「シルバーグレイの月」
吉増剛造(芸術院会員、慶応大卒、82歳)
現代詩手帖1991年5月号に寄せた詩
「道/パァップ、ブル、コラ」の結句に
「――銀鼠の月」
と
書いた
そうか 月を銀のネズミに準(なぞら)えたか
ぎんねずみ
なるほど なるほど
しばらくして
「銀鼠」を調べた
ぎんねず、ぎんねずみ色のこと
単に、月の輝く その色合いのことを言っただけだ
英語だと、シルバーグレイ
まんま…じゃん
なぜか 深い意味でもあるのか
と
思ってしまった
何げない日常から零れる言葉を
つづればよいものを
言葉のおかしな組み合わせ こねあわせ 難解な文字(もんじ)の羅列を作り上げる
そして 深読みさせる させてきた
彼ら 彼女ら 現代詩人
何げない 手垢のついた 言葉に
共感と 少しの感動を
与えてみようとは
現代詩人は思わぬ