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夏が来れば思い出す 野外オペラのアイーダ

夏になると欧州駐在中に行ったイタリアのベローナの野外オペラを思い出します。それまでは、野外だと音響もよくないし、蚊に刺されるし、雑音が混じって鑑賞に堪えられないのでは、と思っていましたが、そんなことはなく室内とは違う良さを経験しました。

ベローナには2015年夏に行き、4日連続で野外オペラを堪能しましたが、その演目のなかでもヴェルディのアイーダがお目当てでした。他の3日間は、トスカ、セビリアの理髪師、ロミオとジュリエット、です。

欧州滞在中にアイーダを3回観ましたが、まず2015年の3月に週末を使ってミラノのスカラ座に観に行きました。フライトチケットは往復150ユーロ程度。冬の単身赴任生活はすることが限られるので、遠出をするしか楽しみがありません。空港で知り合いの日本人家族とばったり会ってしまいました。別に変なことをしている訳ではありませんが、スカラ座で観るのでスーツを着ていましたので、
「出張ですか?」
「ええっ、ちょっとプライベートで。スカラ座に、、、、、」
「おお、スカラ座ですか!」
これは狭い日本人社会で噂になるなと覚悟しました。


アルプス

アルプスを越えて1時間ほどのフライトです。

ミラノ大聖堂
スカラ座


フェラーリが似合います
アルデンテのパスタは美味でした


さて、そのスカラ座でのアイーダですが、指揮はメータ、AidaはKristin Lewis、RadamesはFabio Satori。AmnerisはAnita Rachvelishvili。
ホテルからスカラ座には歩いて行きました。開場まで外で待っていましたがスカラ座の中は日本人観光客らしき人達も多かったです。
アイーダは好きなオペラで、youtubeで何度も見ているので聴き慣れた前奏が始まると一音一音に身体が揺さぶられます。
演出は質素ですが、それがまた想像を駆り立てます。
シーンが変わる度にセット変更のため5分位待ちます。
凱旋のシーンは圧巻でした。転調の箇所に感激しました。アリアも素晴らしくAmnerisも素晴らしい歌い上げです。メータの指揮のテンポもよく、まさに総合芸術でした。ミラノまで来て、しかもスカラ座でアイーダを観ることができて感無量でした。
ただ、スカラ座はトイレが少ないのが難点でかなり混み合っていました。入り口からホールの間も豪華とは言えないですが、さすがに音響は良かったです。

字幕が表示されます
カーテンコール
パンフレット
指揮のメータ

次のベローナには2015年の夏に行きました。
アイーダは滞在4日目、最終の夜でした。
上空を飛ぶ飛行機の音やセミの鳴き声が聞こえることがありましたが、開放的は空間で、スカラ座と違ってリラックスして観ることができました
劇場は円形劇場で、舞台道具はクレーンで搬入・搬出されます。開演は夜の9時、終わりは日付が変わるころになりますが、日中は35度ぐらいの暑さですが、夜は幾分涼しくなります。日の入りが遅いので9時ぐらいからスタートしないと演出が盛り上がらないのでしょう。
昼間は近郊を観光し、7時ぐらいから円形劇場の周囲にあるレストランで食事をしてから会場に入ります。
人気のアイーダですので日本人も多かったです。
指揮者は若手でかなり気負った指揮でした。アイーダの演出は一大スペクタクルでキャストも4日間で1番多かったです。
指揮者が変わるとこんなに演奏が違うのか、というぐらい演奏は今ひとつでしたが、それを気にさせない舞台と合唱の迫力でした。
ヴェルディのオペラは折り重なる合唱、独唱が特徴ですが、舞台演出も含めて壮大なオペラを堪能しました。
これだけの壮大なアイーダは、予算や会場の都合からベローナ、METぐらいしか観ることができないかもしれません。

円形劇場周辺のレストランで夕食しながら開場を待ちます


円形劇場
舞台演出が外に置かれています
クレーンで搬入します
舞台
発砲スチロールでした
開演5分前に銅鑼をならします
壮大
カーテンコール

次は2016年の冬に観たドイツのエッセンのアイーダです。
典型的な読み替え演出で、ベローナのような壮大さはありません。演出は現代的でしたが、何よりも子供を生け贄にする演出には観客も抵抗感があったと思います。観客のはっと息を呑む音が聞こえるほどでした。
背中に剣が突き刺さったままメッセンジャーが登場するのはお愛嬌ですが、子供の生け贄は強烈でした。
このシーンのせいで、とても印象に残るアイーダでした。


劇場内
外観外観
カーテンコール 舞台が斜めになっています

最後は、帰国後の2018年春の新国立劇場。壮大なコーラスでした。演出は現代的ではなく、昔ながらのアイーダ。セット変更が多いので、幕間が3回。これはスカラ座のように5分ぐらいの中断を入れてもよかったかもしれません。

開演前のステージとピット

アイーダの観比べをしましたが、指揮とオケの出来栄えに難はあるもののベローナの野外公演が圧倒的によかったです。野外オペラに対する偏見(雑音が入る、音が拡散する、蚊にさされる)もなくなり、むしろ夏の期間にしか楽しむことができない野外オペラをもう一度観てみたい、と夏になると思います。

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