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「熱」

薪に火を着ける
火吹きで息を送る
火勢が強まる

据えられた釜はふつふつ音をたてる
米が炊かれていく

薪に火を着ける
息を吹く 火を大きくする
燃え上がる 炎 炎 炎
薪をさらに入れる
炎 炎 炎 炎 炎 炎 炎 炎 炎
送る 風 風 風 風 風 風 風 風 

頭がくらくらするまで
息を 風を 送る 送る

冷たい水が 少しずつ 少しずつ
温かくなり 湯が沸く…

薪で炊いた米 飯はうまい
薪で沸かした湯 風呂は冷めにくく 肌にやさしい
など 体験したこもない
伝聞である
誰かが書いた 話したこと
読んだり 聞いたり しただけ。

紙に印刷された
インクのにおい
刷り上がったばかり 厚みある紙の束に熱がこもる 
深夜 それを手にした 達成感

わが仕事 わが職場――だった

紙に刷られた新聞など
誰も手にしない 読まない
という現実 時代
その場を静かに 足音立てずに去っていく

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