キクラゲを野球選手に喩えた場合の打順と守備は?

まあまあラーメン好きの私ですが、このGWは外食自粛に従って、一切ラーメン屋さんに行かずに過ごしました。そこでせめて、記事だけでも普通にラーメンを食べていた頃の話をさせていただきたいと思います。


2013年の12月の話です。

近頃めっきり寒くなりました。寒いときはやっぱり温かい食べ物ということで、会社の帰りに某中華料理チェーン店で夕飯を食べることにしました。
(解説:まだ会社を辞める前の話です)

いつもなら迷わず「みそラーメン」を頼むところ、この日はちょっと御飯ものが食べたくなり、悩みに悩んだ末、その名に「中華」の文字が燦然と輝く、庶民派中華料理の代表メニュー「中華丼」を頼むことにしました。
(解説:すみません、実はラーメンを食べる話ではないのですw)

主な具材は、白菜、青梗菜(チンゲンサイ)、キャベツ、ブロッコリー、人参、玉葱、筍、豚バラ肉、エビ、イカ、ホタテ貝柱、うずらの卵、キクラゲ(または椎茸)等が考えられます。どれを入れるかは、お店の方針とコストとのバランスによって決まります。

もちろん、すべて入っているに越したことはありませんが、その分価格に転嫁されるのであれば、無くてもいいものも少なからずあるはずです。野菜にしても、毎日の市価に合わせて内容を変えるべきだし、多くは代替が利くものばかりで、これが入ってないとNGみたいなことは決して無いのがこの料理の特徴といえます。

このようにして決まった野菜、そして豚肉、ときには魚介類をアンサンブルにして、鶏がらスープと塩コショウで炒めたあと、最後に片栗粉でとろみを付け、あんかけにしてご飯に盛り付けるのが一般的な中華丼です。(価格設定によっては、魚介類がすべて省かれることもありますが)そして、中央にシンボルとして「うずらの卵」を鎮座させることもまた、中華丼の一般的な姿です。

ときに「うずらの卵が入っていない中華丼なんて中華丼じゃない!」なんていう人もいるように、見た目、味、栄養のバランスの見地から、できれば「うずらの卵」は外さないで欲しいというのが、大多数の日本人の主張といえるでしょう。

そんな中華丼は、私にとっても好きな料理の上位に食い込む重要なメニューには違いなのですが、ひとつだけ、どうしてもクリアにならない大きな問題点を抱えています。それは、

「キクラゲ」が入っていることです。

その容姿はお世辞にも美しいとは言い難く、黒くヌメヌメしたフォルムは、地球上の生物として説明を付け難く、映画「エイリアン」の分泌物を思い起こすほどの強烈な不気味さを放っています。まさに私から言わせれば、地球外生物以外の何モノでもありません。

これさえ無ければ...

もう何百回思ったことでしょう。今までも、今も、そしてこれからも、この気持ちが消えることは無いでしょう。

願わくば、「中華丼の構成具材にキクラゲの使用を禁ずる」という法律を作ってもらいたいくらいですが、そうなると、キクラゲの収穫で収入を得ている人にとって大きな打撃となるだろうし、また中華丼のキクラゲを楽しみにしている人にとっては、稀代の悪法として大反論を受けることは明白です。独裁国家ならまだしも、民主主義国家においては、まったくもって社会的意義を成さない法律となることでしょう。

特定秘密保護法案や軽自動車税の増税なんかと同じ土俵で議論されないことは、小学生でも理解できる話です。それを承知で「キクラゲ禁止法案」を願望してしまうほど、中華丼におけるキクラゲの存在は大きいのです。

(解説:2013年の話なので、当時話題の法改正の話になっています)

そんな思いを馳せながら、誰にも迷惑をかけずに、ほんの少しだけ我が儘を言わせてもらえないものかと、注文時にしれ~っとオプションを付け加えてみました。

「すみません、中華丼をキクラゲ抜きでお願いします。」

相手にとって少し面倒になることを「できますか?」と尋ねれば「できません。」と答えたくなるのが人間の心理というもの。ここは敢えて質問形式を選択せず、牛丼屋さんの「つゆだく」や、ラーメン屋さんの「野菜ましまし」のごとく、ごく自然に、当たり前のように「キクラゲ抜き」を頼んでみました。

すると注文を受けた女性は、このようなオプション注文は初めての経験だった様子で、多少の戸惑いはあったものの

「あっハイ、キクラゲ抜きですね。承知しましたぁ~!」

と、すんなりオプションを通してくれました。

個人経営の飲食店ならまだしも、チェーン展開している店舗にしては意外にも融通が利くものだと感心したのものですが、そんな喜びも束の間、約30秒後、厨房への伝達から戻ってきた彼女は、再び私のところへやってきて、

