されています。
下記の記事の他にも様々な万年筆やボールペンを比較する記事を投稿されているので、是非のぞいてみてください。
9.まとめ
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以上、カランダッシュよりエクリドールのグレンドージュの紹介でした。
入手難易度などのネックはありますが、節々から美しいデザインや歴史を感じることができる素晴らしいペンです。
もし興味を持っていただけた方がいれば、ぜひ実際に手に取って、その使い心地や見た目の魅力を感じてみてください。
10.あとがき
最後までお読みいただきありがとうございました。
念願の一本を隅々まで紹介できて大変満足です。
脅威の約6000字。今まで書いてきた中でも一、二を争う文章量です。
愛が溢れてしまった。
たくさんのことを調べる必要があったり、ふざけを挟みにくかったりするので単体紹介はあまりしてきませんでしたが、久しぶりにやるととても面白かったです。
グレンドージュについて詳しく紹介している記事が国内外でもほとんどなかったので、調べるのは中々大変でしたが、全く苦ではありませんでした。むしろ大好きなペンについて色んなことが知れて楽しかった。
今回は紹介できませんでしたが、グレンドージュのなかにもシルバーの含有率が異なるモデルや復刻版のクリップの形状が異なるモデルが存在します。もし入手できる機会があればそちらについての記事も作りたいですね。
この記事を通してグレンドージュの魅力が少しでも伝わってくれたのなら、嬉しく思います。
ではまた。
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