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【本の感想】鬼の心で書く

「文学」と「作家」への道(36)

「セクシー田中さん」原作者の漫画家が自殺したことをきっかけに、映像化されるにあたり、漫画、小説の原作者と制作者・脚本家との関係がややこしくなっている。

原作を捻じ曲げられた、と怒る小説家、漫画家らは昔から大勢いるが、映像化作品は別物、と割り切れないのだろうか――。
昨年から話題になっているこの本を読み、改めてそう感じた。

◇春日太一「鬼の筆」(文芸春秋社、2023年11月刊)

内容

「七人の侍」「砂の器」「八甲田山」…。1950年代〜70年代、脚本家として次々と名作を書いた橋本忍。生前のインタビューや創作ノート、関係者への取材をもとに“全身脚本家”驚愕の真実と知られざる全貌に迫る。

図書館データ

ぼくの感想

橋本忍という大脚本家に迫ったノンフィクション。著者は本人へのインタビューを何度も行い、本書完成までに長年月をかけた労作である。
難しい内容ではなく、日本映画に関心のある人には興味深い話がいくつも出てくる。

橋本脚本の映画は、ヒットもしたし、高い評価も得た。それがどうやって生み出されてきたのかを実によく調べ、本人には言いたくないことも語らせ、全体像に迫っている。

橋本ほどの技量を持つ脚本家なら、原作を遥かに上回るストーリーを作り、映像化への設計図を描けたのだろう。
その一方で、超駄作、問題作ともなり、彼の栄光を台無しにした映画「幻の湖」について一章を割いているのも面白い。

先に、女性ライターが書いた沢田研二の本がつまらない、と書いたが、そのライターには春日太一の爪の垢でも煎じて飲め、と言いたい。

ものを書く、という点では脚本を書くのも、詩や小説を書くのも、共通する点は多々あるだろう。その点でも大いに参考になる一冊といえる。


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