見出し画像

室井慎次 『敗れざる者』そして、『生き続ける者』

「レインボーブリッジ、閉鎖した事件・・・」

「閉鎖できなかったが」

「でしたねぇ〜!」

『破れざる者』で度々出てくるこのシーン、『踊るシリーズ』のコミカルな一面も健在。

で、件(くだん)の事件とは

「レインボーブリッジ、封鎖できませ〜ん!!」

と青島巡査部長が叫ぶシーンでお馴染み?2003年公開『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』の中の事件。(映画版で観たのはこの作品まで。スピンオフは除く)

10数年ぶりに再開?再始動?した『踊るシリーズ』最新作は警視庁刑事部元管理官・室井慎次の2部作から。元、と記しているとおり、この2部作に登場する「室井さんっ!」はもう警察の人間ではない。

映画版ファイナル後、定年を待たずして室井さんは退職。この2部作での彼はその後の彼。


室井は現場(所轄)の警察官との約束を果たすべく奮闘していたが、それを果たすことができなかった。

警察組織を改革することを目指し編成された改革委員会は成果を上げることなく解散。

「俺は負けたんだ」 

そんなセリフが本作『破れざる者』というタイトルの所以か。
本編には登場しない“あの男”青島(織田裕二)との約束。青島にかぎらずシリーズ主要キャストはほとんど出てこない。


退職後の室井さん。自らの故郷秋田へ移住。犯罪被害者遺族の支援をしたいと、犯罪被害により孤児となった少年、そして加害者逮捕により孤児となった少年の2人の里親として暮らしていた。

ある日、自宅近くの湖の辺りで遺体が見つかる。その遺体はかつてのレインボーブリッジの事件の犯行グループのメンバーだった。
当時事件を捜査を指揮したことから、秋田に捜査本部を置いた東京の警視庁に捜査協力を依頼される。

そんな男ばかりの「室井さん家族」にある日“娘”が加わって・・・というのが第1作目『破れざる者』。すぐさま第2作目『生き続ける者』公開が控えているから第1作目では事件は解決しないどころか、めざましい進展もない。2部作とはいえ、1作ごとに完結する場合もあるけど今回は明らかに“to be continue”。

マーヴェルMCU作品のエンドクレジットよろしく本編終了後2作目の予告。直後に予告観なくとも次作を観るのは必然といえば必然。

間1ヶ月。待ち遠しいけど早かった。( 個人の体感)

とはいえ、この“完結編”の評価がかなり厳しくて、映画系YouTuberの方とか先行上映に行ってるわけですね。その中の『踊るシリーズ』好きな方でさえ酷評しとるわけですわ。もうね、そんな評価はどうでも前作観た身としては観らんわけにはいかんですから、そこは逆に興味湧くというか。どう酷いのか?的なみたいな。

やれやれ。

で、後編である『行き続ける者』はまず前編のあらすじから。1ヶ月空いてるわけやから、「ああ、そうそう。そうやったね」って感じで。

レインボーブリッジ事件に関係する今回の遺体遺棄事件、そして室井さん近辺で起きるさまざまなトラブルもあっけなく解決し、めでたしめでたし・・・とはならんのです。

ですけどね。

しかし、いうほど駄作ではないんと違うかな?大傑作とはいえないけど、そんなに悪くはない。結局のところ視点の違い、なにを求めるか?なんじゃないだろうか。

あんなに“室井家”を引っ掻き回した杏姉ちゃんもすっかり溶け込んで、ラスト、エンドロール中のリクがサッカーしている場面、ちゃんと前編の伏線回収的になっていて。子を持つ親としてはいくつかくるものはあったなあ。

まあ、確かにラストの一連の流れは、おいおい、それはないだろうとは思うけどさ。

中盤で杏にいうセリフ、

「生き抜く力を持て」

というのが印象的だった。

「約束を果たせず偉くもなれず・・・」
東京で『破れざる者』だった室井慎次のレガシーは“室井家”の中で、かつての後輩やまわりの人びとの中で『生き続ける』

あのころ、理想や信念に暮れた室井さんのマイルドな変化は悪くない。「あんたの話ばかりするんだよ〜!(怒)」というリクの実父のセリフが象徴的。

リクの笑顔に救われる。それだけでいいじゃないか、個人的に。

なにはともあれ、『踊るシリーズ』は今後も続く。




いいなと思ったら応援しよう!

阪口 誠   Makoto Sakaguchi
ご拝読ありがとうございます。よろしければ応援いただければ幸いです。いただいたチップは今後の活動費の一分として使わせていただきます。

この記事が参加している募集