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つくり手であること 09*麹

少し前のことですが、生まれて初めて滋賀県の近江八幡に行きました。やや弾丸での取材依頼があったのです。ちょっと駆け足な取材ではあったものの、西日本への訪問経験が多くないので機会があれば喜んで行きます。

とはいえ時はコロナ禍。取材先も落ち着いた人生の先輩世代でしたし、あまり好き勝手に動きまわらない方が良さそうな世間の空気も察していました。ご依頼元に示された訪問スケジュールがタイトなのも、基本的にはコロナ禍のために日帰り指示だったからです。

でもなぁ、急ぐと疲れるのよねぇ、わたし...焦ると忘れ物したり、転ぶこともあるし...。早朝〜夜間の枠になんとか収めることを「1日で終えられた」と納得させるような時間配分は、散々やった結果、自分に向いてないことがよくわかっています。自費でいいから一泊して、地元のご飯でもいただいてから帰ることにしました。

とはいえ直前で決めても車もないし、取材先以外のリサーチもしていません。
近江八幡が観光地であることは知ってるけど、ささっと表面を見て回る旅の気分でもないし、Google検索に地名を入れて、知らない誰かのリコメンドをなぞるのは極力避けたい。
はて、どうするか。

こういうときに私が開くものはいくつかあるのですが、まずはTwitterです。
地方を巡って地域の食を発信してるような方のアカウントへいって地名検索をすると、穴場のお店や、知られざる名物を発見できたりします。

もうひとつはInstagram。旅に限らずちょっと出掛けた先でふと時間ができた時も使えるのですが、まだ取材も受ける前の新スポットが出てきたりします。
ただ今回はどちらもあんまりピンとくるものがありませんでした。

もう一つ、旅の行き先でヒントを探る時に開くのは、発酵食を愛する大切な仲間がピンし続けてる全国の蔵を集めたGoogleマップ。でも今回は、距離や予定の都合上、移動ルートと微妙に合わずこちらも断念。

で、この時別の角度からハッと思い出すお方がタイムラインに上がってきました。彦根で麹屋「ハッピー太郎醸造所」を運営されている池島幸太郎さんさん a.k.a. ハッピーさんです。

下記の記事で詳しくご紹介されているのですが、ハッピーさんは酒蔵にお勤めの後に独立して、ご自身の醸造所が先日3周年を迎えた職人さんです。以前、別の取材でお邪魔した愛知県の発酵イベントでお目にかかったことがありました。

彦根なら近江八幡と近いな〜と思ってご連絡したところ、周年イベント直前の多忙な時にも関わらずお時間を作ってくれました。しかも、同じく近江八幡で在来種のテンペをつくる安藤あゆみさんも紹介くださり、3人でランチへ。

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あゆみさんのテンペを使ったカフェ「食堂ヤポネシア」さんでいただいたおいしいご飯を撮っておきながら3人で写真撮らなかったことを悔やんでいますが、これもきっと、ハッピーさんが事前に「貴方たちはぜったい響きあうから!」と言ってくれた通り、あゆみさんとは共通点も多く、そして、じっくり話すのは初めてのハッピーさんの話を聞くのも楽しくて、ややエキサイトした証拠かと思います。旅先での出会いって本当にいいですよね。

あゆみさんはnoteも素敵なのでよかったら是非。

3人でのランチ後は、ハッピーさんが近江八幡の素敵なところを回ってくださり、さらに彦根にある室とお店にも初訪問。
リノベされたご自宅横に、地元産の木材にご自身で柿渋を塗ったという素晴らしい室で、麹をつくり、お味噌、鮒鮓(ふなずし)、甘酒などを製造されている場所です。

室の中は、高めの天井だからか、はたまた整理整頓された空間だからか、もしくはハッピーさんの誠実な性格が影響してるのか、原因はわかりませんが、とにかく澄んだ空気が快適で、あぁここで温かくされたお米は気持ちがいいだろうなぁなどと米の気持ちになってしばし見学。

これまでも取材などを通していろんな醸造所にお邪魔していますが、ハッピーさんの蔵は、繊細でコンパクトながら大胆にさまざまな食を醸す場でした。

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こうした発酵食は、室に隣接した店舗で販売されているのですが、ご自身の製品と同じくらいの情熱をかけて他の生産者さんによる地元のおいしいものをたくさん紹介して販売されていて、なんともハッピーさんのお人柄を感じる一面です。おいしいお茶、お醤油、油など、それぞれに心温かくなるストーリーがあり、丁寧に教えてくれました。そしてどれもこれもおいしい!!滋賀の食に改めて開眼という感じです。

彦根までお出かけになる方はもちろんですが、ハッピー太郎醸造所は通信販売もあるので、気になる方は是非チェックされてください。我が家では、麹と甘酒、あとお味噌もおいしくいただいております。

冬が近づき、寒仕込みの季節に向かっています。
先が見えないことについ怯えてしまいそうになりますが、誰にもわからない将来を案じるよりも、数ヶ月先の自分に向けたメッセージとして、お味噌を仕込む方のも楽しいと思いますよ。


個人的には、麹も発酵食品も、自分でつくるチャレンジは続けているのですが、でも作れば作るほどに感じるのがプロの凄さです。職人の手で作り出された見事な麹は、本当に、本当ぉーーにおいしいですから。自分でもつくるけど、プロのも買う。家が味噌だらけになるけど買うのです笑。

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