「下働きの身」
オハヨーゴザイマス!
箒を手に おばさんが 声高くして言う
ごみを集める清掃車を走って追いかける
ヘルメットを被った男たちに声をかける
走る男たちは軽く手を挙げたろうか
道路を隔てて歩くぼくには 声高く届く
彼女のメッセージ
それは朝早くからは働く人たちへの
さわやかなエール
それがぼくにも聞こえた
それだけの話
いや 違う
あの声高いあいさつは誰のためでもなく
箒を手にした彼女が自分に向けて発した声
ぼくはそう思う
都会でも 町村でも 誰かとつながりながら働く一人ひとりがいて
ほとんどの人が 下働きにすぎない
ぼくも そのひとり
下働きなのだ
こんな仕事 こんなしごとを
と
うらみ つらみ 重ねてかさねて
何十年――
時間も 会社組織の浮き沈みも
やりすごし 見すごし みすごし
我関せずの面持ちで 今日まできょうまで
生きてきました
そう自分に思わせた
オハヨーゴザイマス!
と
声出さず うつむいて箒を掃き続ける人々ひとびと おばさん おじさん ばちゃん じいちゃん
オハヨーゴザイマス!
自分に向かって言い続けよう 鼓舞しよう自分を
下働きの身として