持続化補助金の罠(2)
(1)はこちら
申し遅れましたが、僕の持続化補助金状況を共有しておきます。
昨年5月末締切(たしか第二回締切)の回に申請して採択されました。3月末を目処に実施報告書を作らなければならないため、必要書類をまとめているのですが、これがまた大変で。
補助金と聞くと『お金もらえるの!?』と食いつく方は多いと思うんですが、実際そう甘くはないんですよという親切心10%、現実逃避90%という動機で書いています。
前回の終わりにも書きましたが、持続化補助金は他の給付金などと決定的に違う点があります。それは
・支払い済み経費に対する後払いでの補填
ということ。持続化給付金は売上減少などの証明ができれば給付されて、その使いみちに対する報告義務はありませんでした。家賃支援給付金も一応支払い済みの家賃という経費に対する後払い補助ですが、家賃は毎月定額を払うものですので、感覚としては持続化給付金に近いものがありました。
対して持続化補助金はあらかじめ『これにこれだけ使います』という計画書を作成して合格をもらい、実際お金を使った後で納品書やら領収書やら膨大な書類を添えて申請し、問題なしと認められれば数カ月後に振り込まれるというもの。なので先払いできるくらい運転資金に余裕があることが大前提となります。
さて、ここからは具体的に持続化補助金の何が厄介なのか(もはやディスる気しかない)を挙げていきます。
1.計画書を書くのが大変
前回もサラッと書きましたが、まずはこれ。自分の事業がどういった状況にあって、挽回のためにどういった作戦を考えていて、それにはどういった施策が必要で、どのくらいの売上が見込めて・・ということを事細かに書いていく必要があります。
例えば『自分の事業がどういった状況』というのも、単に『地域密着でやってきたがコロナで売上が減少し・・』みたいのはNGです。
『平日昼の客単価は〇〇円、回転率は△回転で売上は平均○○円、売上の大きいカテゴリはコレとコレ。夜の客単価は・・・対してコロナ禍においては・・』みたいにいちいち数字を出す必要があります。
他の箇所についても『こういうことを思いついたからやってみたい』のではダメで、いちいち社会情勢や近隣の競合、客層といったデータと絡めて裏付けを説明しながら書いていかなければなりません。
僕は元々コンサルタントをやっていたので、正直こういった理論武装というのは苦手ではありません。少なくとも一般的な飲食店経営者よりは強いと思います。が、時間はかかりますし、何よりこういう『それっぽく数字を並べただけの理論』って書いてて全然気が乗らないんですよね。
そんな表面的な数字だけ操って目論見どおりに売上が立つなら潰れる会社なんてないし、コロナ禍という文字通り明日が見えない状況においては完璧な作戦など無く、いくら完璧ピカピカな計画を立てたところで所詮は絵に描いた餅。
でも、この補助金の申請書はそういった流れで書かないと非常に採択されにくくなるようです。まあ、国の補助金事業で原資は税金なので、客観的な説明がされているってことは必要なのかもしれないですね。
2.提出前に審査がある
普通、申請書を書けたら後は出すだけですが、持続化補助金の場合、商工会や商工会議所に持っていってOKをもらわなければなりません。もちろん、商工会等の会員である必要はないです。審査費用もかかりません。不足がある場合は赤入れされて返されるので、そこを修正して再提出。これをOKもらえるまで繰り返します。
申請書いきなり出して不採択食らうよりは事前に見てもらえるので良い事とも言えるのですが、提出までのステップが増えることで時間はかなり食われます。正直、申請書作成にこれだけ時間かけるくらいなら、実際の事業準備したい・・と思う方も多いハズ。
3.採択されても給付されるとは限らない
こうして綿密な申請書を作成し、採択されました!となったら晴れて給付対象となるわけですが、まだ安心はできません。申請書上はOKとなっても実際の給付にはさらにいろいろ手間のかかる条件があります。例えば報告書作成の際に提出する証拠書類の多さ。物一つ買うにしても見積書、発注書、納品書、請求書、領収書が揃ってないとNGです。僕の場合、見積書取り忘れてしまったものもあり、給付対象にしてなるのか心配しています。
