【BL二次小説】 ノロケ話②
バレた ──。
新開はガクッと肩を落とした。
「父さんと母さんには、黙っててくれないかな……」
「え……隼人くん……マジで?マジなの?」
信じられないという表情で兄の顔を見る悠人。
兄弟はリビングへ戻った。
向かい合わせにソファに座る。
「……」
「……」
悠人は沈黙したまま、ココアをすすっている。
新開は何と説明したものか考えている。
幼い頃から目標としていた憧れの兄が、ホモだった ──。
悠人のショックは計り知れない。
カサッ。
なんとなくテーブルの上のウナギパイの包みを手に取る悠人。
包み紙をボーッと眺め、書いてあるキャッチフレーズを読み上げた。
「“夜のお菓子”……」
「悠人!それはべつに精力がつくという意味じゃなくてだな!」
「隼人くん」
悠人は顔を上げた。
「……はい」
新開は手と膝を揃え、背筋を伸ばして返事した。
「……いつから……男に乗り換えたの?」
素朴に質問する悠人。
「乗り換えたわけじゃ……」
観念して、正直に答え誠実に向き合おうと決意する新開。
今更下手に隠しても仕方がない。
「初めて好きになった相手が……靖友だったんだ」
それを聞いて驚く悠人。
「初めて?初恋が靖友くんだったってこと?」
「ああ」
「なんで?隼人くん昔からあんなに女子にモテモテだったのに!」
「なんでって言われても……女子には全く興味わかなかったし」
「……」
悠人は思い返す。
確かに兄は、昔からたくさんの女子に囲まれていたが特に愛想を振り撒くことも無かった。
その対応をクールだと尊敬していたのだが、実は単に興味が無かったと……。
「隼人くん、オレね……」
「ん?」
実は悠人には、以前から悩んでいることがあった。
打ち明けるのは今しかない。
悠人は勇気を出して口を開いた。
「オレも……ホモかもしれない」
「ええ!?」
弟の爆弾発言に衝撃を受ける新開。
「女の子とデートしてもね!手を繋ぎたいとかキスしたいとか思わないんだ!これっておかしいよね!ホモだよねオレ!」
「待て!待て悠人!!」
矢継ぎ早にまくし立てる弟を制止する新開。
「結論を急ぐんじゃない!兄がそうだからって弟もそうだとは限らない」
「だけど……普通の男なら、女の子に触れたいって思うものだよね?」
「まあ、一般的には……」
自分には当てはまらないので頭を掻く新開。
悠人は思い詰めた様子で語り出す。
「女の子を見るとさ、可愛いな、とは思うんだよ。ふわっふわだな、って。……だけど、それだけなんだ。デートしてて、会話して、楽しいな、とは思うんだ。でも、その先へ進みたい、とは全く思わないんだよ。ただの友達止まりなんだ」
「だからってホモってわけじゃないだろ。おめさんにはまだ恋愛は早いってだけかもしれない。こういうのは個人差あるんだよ」
一生を左右する重要な問題だ。
弟の人生が狂うかもしれないのだ。
慎重に言葉を選ばねばならない。
「男を見て……性的興奮を覚えたことがあるのかい?」
「それは無いけど……でも今まで意識してなかっただけかもしれない。意識して見たらもしかしたら……」
「だから待てって!」
いけない。
せっかくノンケだった弟を、間違った方向に目覚めさせてはいけない。
絶対にいけない。
自分はもう手遅れだし、改めるつもりも無い。
しかし弟はまだ大丈夫だ。
今後の人生の選択肢を狭めさせてはならない。
緊張する新開。
「ねぇ隼人くん」
「なんだい?」
「……男同士のキスって、女の子とどう違うの?」
「えっ!!」
思いもよらない質問が出て新開は困惑する。
「いやあ……女の子としたこと無いから知らないけど……キスは男でも女でもたいして変わらないんじゃないか?」
「でも、女の子の唇の方が男より柔らかいんじゃないの?それに、男は髭がチクチクしたりするんじゃないの?」
「う……」
そんなこと今まで改めて考えたこともなく、真っ直ぐな目で問う弟に戸惑いを隠せない。
しかし、疑問点は解消してやらねばならない。
それが兄の務めだ。
「お、男だって唇は充分柔らかいぜ。髭のチクチクは確かにあるけど、逆に、それがまたいいって言うか……」
「ふーん……」
恥ずかしくなってくる新開。
しかし悠人の目は真剣だ。
「そ、それにさ。女の子って、口紅塗ってるだろ?オレ、あれがどうも苦手で……」
「ああ、なるほど!確かに!化粧とか、絶対あれ体に悪そうだよね!」
新開の照れ隠しの発言が悠人の同意を誘う。
そして悠人は更に踏み込んだ質問をしてきた。
「靖友くんとは、いつもどんなキスしてるの?」
「え、ええ?」