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三日坊主日記 vol.317 『恋する梅干し(仮題)〜はじめの第一歩②〜』

奥さんは梅干し料理を準備して待っていてくれた。


と言っても、料理を作って待っていてくれたのではない。さまざまな梅干しと、梅干しをつくる時にできる副産物。そして地元の食材だけだ。それをその場てチャチャっと料理する。その手軽さがゆえに梅の底力がわかるという塩梅である(梅干しだけに)。


まずは梅干しの試食から。オーソドックスな塩分18%のモノから始まって、塩分濃度ギリギリの13%のモノ、シソ入り、ヴィンテージモノからシロップ漬けまで。間違いなく僕の人生でいちばん梅干しを食べた日だ。どれも添加物は一切なし。梅と塩だけでつくられている(シロップ漬け以外)。


そもそも、梅干しは保存食品である。梅を塩(12%以上)で漬け込むことで微生物(腐敗菌)が生きられない環境にして、腐るのを防いでいるのだ。従って、しょっぱい。そのしょっぱさが良いのだけど、しょっぱさが故に敬遠され、市場からどんどん淘汰されつつある。


いわゆるマイルドな梅干しは食べやすいかもしれない。そして、塩分高めの梅干しが敬遠されるのもわからなくはない。しかし、よく考えてもて欲しい。塩分濃度を高くせずに微生物の発生を抑えるということはどういうことか。防腐剤をはじめとする食品添加物が塩の代わりを務めているのである。


法律が認可した添加物を使用しているのだから、なんら問題はないのかもしれない。だがしかし、日本では認可されている添加物も外国では(特に欧米では)認可されていない場合が多いそうだ。それは何を意味するのか。僕が梅干しに興味を持って、なんらかの作品にできないかと考えるのもその辺りのことをもっとよく知りたいからなのだ。


僕が最近探してでも買う昔ながらのおばあちゃんの梅干し。もしそんな梅干しを見つけたらパッケージの裏を見て欲しい。原材料の欄にはとても潔く「梅、食塩」とだけ書いてあるはずだ。一方、マイルドで食べやすい最近の梅干しはどうだろう。お宅の冷蔵庫にある梅干しのパッケージの裏を見て欲しい。もし「梅、食塩」以外にいろんな表示があれば、それらが塩分の代わりに梅干しが腐るのを防ぐために働いているのだ。


さて、梅料理。梅干しの次は鶏肉の梅酢炒め。鶏肉をさっと梅酢にくぐらせて焼くだけ。塩も胡椒も使わない鶏料理だ。梅酢というのは、梅干しを漬ける時に出る液体。梅干しは、梅と食塩を瓶に入れて保管するだけでできるんだけど、塩の浸透圧でどんどん梅から液体が出て梅自体の体積が減ってくる。最終的にその梅を乾燥させて梅干しになるんだけれど、瓶の中に残った液体が梅酢。旨味も栄養もある万能調味料である。


この梅酢を鶏肉にさっと絡めてフライパンで焼いただけのモノがびっくりするほど美味い。ご飯のおかずにもなるし、酒のあてにも良い。鶏肉にも良いが、豚肉でも美味しいと思う。僕はこの日買って帰ったイカの一夜干しに塗って焼いてみたが、やはり驚くほど味の輪郭がしっかりして旨味が増していた。


そしてニンニクの梅肉漬けに、梅ドレッシング。ニンニクの方はそのまま食べてもいいし、温野菜につけてもいい。梅酢で焼いた鳥と一緒に食べても美味しかった。梅ドレッシングもさっぱりしていてとても美味い。もちろんどちらも無添加の安心食材だ。


あと、梅干しをカリカリに乾燥させて細かくしたもの。これをご飯にかけて食べると本当に美味い。この時はシラスと一緒にご飯にかけたんだけど、やばいくらいに美味い。お茶漬けなんかもいいんじゃないだろうか。


そして梅シロップ。梅を塩の代わりに氷砂糖で漬けるときにできる液体で、炭酸で割ると爽やかで嫌味のない甘さが美味である。いやぁ、梅の潜在能力恐るべしである。ただ塩でつけるだけなのにこんなに多様性のある食材に生まれ変わるなんて、ちょっと信じられない。あらためて、梅干しを発明した先人にありがとうと言いたいのだ。


この日本が誇る食品をもっと今の人に受け入れられるようにするために僕は一体何ができるんだろう。何をすれば良いのだろう。梅と梅干しのことを勉強しながら、ゆっくりと考えていきたいと思う。『恋する梅干し(仮題)』記念すべきはじめの第一歩なのだ。


新しい出会に感謝。ごちそうさまでした。


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