三日坊主日記 vol.88 『春、別れの季節』

送別会があった。

某大手広告代理店に勤めるクリエイティブディレクターが早期退職するというので、親しい仲間が集まって送別会を開いた。

この方とは、国産スポーツメーカーのCMを何年間か一緒に作った。関東の出身で東京で今の会社に入り、ずっと東京で勤めていたんだけど、10年ほど前に大阪へ転勤してきて、間もなく初めてご一緒した。

非常に（異常に）映像にこだわる方で、画面の隅々まで気を配る。演出家としてはある意味やりにくいんだけど、うまく噛み合えば徹底的にクオリティを追求することができるのでやり甲斐がある。その人と作った作品を改めて見返すと、とても仕上がりがいい。

初めて一緒に作ったのは前述メーカーのブランドCMで、光やアングルに徹底的にこだわって何ヶ所もロケをした60秒CM。自分の演出した作品の中でもかなり気に入っている。昨夜もその話になり、その方も大阪へ来てから作ったCMの中で一番好きだと言ってくれた。ありがたい。

フロリダへ2人で撮影に行ったこともある。出演者がその時期フロリダにいて、そこでしか撮影できないのだ。2015年だったと思うが、世の中不景気で海外ロケなんて殆どない時期だったけど、無理して弾丸で行ってきた。スタッフは全員ロサンゼルスから来てもらい、機材はマイアミから。夜明けのマジックアワーの中でアスリートの一瞬の動きを10倍のハイスピードカメラで撮影するという、なかなか痺れる撮影。

機材のセッティングがのんびりしていてかなりヒヤヒヤしたんだけど、結果は狙い通りの素敵な映像が撮れた。その夜、スタッフみんなでアガベを浴びるように飲んだのが懐かしい。

その後何本一緒に撮っただろうか。どれも良い思い出で、上がりがいい。

退職後は故郷へ帰るそうだ。まだ何をするのか全然考えていないと言うことだった。また会う日が来るのだろうか。何をするにしても応援したいと思う。

出会いと別れ。人の縁って不思議で尊い。