他にもポスティングを補助対象にしている場合、チラシの内容は申請書に沿ったものじゃないといけません。具体的に言うと、『新メニュー作って売上UPを狙う』という事業で採択された場合、チラシの内容は新メニューアピールに沿う必要があり、既存商品アピールなどをしてはだめ。これまた僕の場合、つい既存の定番メニューなんかも載せちゃったんですよね。紙面としては1/4程度なんですが。これ突っ込まれたら給付されないのかな・・とかまたしても心配しています。
とにかく厳格な証拠を求められるので、『とりあえず採択されてしまえば、色々使えるだろ』という邪な考えは捨てたほうがよろしいです。
4.申請書提出から実際にお金を使えるまで数ヶ月かかる
僕が採択された第二回の場合、提出締切が6月の頭でした。採択結果の発表が8月の下旬。それから正式な採択通知文書が来たのが確か9月の下旬頃。申請書提出からたっぷり3ヶ月。この採択通知文書が届いてようやく、見積もり依頼などに着手できるようになります。
正直、申請書しっかり書けるほどやりたいことが明確になっているなら、すぐにでも着手したいはず。そこを数ヶ月待たなければいけないというのは結構ストレスです。季節が関係することや時流にそった事業などを目論んでいる場合は注意したほうがいいでしょう。
5.事業が上手くいった場合、補助金の返還を求められる可能性がある
上記のハードルを全てクリアし、膨大な時間をかけて報告書まで作成し、ようやく補助金給付されました!となってもまだ油断させてもらえません。
見事、計画通りに事が運んで、晴れて売上がUPした際には、まさかの補助金返還を迫られることがあります。実際にこの事態に遭ったわけではないのですが、申請の手引を読む限り、『補助事業によって売上が増加した際には、増加額に応じて補助金の一部または全部の返還を求める場合があります』とのこと。あんまりじゃないですか(笑)。だったら今まで費やした時間も返してくれよと。
これにも細かい条件が色々あり、補助金で機器を買ったなど、明らかに補助金が売上UPに作用した場合は返還対象。ポスティングなど効果が明確でない(お客さん増えたとしてもポスティング起因なのか、別の要因によるのか不明)ものについては返還対象にならないそうです。
さて、つらつらと書いてきました。
結論として、下記の条件を全て満たす方は持続化補助金に申請してみるのは有効だと思います。逆に一つでも当てはまらない方は申請を考え直すのも手です。特に補助金の給付を前提にした事業計画は大変危険です。
・運転資金には余裕がある
・事業の着手は急ぐものではない
・その事業にかかる経費は自腹になったって構わない
・書類管理、作成業務は苦手じゃない。また、それにかける時間も工面しやすい。
散々ディスってしまいました。バランスをとる意味で、持続化補助金の良いところも書いておきます。
・申請書作成を通じて、自分の事業を客観視できる
普段現場に立っている事業者ほど、細かい分析や調査などは特にせず、直感で決断していくケースは多いと思います。個人的に悪いことだとは思いませんが、数字ベースで外部の有識者(商工会に所属する中小企業診断士等)にチェックしてもらうのも大変有意義なことです。
最初は『これなら絶対勝てる!!』と思っていたことも客観的な指摘を受けると『実は勝算薄いかも。。』と気づき、無駄な投資を避けることができるかもしれません。
・・・良いところ良いところ、あれ思いつかない(笑)。
たぶん、他にも色々あります(雑)!
ということで持続化補助金の実際について書いてきました。
冒頭の繰り返しになりますが、持続化補助金は行政書士さんなどが補助金の存在についてアピールしている記事だったり、『出そうと思います(出してみました)』という体験記はあるのですが、実際こういうものですよ、という情報はあまり見当たらなかったので共有させて頂きました。誰かの何かの参考になれば幸いです。
ちなみに
2021年1月22日時点でまだ概要しか発表されていない事業再構築補助金。まだ具体的内容が発表されていないので完全に僕の予想なのですが、これは持続化補助金と似た仕組みになるんじゃないかと見ています。根拠として
・どちらも『補助金』であること。補助金や給付金などの違いについてはこちら。
・どちらも中小企業庁(ひいては経産省)による施策であること。お役所ですし、既にある仕組みを踏襲する可能性が高いです。
・概要の書きっぷりが持続化補助金とほぼ一緒。特に2ページ目の『補助対象経費の例』の箇所なんか。
などなど。
補助額が大きい(最低100万。持続化補助金は下限無し)ことからも、持続化補助金よりもさらに気合の入った申請書作成や証拠提出が求められると思われます。申請を考えている方は覚悟を決めておきましょう。グッドラック!