「大変申し訳ございません、キクラゲ抜きはできないようなんですが...。」

「あぁ、そうですか。ならいいです。」

「誰にも迷惑をかけないほんの少しの我が儘」というポリシーを掲げた手前、既に謝罪をさせてしまっている彼女に対して、さらに執拗な追求をすることは男らしくないわけで、ここはすんなりと引き下がらないといけません。もっというと、こちらの意に反して、お店側から見た私は既に面倒臭いお客となってしまっているわけで、これ以上の面倒を引き起こしてはならないと察しました。

まぁ最後は、自分で取り除けばいいわけだし...。

ただ、こちらの気持ちとしては、最初から望まれていない具材ならば無駄にならないようにと、コストダウンに協力してあげようと思っただけなのですが、むしろチェーン展開しているお店のオペレーションとしては、通常の工程にイレギュラーが発生することの方が、コストアップやオペレーションミスに繋がるということであれば、甘んじてそれに従うまでです。別に文句はありません。

注文してから約8分後、運ばれてきた熱々の中華丼を見てみると、なぜかキクラゲの姿が見当たらず、これはもしかしてお断りしながらも便宜を図ってくれたのかと思ったものの、よく見るとそこには、勝手に想像していた黒くてぐにゃぐにゃしているキクラゲではなく、本場博多の「長浜ラーメン」に入っているような千切りに刻んだ茶色いキクラゲがチラホラ見え隠れしていたのでした。

実際箸で全部つまみ出してみると、千切りとは言ってもかなり細かく千切れていて、さらにはいろんな具材の下に埋もれているため、すべて取り除いたと思ったあとでも二、三度発見するなど、盛り付けてからの除去作業はなかなかの困難を極めることが判りました。

ここで仮説。

なるほど。もしかしたら、中華チェーン店においては、キクラゲは料理の工程の中で具材として中華鍋に投入していくものではなく、レトルト食品のような業務用仕込みパックの中に最初から入っていて、キクラゲ抜きの要望に応えるためには、そこからキクラゲだけをつまむことになるので「そんな面倒なことはやってられね~よ!」という厨房の叫びが、断られた真の理由ではないだろうか?と結論付け。

結局のところ、厨房の出した結論の真相は語られることなく、きのこだけにキクラゲ事件は藪の中へ..というところでしょうか。

ここで疑問。

はたしてキクラゲは、中華丼の具材において、そんなに必要なものなのでしょうか?コスト以外の面で「椎茸」を凌ぐほどの実力はあるのでしょうか?

この疑問に対して、きのこを野球のスターティングメンバーに見立てて、独断と偏見に満ちた選出により、以下のとおり、検証してみることにしてみました。小久保ジャパンならぬ「きのこジャパン」ですね。

(解説:今だったら「稲葉ジャパンならぬ」ですがw)


WKC2013 きのこジャパン
スターティングメンバー発表!

(※解説:WKC=ワールドきのこクラシック)


(打順) (守備) (選手)
1番 RF えのき茸
2番 2B ぶなしめじ
3番 1B トリュフ(外国人枠①)
4番 3B 松茸
5番 C  椎茸
6番 CF エリンギ(帰化=日本人)
7番 SS なめこ
8番 LF 舞茸
9番 P  マッシュルーム(外国人枠②) 

<控え>
・平茸
・ホンシメジ
・ハルシメジ
・キクラゲ
・イワタケ
・冬虫夏草(外国人) 

私も物凄くきのこに詳しいわけではありませんが、守備と打順を考えたスタメンの布陣は、なかなかのスター選手が揃った気がします。念のため、解説しますと...

トップを飾るのは、きのこ界一の俊足!1番ライト「えのき茸」!続く2番は、小技の利くセカンド「ぶなしめじ」!この1・2番コンビの機動力を活かした攻撃にはきっと手を焼くことでしょう。(というより煮た方が美味しいでしょうw)

そして、4番に座ってもおかしくない現役メジャーリーガー!外国人枠1人目は、庶民が口にすることがまず無いと言われる巨額の契約金でやって来た!3番ファースト「トリュフ」

そして「きのこジャパン」不動の4番は、日本国民で反対する人はまず居ないでしょう!誰もが認める国民的英雄!きのこのホームラン王といえばこれしかありません!4番サード「松茸」!!!

クリーンアップの最後を締めるのは、煮ても焼いても美味しい5番キャッチャー「椎茸」!このあと、下位打線に入っても手が抜けません!実は外国生まれだが日本人に帰化したという6番センター「エリンギ」!そして、粘っこい守備で定評のある7番ショート「なめこ」!どんなフライも逃さない!天ぷらが似合う8番レフト「舞茸」!と続きます!

スタメン最後の9番ピッチャーは、外国人枠2人目、パスタ料理にもってこいの変化球主体の投手といえばこの人「マッシュルーム」!これはもう文句のつけ難いオールスター布陣です!!

検証が終了しました。

というわけで、どんなに贔屓目に見ても「キクラゲ」は「きのこジャパン」のスタメンには入れなかったという結論です。

キクラゲファンの読者の皆さん、ごめんなさい。
そして、野球の知識のない読者の皆さんにも、ごめんなさい。

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