【BL二次小説(R18)】 共に堕ちて⑬
「スロプロってさ……」
「ン?」
自宅のベッドで情事の後、煙草を吸いながら新開が言った。
「……生産性が無いよな」
「オイ」
半身を起こして荒北は返す。
「誰が言ったそんなコト」
「誰って……」
新開は思い出しながら答える。
「小学校の先生だったかな。“生産性のある仕事に就きなさい”って」
「ケッ」
荒北は新開から煙草を引ったくってプカプカ吹かした。
「靖友の学校ではそう言われなかった?」
「あのナ新開」
新開を指差して荒北は反論する。
「偉いセンセイ方がよくそう言うけどナ。とんでもねェ理論だぜ」
「そうかい?」
「よく考えてみろ。仕事を生産性の有無で分けちまったら、サービス業やってる人に失礼じゃねェか」
「……あ、確かに……」
「介護職や、終末医療従事者まで否定することになるゼ」
「……ホントだな」
「そんな無責任な理論を生徒に刷り込むなんて、教育者失格だっつーの」
「ははっ。靖友の言う通りだ」
新開は感心した。
「じゃあ、スロプロは?」
「それヨ」
荒北はニヤリと笑った。
「パチンコ屋の胴元はドコだ?売上金はドコへ行く?」
「どこって……某敵国?」
「その通り。つまり、だ」
荒北は煙草を新開に返して語り出した。
「日本人からギャンブルで絞り取り某敵国へ献上される筈だった金を、オレ達スロプロは横取りしている」
「ふむ」
「オレ達はその金を、某敵国ではなく日本国内で消費し日本経済を回している」
「ふむふむ」
「これは、立派な愛国活動だ」
「おお!!」
新開の頭の上に大きなビックリマークが出た。
「オレ達スロプロって、影で日本を救ってる英雄だったのか!」
「アアそーゆーコトだ」
バキュンポーズをして単純に喜んでいる新開。
もちろん、こんな理屈は後付けの詭弁である。
仮に英雄であったとしても、国民の義務である納税を果たしていない以上、しょせんカタギではないのだ。
(……ピュア過ぎて心配になるゼ。やっぱりコイツにはオレがついていねェと……)
新開の笑顔を眺めながら、荒北は思う。
……こんな話題になるのは、新開も現在の状況に漠然と疑問を抱いているという証拠だ。
確かに稼ぎは多い。
生活には困っていない。
しかし……確実に、社会から取りこぼされている。
こんな生き方は、間違っている。
そもそも自分はともかく、新開はこんな世界に居て良い人間ではない。
(オレが、巻き込んじまった。オレのワガママで。新開の貴重な人生を。でも……)
新開と一緒にいたい。
新開を失いたくない。
(いつか……オレにはバチが当たる。いつか、新開と引き離される時が必ずやってくる)
ギュッ!
「靖友?」
荒北は新開に抱き付いた。
「もう一度……抱いてくれよ」
考えたくなかった。
この不安を、忘れたかった ──。
~翌日~
本日のイベント台『秘宝伝説』を並んで打っている二人。
いつものように好調にドル箱を積み上げていた。
ポン。
その時、後ろから二人の肩を叩く人物がいた。
「オマエ達。ちょっと外へ出ろ」
「アア?」
荒北はまたチンピラが絡んできたのだと思い、振り向いた。
「!!」
「!!」
その人物を見て、心臓が止まりそうなほど驚く二人。
「福ちゃ……!!」
「寿……!!」
立っていたのは、福富だった ──。
2023-11-20
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