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【BL二次小説】 ペットの気持ち①終


ヒューン!


荒北「ソラ!取って来いアキチャン!」


荒北は高く遠くへとフリスビーを投げた。


アキ「ワンワン!」

駆け出すアキチャン。


みるみる追い付く。


ジャンプ!

パクッ!


アキ「!」
荒北「!」


しかし咥えたのは、横から割り込んできたウサ吉だった。


シュタッ!

ピョンピョンピョン。


ウサ吉は着地し、跳ねて行く。


新開「いいぞウサ吉!よくやった!」


新開の元へフリスビーを届けるウサ吉。



荒北「新開……。それじゃアキチャンの立場がねェだろ」

新開「ウサ吉のスプリント力とジャンプ力はそこらの犬に負けないぜ」

荒北「ちったァ気ィ遣えヨ!アキチャンが自信無くしたらどーすンだ!」



アキ「無くしませんけどネ、この程度じゃ」

ウサ「ボク達普通に遊んでるだけなんだけどね」

アキチャンとウサ吉は顔を見合せた。


荒北と新開はずっと言い争いを続けている。




カラッと晴れた日曜日。

恋人同士の新開と荒北は、各々のペットを連れて公園へ遊びに来ている。


同棲を始めた時に、お互いペットも一緒だった。
ウサ吉とアキチャンはすぐに意気投合し、仲良くやっている。




ウサ「知ってるんだボク。二人は言い争ってるんじゃない。あれは、じゃれ合ってるんだって」

アキ「口喧嘩するとさ、負けるのは大抵ウチのご主人様なんだよね」

ウサ「でも、先に謝るのはウチのご主人様なんだよな」

アキ「そうそう。いつもそれでおさまるんだ。ウチのご主人様は素直じゃないから」



二匹で会話していると、二人がやって来た。


荒北「オイ!スプリント勝負だアキチャン!準備しろ!」

アキ「え」

新開「短距離じゃ負けないよ。なあウサ吉」

ウサ「勝負って、ボク達で??」



荒北「犬の方が速えェってコイツに解らせてやれ!」

新開「手加減無用だよ」


アキ「マジで~?」

ウサ「勘弁してよ~」




二匹をスタート地点に立たせる。


新開「スタート!」
荒北「オラ行け!」


二匹は一斉に駆け出した。



新開「ウサ吉!鬼モードだ!」

ウサ「無いよそんなの」

荒北「負けたら承知しねーぞ!」

アキ「やれやれ」


二匹は適当な距離で示し合わせ、コースを外れて茂みの中へ飛び込んだ。


荒北「アー!あれじゃア結果がわかんねェじゃねーか!」

新開「勝負はお預けだな」






カチャカチャ。

自宅に戻り、リビングで夕食を取っている二人。

床では二匹も一緒に食事している。


食べ終わると、食器もそのままに新開は荒北に襲いかかった。


新開「靖友……」

荒北「またヤんのかよ。昼間もシたじゃねーか」

新開「朝昼晩、食前食後にシたい」

荒北「殺す気か」


ソファーでおっ始める二人。



アキ「……」
ウサ「……」

それを呆れたように眺める二匹。



アキ「キミのご主人様は相変わらず食欲も性欲も盛んだねぇ」

ウサ「知ってるかい?ウサギの性欲もすごいんだよ」

アキ「そうなの?」

ウサ「昔、プレイボーイってエロ雑誌があったんだけどね。そのトレードマークはウサギだったんだ」

アキ「へ~。キミも飼い主も似た者同士ってことだね」



新開「靖友、靖友……」

荒北「アン、ァふン、新開ィ」



盛んに交尾している二人を見て、アキチャンは呟く。

アキ「でも……良かったなぁ。ご主人様の恋が実って」

ウサ「え?」


アキ「いやね、二人が結ばれる前、ずーっと毎日ボクに語ってたんだよ。キミのご主人様の事をどんなに想ってるか」

ウサ「そうなの?」

アキ「ウチのご主人様、ボクだけにしか本音喋らないから。こりゃ一生相手に気持ち伝わらないだろうな~って心配してたんだ」

ウサ「あ!それでキミ……」


ウサ吉は当時の事を思い出す ──。




ある大雨の日、些細な事で新開と喧嘩し、荒北は落ち込んでいた。

見かねたアキチャンは、アパートを飛び出し姿を消した。


雨の中、アキチャンを捜しまわる荒北。


アキチャンは新開のアパートに行っていた。


突然単身訪れたアキチャンに驚く新開。

仲直りの良いチャンス、と傘をさしアキチャンを抱いて荒北のアパートへ向かう。
新開の肩にはウサ吉も乗っている。


ずぶ濡れ姿で公園を捜している荒北に近付き、声を掛ける新開。

アキチャンが見付かってホッとし、新開に駆け寄りポロポロ涙を流す荒北。


見つめ合う二人。
傘を地面に放る新開。

大雨の中、二人は初めての口づけを交わした ──。




ウサ「あれ計画的だったのかキミ」

アキ「うん。ああでもしないと、いつまでたってもくっつかないと思ったからね」

ウサ「やるじゃないか」

アキ「ウチのご主人様、他人のアシストは得意なのに、自分の事はサッパリだから」

ウサ「アシストのアシストをしたんだね」

アキ「そういうこと」




二匹が語っている間に、二人の交尾は終わったようだ。
心地良い疲れの表情のまま、二人は二匹を見遣り、言った。

新開「……そういえば明日は」

荒北「……あァ、コイツらの予防接種の日だったナ」

アキ「!」
ウサ「!」

それを聞いて飛び上がる二匹。


新開「毎回どっかに隠れちまうんだもんな」

荒北「今回こそ連れてかねェと」


アキ「……」
ウサ「……」


二匹は震えながら、どこへ隠れるか慌てて相談を始めた。





おしまい




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