社会課題をリサーチで捉えるマクロミルの「NPO支援」
「リサーチで、世の中をもっと良くできる」。
こんな想いで社会貢献活動に取り組むマクロミルの「Goodmill」。ここで事務局を担当する横田が、マーケティングリサーチ会社が行う社会貢献活動について連載しています。今回はこれまでにNPOと取り組んだ協働調査についてご紹介したいと思います。
認定NPO法人カタリバ様との出会い
Goodmillでは「非営利活動組織へのリサーチ技術支援」として、NPOの課題を解決に導くための協働調査を実施してきました。
日本に5万以上あると言われるNPOの多くが、特定の社会課題にフォーカスして活動しています。しかし、課題の実態把握のためリサーチを必要とする場合も、予算の確保が難しいことや、データ分析の知見を持つスタッフが身近にいない等の理由から実施に至れないというお声をいただいたのです。そこで、私たちがリサーチのプロとしてNPOを支援することで、社会貢献につながるのではないかと考えました。
その第一弾となったのが、認定特定非営利活動法人カタリバ様との「思春期の実態把握調査」でした。カタリバ様は、“どんな環境に生まれ育ってもすべての10代が意欲と創造性を手にできる未来の当たり前を実現しよう”と、2001年から活動しているNPO団体です。全国で10代のための居場所となる施設を運営したり、災害時の教育に関わる緊急支援などを行っています。
しかし、活動を続ける中で、10代を取り巻く社会課題を客観的な視点で可視化することが難しいと感じていらっしゃいました。そこで、思春期となる中高生の実態について、リサーチを通して把握できないかとご相談をいただいたのです。
GoodmillとしてNPOの活動をリサーチで支援するのは最初の試みでした。さっそく社内のプロボノメンバーに呼びかけ、有志によるプロジェクトチームを発足。プロジェクトマネジャー、リサーチディレクション、集計、分析、レポーティングなどを担う社員たちが集結しました。
難航するリサーチの設計
マクロミルが普段、メーカーや事業会社といったクライアント様からご依頼いただく調査案件の多くは、マーケティング課題が明確です。しかし、NPOの課題は社会的な背景を理解した上で、受益者のニーズを捉えねばなりません。一般消費者の購買意識に対する調査の組み立てとは異なるため、リサーチの設計に難航しました。商品やサービスを買ってもらうためのマーケティングリサーチには、そのフェーズや課題に対してある程度定型化された手法があるのですが、社会解決の可視化に当てはめることはあまり経験がなかったためです。
そのため、複数回にわたるカタリバ様とのディスカッションを経て、ようやく調査票が完成。「春期世代」「元・思春期世代」「保護者」「教員」という各セグメントに対してリサーチを実施しました。ターゲットとなる思春期世代には、生活実態や悩み、家族以外との交流についてなど詳しく聴取し、結果はGoodmillプロボノメンバーによる集計・分析・レポーティングを経て、報告会という形式でお伝えしました。
レポートはカタリバ様にもご好評で、「今回のGoodmillの支援によって、初めて自分たちが主体となって課題の当事者の声を集めることができた。ぜひ、今後の政策提案に活かしていきたい」とのコメントをいただきました。
また、マクロミルの社員が学ぶ機会として社内で報告会を実施し、カタリバの代表理事 今村久美様にご講演いただきました。
リサーチ結果から受け取る思春期世代の声
私も事務局の立場で関わっていましたが、レポートを読み込んだあと、思わず胸が詰まりました。なぜなら、リサーチ結果によって思春期世代の抱える悩みが明らかになり、一方で保護者や教師にとっても、子どもたちにどう向き合っていけばいいのか分からないという実状が表れていたからです。
世代による価値観の差や、時代が変わったことで昔の指導方法が通用しなくなったなど、要因はたくさんあります。10年前には、「SNSいじめ」という言葉もなかったことでしょう。
子どものいじめや自殺のニュースを見て心を痛めることはありますが、ニュースにならないところで、多くの子どもたちが苦しんでいるのかもしれません。リサーチによって明らかになった結果を目にし、これはとても大きな社会課題だと実感しました。
そして、保護者や教師の立場ではない「ナナメの関係」を築くというカタリバ様のお取組みが、こうした子どもたちの救いになるのではと感じたのです。
長らくリサーチの業界で仕事をしていますので、これまでにたくさんのレポートを目にしていますが、こんなに心を動かされたのは初めての経験でした。分析結果はあくまでも数値から導いたものです。しかし、私はその数字に突き動かされ、何かできることはないかと、社会課題に向き合うことができたのです。同時に、リサーチの持つ可能性を改めて実感した瞬間でもありました。
このように、カタリバ様とのお取組みがひとつの実績となり、その後、複数のNPOと協働調査を行うことになりました。
また、プロボノとして参加した社員にとっても、普段は扱わない社会の課題解決のため、リサーチのノウハウを総動員することで成長にもつながりました。さらに、事務局メンバーも、リサーチから得られる結果が社会を動かす原動力につながることに改めて気づかされました。
双方にとってよい相乗効果が得られ、Goodmillの方向性が定まったきっかけが、この協働調査だったのです。
その後、Goodmillの取り組みも徐々に認知されるようになり、複数の団体からご相談をいただくようになっています。有志による活動ということで、すべてのご依頼を協働調査という形でサポートすることは叶わないのですが、まずは社会課題に対し、どういった取り組みがなされているかを広く知り、今後の活動につなげていきたいと考えています。ぜひ、今後のGoodmillにもご注目ください。
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