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2018年10月の記事一覧
トリビュート・習作「らりるれりん」
いつの間にか、眠っていて、夢を見ていた。
とても幸せな夢だったような気がして、少し肌寒い朝に、ぼくは起き出していきたくなかった。身体を丸めて、夢の温もりを急いで抱きしめたけれど、もうそこにはなかった。
ぼくはきっちり閉じた布団の中へ手足を目いっぱい伸ばして、爪先が出たのを、少し引っ込めた。頭の中はすっきりしていたから、まぶたを開けているのは辛くなかった。
何の夢を見ていたんだろう?
ぼく
掌編 「irodori」
「鳥のついばむ、眼の肉は、さぞ甘かろう。
肉が、妙齢の麗しい少女だったとは誰も夢見ないが、屍体はとろけた視界で、永遠の国を物語る。瞳はまさに恋をするものの目である。世界は希望の色をしているので、少女の慧眼もおいそれとは馬鹿には出来まい。
とそこまでを詠嘆した詩人は、まったくの下手である。
荒廃したもの全てが色を失うと考えるのは、陳腐な灰色の脳であろうが、唄う舌は赫々と燃えるのであれば、空もま
掌編 「人混みの中の誰か」
道をすれ違う。匂いの塊が、道一杯に広がって、思い思いの方向へ歩いていく。甘い香り、酸味の効いた刺激臭、石鹸の脂臭さと花を装う香料。私は、その匂いのどれもを、誰かに似ていると分類していく。友人が好んでつける香水、父の加齢臭、小学校の教師のポマード、私自身。あまりに似すぎたそれらは、私たちの生まれ変わりや、はたまたクローンではないか、なんて、そんなことはあり得ないはずなのだけれど、否定しきれないのは
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