「めげない」
オシャカ出した――
女がいう
わしも はじめはそうやった
男がいう
男も 女も 工場で働く工員だ
男は 機械部品の最終工程
研磨の技能工
女は アルミサッシの組み立て工場
配置換えになったばかり
それぞれに 過去は別に仕事をしていた
いや 女は「仕事」の経験も浅かった
四十をすぎ
自分のため 子のため
家族という家のために
慣れない仕事に就いた
できないことを
「できません」と言わず
経験のないことを
「やります」と言う
一つひとつ
オシャカを出しながら
男は覚えていった
女も同じ
一つひとつ
イヤな思いをのみこんで
慣れていくようにした
働く 汗を流してカネをもらう
そういうことだ
オシャカの山にもめげず
自分のため 子のために
額に汗してきた
男と女は
ぼくの
あなたの
父であり 母である