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三日坊主日記 vol.324 『ベルリン天使の詩』

先日prime videoで『パリ、テキサス』を見たからなんだろう。おすすめに『ベルリン天使の詩』が上がってきた。


この映画を僕はいつ見たんだろう。ずいぶん前であることは間違いないが、見た記憶はある。今回あらためて見たが、やはり見ている。『パリ、テキサス』に比べるとかなりいろんなことを覚えていた。それだけこの映画が印象深い作品ということだろう。


しかし、はたして当時の僕はこの映画のよさがわかったのだろうか。どういう感想を持ったんだろうか、めちゃくちゃ聞いてみたいと思うのである(こんな時の為にも日記をつけるのはとても大切)。かくいういまの僕も正直よくわかっていないかも知れないが、また何年か経ってもう一度見た時のために、そしていまの僕がどう感じたかを知りたくなった時のために、いま思ったことを書き残しておく。


まあなんというか、いわゆる名作なんだろうと思う。まず、設定はとてもユニークで非現実的ではある。だけど、じっくり考えてみると、実はこれがリアルな世界のかも知れないと思ってしまうのだ。僕たちには天使の姿は見えないけど、実際このようにそこかしこにうようよといたって全然おかしくない。ヨーロッパだから天使と呼んでいるが、日本だったら守護神とか守護霊ということになるんだろうか。見えてないけどいても不思議ではない。いや、おそらくいるんだろうと思う。


だけど、その設定をことさら何かの方法で際立たせるのではなく、さらっととても詩的にやってのけているのはやはり演出力というかヴェンダース監督の手腕なのだろう。お見事です。そして、やはりこの脚本というか劇中にずっと出てくる詩のような人間たちの心の声。これがなければここまで知的でアーティスティックな映画にはならなかっただろうと思う。そこはペーター・ハントケの力だろうし、やはり起用した監督の力だと思う。


撮影もよい。アンリ・アルカンというフランスの巨匠を口説き落として起用したそうだが、さすがの絵づくりだ。街の切りとりかた、人間を捉える眼差し、巧みなカメラワーク、どれも素晴らしい。ベテランカメラマンを口説いて起用したといえば、トリスウイスキーのCMを思い出す。コピーライターの仲畑貴志さんがどうしても宮川一夫カメラマンに撮って欲しいと三顧の礼で迎えた名作。宮川一夫さんといえば溝口健二監督や、黒澤明監督と組んだ日本を代表する名カメラマン。仲畑貴志さんは糸井重里さんと共にコピーライターという仕事をメジャーに押し上げたこちらも名コピーライター。このCMに興味がある人は、トリスウイスキー、CM、雨と犬、で検索してみて欲しい。


話がそれた。とにかく、なかなか簡単に撮れる映画ではないと思う(あたりまえか)。簡単に撮れる映画なんかないし、どんな脚本でも監督によってずいぶんと違った映画になると思うが、これほど監督の力量が試される脚本はそうそうないんじゃないだろうか。と、思うほどむずかしい題材だと思うのである。できればこんな映画を撮ってみたいものだ。とても勇気がいると思うけど。


それにしても、この映画は人間讃歌なのだろうか、それとも堕天使をモチーフにどうしようもない人間社会を描いているのだろうか。



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