「詩界の大センセイ」
東京で生まれ 親が高名な学者――
というだけで 銀の匙をくわえてこの世にでてきた
そういう人が 大詩人 谷川俊太郎
いくつかの詩集を読むと
確かに 狙ったように
詩を読む人たち 大向こうをうならせるような書きぶり
すなわち
詩世界という小さなマーケットながら それを意識したような作品
それらを書いてきた人
ぼくは そうとらえる
東大どころか 親が学者というのに夜間高校しか出ておらず
この世で学歴なしで 詩を書き
ペンとノートで生きてきた人 たぶん
親の資産もあったろうが
高等遊民のような生き方としても
結果的に詩人として商業的に成功した
極めて数少ない これ右代表
最近の谷川の詩集を読むと
マーケットの「マ」の字も感じさせない
少なくともぼくは そう思う
谷川の全詩集の ごく一部しか目を通していないが
どこかの時点で彼は
マーケットなど意識せずともよくなったのだろう
谷川俊太郎の詩そのものが とっくの とっくの昔に
一定のマーケットになってしまったのだから
好きなことを好きなように
同じことを書いたとして
同工異曲 異曲同工
ファンにはちょっと同じで ちょっと違ってでもやっぱり変わらぬ
谷川センセイの詩が ステキだったり
今の谷川の詩はまったく力が入っておらず
ぼくにも 誰にでも 小学生にも書けるような気がする
おそらく
本来 詩はそんなもの
詩はそれでよい
と
大センセイは言うに違いない
詩の世界に足を踏み入れて10カ月ばかりのぼくが
言うことではないかもしれないが